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第1章 闇オークション

1-6 過去

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 店長のサービスメニューによってビキニのトップスをずり下げられたバーテンダーは、硬く尖ったバストトップを晒され、その先端から垂直にローターを当てられ断続的に左右に転がされていた。

「ああ、ああっ、うっ、ううううぅ」

 絶え間なく続く喘ぎ声は、徐々に声量を上げ、同時に音調も変化していく。ヒクヒクとくねる腰の動きも徐々にその振幅の幅を増していた。

 ここで店長はブルーのトップスを外して上半身を再び裸にする選択を選んだ。ストップは掛からない。この僅かな布があるかないかの違いは、鑑賞者に対する外見的な効果もあったが、それ以上にバーテンダーに対する心理的効果が絶大だった。先ほども全裸を見られてはいるものの、あくまでも身体測定を覗かれている程度のことだった。しかし今度は、ローターの刺激に喘ぎ声を漏らし、身体をピクピクさせた痴態を晒してしまっている。

 男に弄られるような性的な経験がなく、また一人の秘め事ですらほとんど経験のなかったバーテンダーは、自分の身体が淫らな反応を示している事実に戸惑っていた。前代未聞、最低最悪の屈辱である。しかしその一方で、男たちの目前に露わにされた胸の膨らみの頂上は、ピンと勃起してローターの振動に嬉しそうにうち震え、オーディエンスの期待に応えていた。

 バーテンダーは心と身体が分離していることを強く意識した。

 ああ、もしもあのまま、お父様の仰るとおりに同盟国の王子に嫁いでいたとしたら?一体どうなっていたのだろうか。バーテンダーは、ずっと封印してきたもしもをしばし回顧した。

 そうしていればこんな形で屈辱を受けることは無かったのかも知れない。しかし、あの王子の蛇のような目。そしてこれまでにその蛇王子に嫁いだ隣国の二人の姫君が、揃って謎の死を遂げているという事実。それでも国家間の力関係において、まだ前妻の喪が明ける前から次の新しい姫を寄こせと言う理不尽な要請にも、国王はこれを断ることが出来なかった。国王とは、即ちバーテンダーの父親である。順番だ。隣国の王からも釘を刺された。中世であればいざしらず、鉄が空を飛ぶ現代においてもまだこのような旧態依然としたことが公然と行われていた。それが権力という魔物だった。

 そのような恐ろしいところに自らの娘を差し出なければならないことを、国王は無念の血涙を流しながらバーテンダーに詫びた。バーテンダーは、私は女ではない、だから嫁ぐということ自体が無理なのだと反発した。蛇王子など怖くなかった。万一、危険が身に迫れば逆に返り討ちにしてやるという気概もあった。しかし、それではこの政略結婚の任務は務まらない。大人しく従順に、王子のご機嫌を損ねることなく尽くすことが求められた。

 結局、父上の命に係わる問題だという側近の諌言にねじ伏せられ、無理矢理に女の格好をさせられた。屈辱で涙と吐き気が止まらなかった。それでも国の為にと言う父の為に。バーテンダーは自らを殺して蛇王子に嫁ぐ覚悟を決めた。

 式の当日。式場に向かう国王とバーテンダーの乗った車が何者かの襲撃を受けた。車は大破炎上し、同乗した者は国王以外、全員死んだとされている。同盟に反対する組織から犯行声明が出された。結婚式は中止になり、生還した国王も重症を負った。

 しかし、バーテンダーは生きていた。否。この事故は国王自身が仕組んだ偽装事故だった。国王は、バーテンダーにとって蛇王子との結婚がこの世の終わりに等しいものであるならば、王女としてではなく、一人の女、いや自らを女と認めないのであれば一人の人間として場末で生きる道をバーテンダーに託したのだ。

「お前は、お前として、お前らしく生きろ」

 車両が炎上する直前に、国王はそう言ってバーテンダーを車から降ろした。バーテンダーは、その瞬間から王女としての地位も資格も全てを失い、一人の人間として大地に立った。

 家もなく金もなく名もなく愛想もなかった。だがバーテンダーはただ真っ直ぐに自分の思うがままに生きた。どうせ一度死んだ身なのだからと、腹が減っても、邪魔だと詰られ生意気だとはじかれても、そうやってツッパることが清々しかった。

 初めてかけられた情けが、この店の店長からの施しだった。温かいものを食べたのも、あの日車を降りた日から初めてのことだった。

 その店長に裏切られた。まあ、でも、それなら本望だ。どうせ一度死んだ身だ。あなたにやられるというのなら、それでいいや。バーテンダーは、ビキニパンツの上からローターで熱心に生地の窪みを愛撫している店長を見詰めながら、その刺激を素直に受け止めた。

「あああ、ああ、い、い.......」

 ブルーのビキニの内側でバーテンダーの何かがジュンと溢れた。

(続く)
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