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第1章 闇オークション

1-8 暴走

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「興を削ぐアクシデントが発生してしまいまして大変申し訳ございませんでした。大変遺憾ながら3番様にはご退場いただきました。今後このようなことのないよう進行には万全を期して参りますので、皆さまご理解ご協力のほどお願い申し上げます。これによりまして入札権利者は5名様となりました。では、改めまして感度チェックを再開致します」

 主催者からの謝罪があり、オークション再開が宣言された。だが、指示を受けた店長は、衝撃の疑惑に気持ちが乱れ、先ほどと同じ流れではバーテンを責めることが出来なかった。

 何かを変えなければ。店長はローターを電動マッサージ器にチェンジして目先を変えることを選んだ。これならば繊細な責めを要さない。が、ここで信号機が主催者にクレームをつける。

「マスター。折角ジワジワと責めて来たんだ。肝心の本丸の攻略直前に、電マとはあまりにもぞんざいではないか。敵大将の首を獲らずに、天守閣に大砲をぶっ放すような狼藉に見えるが如何かな。3番の男の失格はやむを得ないとして、ここまでの折角の流れをいきなり変えるメニューはいただけない」

 闇オークションでは主催者はマスターと呼ばれる。この場の総責任者であり、全てを司る者である故にそう呼ばれるのだ。マスターに対して唯一権限があるのは監視員のみである。

 客のクレームもマスターには却下する権限も有し、場を壊すようなクレームであればそれを理由に退場を命じることも出来た。しかし主催者はここは信号機のクレームをもっともであると受け入れ、店長に対して、退場前の状態から再スタートすることを命じた。

 言われるまでもなくその通りである。だが、分かっていてそうできなかった店長の気持ちの揺れを、客に理解してもらうことは不可能だった。店長は改めて二丁ローターをスタンバイした。

 ローターを使った責めにはいくつかのポイントがあるが、最も重要なのは刺激する場所による肌への触れ方と振動の強弱だ。しかもこれは人よってもシチュエーションによっても大きく変わる。基本はあるもののそれに縛られると存外的を外してしまうことになる。相手の反応をよく見て、ローターを通じて感じるポイントを見極めること、つまり相手を慈しみ官能の高みに連れて行くという心こそが極意だ。技術はその後のツマに過ぎない。

 店長は性技に関わるものはすべからくその通りだと思っていた。闇雲な力任せの愛撫に女の身体を開かせる力はない。例えれば北風と太陽だ。

 バーテンダーが王女かも知れないという衝撃は、店長の気持ちに大きな変化をもたらした。同じ性技を用いて、果たして同じ反応を得ることが出来るだろうか。その不安がそのまま伝わるのがローターという性具でもある。それでもやるしかない。これが仕事だ。

 ウイイイイイイン

 二つのローターの振動が再び会場の空気を震わした。

 店長は拘束され半裸にされているバーテンダーの顔を改めて見た。虚な瞳、半開きの口。これのどこが王女なものかと、自らに言い聞かせる。しかし。汚れなき白い肌に咲いた儚げなピンクのバストトップ。ここまで虐げられてもまだ凛として消えない気品。ヘソマニアの言葉をただの戯言と笑い飛ばすことが出来なかった。

 そんなはずはない。王家の令嬢がこんな所にいるはずがあるものか。よおし、俺が化けの皮を剥がしてやる。店長は自分で自分を奮い立たせ、ローターを脇腹に繰り出した。

「ん、うっああっ」

 醒めかけた官能に新たな刺激を加えられたバーテンダーは、ビクンと背中をのけ反らせ息を荒げた。絶頂の寸前まで追い詰められた全身は、その高みを欲するが故に、その全ての神経根を開いて店長のローターを待ち望んでいたのだ。

 バーテンダーのよがり声に勇気づけられた店長は、両腰骨に当てたローターを太腿を経由して鼠蹊部付近に移動させた。ここで時間を掛けて性感帯全体に振動を行き渡らせることが、この後に大きな影響を与える。店長はローター性技の基本に立ち返ることで冷静さを取り戻したようだ。王族だろうが王女だろうが所詮、女は女だ。引っ剥がして股をおっぴろげてしまえばこうしてよがり声を上げる雌豚に過ぎない。

 店長の二丁ローターのひとつがついに急所を捕らえた。それはバーテンダーの最後の砦である小さく薄い布の下で、秘めやかに咲きかけた敏感な突起の先端である。

「あ、だめえっ、あっ、あああああああっ」

 焦らされて焦らされて待ち望んだ刺激だった。ビクン、ビクン。想像した以上の快感に身体を貫かれて、痙攣が止まらない。

 しかし、これはまだほんの序章に過ぎなかった。突起を縦横無尽に責めるローターとは別のもうひとつが、その下方を周回しはじめる。別々のリズムを刻んでいる波動が周期的にシンクロすると、そこから何倍もの快感の波が生み出された。本編が幕を開けた。

「ああ、や、やめて、だ、だめ、ダメダメダメ、あああっ」

 ザブーンと砕けた波に揉まれながら、バーテンダーは瞬く間に次の高みに放り上げられていた。時間を掛けたダブルローターの振動で十分にほぐされていたバーテンダーの股布は、いつの間にかこんもり膨らんで見えるほどになっていた。

 ここまで来ると感度チェックの範疇からは完全に逸脱していた。明らかに店長の暴走だ。しかし、場の雰囲気にはそれを止める流れがない。

 そうだ、この邪魔なパンツも引っ剥がしてやろう。女の股に下賤も王女もないことを俺が教えてやる。店長はビキニのボトムに手を掛けた。

(続く)
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