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サイドM①
大人のあそび①
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春風が心地良く頬を撫で、同時に黒いロングスカートが翻る。
私、神戸充江はポケットの着信音に気付き徐に携帯を鞄から取り出した。きっと、先週から連絡を取り合っていた「町田さん」だろう。彼の写真を見る限りだと、筋トレが趣味ということもありガタイの良い熊みたいな大男だろうか。応答ボタンを押して携帯を耳にあてる。
「はじめまして、町田です。イザワさんですか?」
携帯からは意外にも優しいテノールの声色が耳に入った。今日は優しく抱いてくれそうかも…という予感。
「もしもし?」
再び耳に入るテノールボイス。その声に悶々と妄想を膨らませていた私は慌てて返答した。
「……あ、はいそうです…、イザワです」
イザワミツエ。私の出会い系サイトでのハンドルネーム。苗字は高校時代の親友から取った。
「よかった!今、ファミマの横にいるんだけど、今日、黒いロングスカート履いてる?」
「はい……」
「やっぱりそうか、今そっち向かうね!」
コンビニの方から、町田さんらしき人が小さく手を振りながらこちらへ向かってくる。どうやら信号を隔てたマンションのそばに立っていたらしい。白いシャツに褐色の肌がよく映えた清楚感あふれる筋肉質な男性だ。
夫とは大違い…。私的には大当たり。
「はじめまして~、イザワさん?」
低身長の私の顔を覗き込むように町田さんは屈託のない笑顔で話しかけてきた。出会い系サイトにこんな人がいるなんて驚きだ。
「はい、そうです…あ、よろしくお願いします…」
だめだだめだ、明るく喋らなきゃ。無理くりつくった下手くそな笑顔を彼に向ける。すると、彼はほくそ笑んで、
「ハハ、無理に笑わなくても良いよ。今日は楽しもう」
と私の右手を優しく握った。私がもう少し若ければ、これで恋に落ちていたかも。
行き着いたホテルはBホテル。バリ島をイメージした綺麗で異国情緒溢れるユニークなホテルで、ずっと気になっていた。確か夫の知り合いが勤めているような話を聞いたことがあった気がするけど......あまり定かではない。それよりもこのホテルに「行ってみたい」と思ってたこと、彼に伝えたことあっただろうかと逡巡する。最近は記憶が混濁して誰と何の会話をしたのかはっきりしないことがある。まあ、いいわ、なるようになるだけだから。彼は慣れた様子で着々とチェックインの準備を始めている。
「行こうか」
手を繋いでやや緊張気味にエレベーターに乗った。
702号室。エレベーターはラベンダーの芳香剤の匂いで充満しバリ島らしい木管楽器の音色が空間を包んだ。エレベーターが開くと、やはり異国感漂う置物やBGM、それに芳香剤の香りが素敵に漂っていた。
「ここ、来てみたかったんです…」
「うん、だから来たんじゃない」
どうやらSNSの会話の中で話していたらしい。どんな成り行きでそんな話が出たのか、後でチェックしてみようと思う。
「あ......」
「何?」
そういえば彼の声、何かに似てる。......あ、あのゲームに出てた主人公レインの声だ。
「な、なんでもないです......」
私には珍しく新しい話題を思いついたのだが、彼に振ることはできなかった。きっと彼は、家に篭ってプレイするゲームなんてものとは疎遠のスポーツマンに違いないから。最初から引かれてしまうような話題はやめておこう。
部屋に到着する。ブラウンの大きな扉を引いて私を先に通してくれた。ゆっくり七人は座れる白い大きなソファとキングサイズの白いベット。そして何故かキッチンがついてる。
7階だから眺めが良いんだろうな。考えるより先に大きな窓から外を覗いていた。午後の太陽で気温が上がって揺らめいている陽炎のせいだろう、モード学園も遠くにそびえ立つ渋谷のタワーも朧気に見える。真下には小さな人々がわらわらと蠢いていた。何をそんなにアクセクしているのだろうと思うと、変な笑いがこみ上げてきた。そんな光景にぼんやりしていると、耳元で囁く某ゲームの主人公の声がした。
「何か面白いものでも見えた?おお、あれが渋谷のタワーか、でかいなあ」
あぁ、私はレインと一緒に冒険の旅の途上。その疲れを癒そうとモーテルに入ったばかりだったわ。そんな空想の世界に溺れそうになる私を、
「ねえ、イザワさん」
という汚らわしい名前で呼ぶ声に、現実に引き戻される。当時の親友は、今の私の一番嫌いな女。もっとメルヘンチックな名前にしておくべきだったな、などとつまらない反省をしている私を後ろから抱きしめていた町田さんが、少し屈んで下半身を太腿に押し付けてきた。太腿に当たる硬いものが、夢を完全なる現に変えた。窓辺から引き剥がされた私は、町田さんの思うがままに非力にキングサイズのベッドに押し倒された。
「待ってください......お風呂......」
かろうじて言った私の言葉を無視して、町田さんの唇が私の唇を塞ぐ。口内にぬるりとした舌が入ってきた。思わず鼻息が荒くなり、私は手持ちぶたさの両腕で彼の首筋を抱きしめた。一度スイッチが入って仕舞えばもうどうだって良い。私は自らの上着のジッパーを外しながら彼の舌を求めた。
彼のジーパンのチャックを下ろす音。ぎしり、というベットの軋む音。粘着的な接吻が繰り返され唾液同士が絡む音。彼の太い指が私の胸に触れる。思わず小さく声を漏らしてしまい、顔を背ける。
そして彼の指は私の背筋を這うようにして、ブラのホックを外そうとしている。これから「される」であろう行為を妄想してぞくぞくと波打つ快感が抑えきれない。
パチン、とブラのホックが外され私の胸があらわになった。
「大きいね…Gくらい?」
「そのくらいです…」
彼の視線だけで私の乳首は徐々に硬くなってしまいそれだけで仰反るような快感、羞恥心が私の体を支配した。見ないで…だなんて言えないけど結構こういうプレイ好き。
彼の指先が右の乳輪の周りを優しく撫でる。息が荒くなり、早く乳首の先端に触れて欲しいと言わんばかりに上半身を揺らしてしまう。ゆっくり、焦らすような指先が私の乳輪を愛撫する。
はやく、はやく、だめ、それ以上したら…もうすぐ…
「あァッッ…!!」
彼の指先が乳首の先端に触れた。たった少しだけ優しく触れられた乳首。それだけで私の体は電流が走ったかのようにのけ反り、鼻がかった声を漏らしてしまった。
(続く)
私、神戸充江はポケットの着信音に気付き徐に携帯を鞄から取り出した。きっと、先週から連絡を取り合っていた「町田さん」だろう。彼の写真を見る限りだと、筋トレが趣味ということもありガタイの良い熊みたいな大男だろうか。応答ボタンを押して携帯を耳にあてる。
「はじめまして、町田です。イザワさんですか?」
携帯からは意外にも優しいテノールの声色が耳に入った。今日は優しく抱いてくれそうかも…という予感。
「もしもし?」
再び耳に入るテノールボイス。その声に悶々と妄想を膨らませていた私は慌てて返答した。
「……あ、はいそうです…、イザワです」
イザワミツエ。私の出会い系サイトでのハンドルネーム。苗字は高校時代の親友から取った。
「よかった!今、ファミマの横にいるんだけど、今日、黒いロングスカート履いてる?」
「はい……」
「やっぱりそうか、今そっち向かうね!」
コンビニの方から、町田さんらしき人が小さく手を振りながらこちらへ向かってくる。どうやら信号を隔てたマンションのそばに立っていたらしい。白いシャツに褐色の肌がよく映えた清楚感あふれる筋肉質な男性だ。
夫とは大違い…。私的には大当たり。
「はじめまして~、イザワさん?」
低身長の私の顔を覗き込むように町田さんは屈託のない笑顔で話しかけてきた。出会い系サイトにこんな人がいるなんて驚きだ。
「はい、そうです…あ、よろしくお願いします…」
だめだだめだ、明るく喋らなきゃ。無理くりつくった下手くそな笑顔を彼に向ける。すると、彼はほくそ笑んで、
「ハハ、無理に笑わなくても良いよ。今日は楽しもう」
と私の右手を優しく握った。私がもう少し若ければ、これで恋に落ちていたかも。
行き着いたホテルはBホテル。バリ島をイメージした綺麗で異国情緒溢れるユニークなホテルで、ずっと気になっていた。確か夫の知り合いが勤めているような話を聞いたことがあった気がするけど......あまり定かではない。それよりもこのホテルに「行ってみたい」と思ってたこと、彼に伝えたことあっただろうかと逡巡する。最近は記憶が混濁して誰と何の会話をしたのかはっきりしないことがある。まあ、いいわ、なるようになるだけだから。彼は慣れた様子で着々とチェックインの準備を始めている。
「行こうか」
手を繋いでやや緊張気味にエレベーターに乗った。
702号室。エレベーターはラベンダーの芳香剤の匂いで充満しバリ島らしい木管楽器の音色が空間を包んだ。エレベーターが開くと、やはり異国感漂う置物やBGM、それに芳香剤の香りが素敵に漂っていた。
「ここ、来てみたかったんです…」
「うん、だから来たんじゃない」
どうやらSNSの会話の中で話していたらしい。どんな成り行きでそんな話が出たのか、後でチェックしてみようと思う。
「あ......」
「何?」
そういえば彼の声、何かに似てる。......あ、あのゲームに出てた主人公レインの声だ。
「な、なんでもないです......」
私には珍しく新しい話題を思いついたのだが、彼に振ることはできなかった。きっと彼は、家に篭ってプレイするゲームなんてものとは疎遠のスポーツマンに違いないから。最初から引かれてしまうような話題はやめておこう。
部屋に到着する。ブラウンの大きな扉を引いて私を先に通してくれた。ゆっくり七人は座れる白い大きなソファとキングサイズの白いベット。そして何故かキッチンがついてる。
7階だから眺めが良いんだろうな。考えるより先に大きな窓から外を覗いていた。午後の太陽で気温が上がって揺らめいている陽炎のせいだろう、モード学園も遠くにそびえ立つ渋谷のタワーも朧気に見える。真下には小さな人々がわらわらと蠢いていた。何をそんなにアクセクしているのだろうと思うと、変な笑いがこみ上げてきた。そんな光景にぼんやりしていると、耳元で囁く某ゲームの主人公の声がした。
「何か面白いものでも見えた?おお、あれが渋谷のタワーか、でかいなあ」
あぁ、私はレインと一緒に冒険の旅の途上。その疲れを癒そうとモーテルに入ったばかりだったわ。そんな空想の世界に溺れそうになる私を、
「ねえ、イザワさん」
という汚らわしい名前で呼ぶ声に、現実に引き戻される。当時の親友は、今の私の一番嫌いな女。もっとメルヘンチックな名前にしておくべきだったな、などとつまらない反省をしている私を後ろから抱きしめていた町田さんが、少し屈んで下半身を太腿に押し付けてきた。太腿に当たる硬いものが、夢を完全なる現に変えた。窓辺から引き剥がされた私は、町田さんの思うがままに非力にキングサイズのベッドに押し倒された。
「待ってください......お風呂......」
かろうじて言った私の言葉を無視して、町田さんの唇が私の唇を塞ぐ。口内にぬるりとした舌が入ってきた。思わず鼻息が荒くなり、私は手持ちぶたさの両腕で彼の首筋を抱きしめた。一度スイッチが入って仕舞えばもうどうだって良い。私は自らの上着のジッパーを外しながら彼の舌を求めた。
彼のジーパンのチャックを下ろす音。ぎしり、というベットの軋む音。粘着的な接吻が繰り返され唾液同士が絡む音。彼の太い指が私の胸に触れる。思わず小さく声を漏らしてしまい、顔を背ける。
そして彼の指は私の背筋を這うようにして、ブラのホックを外そうとしている。これから「される」であろう行為を妄想してぞくぞくと波打つ快感が抑えきれない。
パチン、とブラのホックが外され私の胸があらわになった。
「大きいね…Gくらい?」
「そのくらいです…」
彼の視線だけで私の乳首は徐々に硬くなってしまいそれだけで仰反るような快感、羞恥心が私の体を支配した。見ないで…だなんて言えないけど結構こういうプレイ好き。
彼の指先が右の乳輪の周りを優しく撫でる。息が荒くなり、早く乳首の先端に触れて欲しいと言わんばかりに上半身を揺らしてしまう。ゆっくり、焦らすような指先が私の乳輪を愛撫する。
はやく、はやく、だめ、それ以上したら…もうすぐ…
「あァッッ…!!」
彼の指先が乳首の先端に触れた。たった少しだけ優しく触れられた乳首。それだけで私の体は電流が走ったかのようにのけ反り、鼻がかった声を漏らしてしまった。
(続く)
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