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勝負の行方
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最終決戦。泣こうと喚こうとこれで勝った方が勝者、経過がどうあれ負ければ敗者だ。
夏菜子の手札は、A.3.4.6.7.10、少し前に寄っているが、今の夏菜子には全く気にならなかった。
「2はありますか?」
初手も落ち着いてスタートを切れた。先手番の最後はセオリー通りだ。混乱している伯父が焦りで自滅するのを待っていればいい。伯父が弱気になって攻めてこないなら、先手の有利を活かして絞り込むだけだ。
「2はありません」
伯父の回答に夏菜子のポーカーフェイスが一瞬崩れた。それは時間にすれば0.1秒。瞬きの間もない軽微な反応だった。気づかれたか?いや、今の伯父にそこまでシャープな目はない。夏菜子は自分に、そう、言い聞かせ、波打つ鼓動を抑え込んだ。
伯父の目が生気を取り戻した。
「ハッハッハ、夏菜子さん。やっちまったな。まさか初手で来るとは思ってなかった、ってわけか。随分生意気な口を叩いてくれたが、自信過剰が命取りだったってわけだ」
まさか。見破られた?あり得ない。これもブラフか?
「ごちゃごちゃ言ってねえで、さっさと次行けよ。それともコールか?トロトロしてんなよ。こっちはいつまでもクソオヤジと付き合ってなんかいらんねえんだ。何でもいいから、早くやれよ」
夏菜子の威勢に伯父がたじろぐ。伯父が夏菜子の動揺を引き出そうとしたブラフに、危うくハマるところだった。伯父は再び迷い出したようだ。夏菜子はポーカーフェイスを崩さなかったが、内心ではホッとしていた。いずれにしても伯父の次の一手で勝負は決まる。
質問に来るか、それともコールか?
伯父は手札を置き、夏菜子に向かってニヤリと笑う。来る。勝負に来る。
「コールだ。2」
伯父が中央のカードに手を伸ばした。
万事休す。ゆっくりとめくられたカードは。
「7」
「まさか」
伯父が驚きの声を上げて、テーブルに置いた自らの手札を確認する。2は伯父の手札の中にあった。見間違い。いやそんなはずはない。動揺した伯父は、目を見開いて夏菜子にツバキを飛ばしてガナリ声を上げた。
「貴様あ、いかさまか」
「変な言い掛かりつけんじゃねえよ。てめえのミスだろう。むしろルールを破ったのはお前の方だろう」
「い、いや、俺の手元に2はなかった。絶対になかったんだ」
「知るか。終いだ。私の勝ち。もう用はねえだろう。さっさと消えてくれ。もう二度と私の前に姿を現すなよ」
伯父はワナワナと震える手をテーブルに叩きつけた。
「ふざけるな。元々温情でしてやったゲームだ。こんないかさまゲームは無効だ。絶対に認めんぞ」
「往生際の悪いオヤジだな。恥ずかしくねえのか」
「それはこっちの台詞だ。貴様がどんな素性の女か知らねえが随分な猫っ被りしていやがったのは間違いねえ。一体どんな汚ねえ手を使ったんだ。白状しろ」
伯父は夏菜子に詰め寄った。
「はん。いかさまなんかあるわけねえだろう。いい加減なこと言ってんじゃねえぞ。もしいかさまだっていうなら、証拠を示してみろよ」
理では敵わないと悟った伯父は、ならば力づくだとばかりに真っ赤な顔で「このやろう」と夏菜子に襲い掛かった。
「ふざけんな、やめろよ」必死で抵抗する夏菜子だったが、小柄な夏菜子の女の力では伯父の力に抗することが出来ず、再びベッドに押さえつけられてしまう。伯父は夏菜子の細い首筋を両手で掴んだ。
「さあ、吐け。どうやってやった。どうしていかさまをしたか言うんだ」
「ふ、ふざけんなよ、やってねえもんはやってねえんだ、うぐぅ」
伯父の指が夏菜子の首筋を締め付ける。
「く、苦しい、や、やめろ」
「正直に言うんだ。言わねえとこのままぶっ殺すぞ」
「や、やめ、やめろ、や、やめて、うぐぅぅぅっ」
夏菜子が白目を剥く寸前に、伯父が手を緩めた。咳き込む夏菜子。間髪をいれず再び首筋に手が掛かる。
「もう、やめて、おねがい、ううううぐぁぁ、ぶぐふぉ」
「ほら、ホントに殺されるぞ、いいのか、おらおらおら」
手加減を知らない素人は怖い。賭場で見た争いごとでは、喧嘩慣れしていない奴ほど相手に大けがを負わせて警察の厄介になっていた。本当に殺されるかも知れないと、夏菜子は思った。下手に抗わない方が良い。夏菜子は抵抗をやめ伯父のなすがままに身を委ねた。
抵抗をやめた夏菜子の身体を眼下に収めた伯父は、夏菜子を征服した快感に満たされていた。
「そうだ。そうやって最初から大人しくしていればいいものを」
伯父は首に回していた手をそのまま数センチ下に移動させ、夏菜子の白いブラウスのボタンを外す。夏菜子の白い首の下の鎖骨とレースをあしらった清楚なレースのブラジャーの上部が覗いた。はあはあという伯父の荒い息が夏菜子の首筋に掛かる。畜生、何だってこんなやつと勝負なんてしたんだろう。悔し涙が一粒こぼれた。
「お父さん」
夏菜子は心の中で亡き父に助けを乞うていた。
(続く)
夏菜子の手札は、A.3.4.6.7.10、少し前に寄っているが、今の夏菜子には全く気にならなかった。
「2はありますか?」
初手も落ち着いてスタートを切れた。先手番の最後はセオリー通りだ。混乱している伯父が焦りで自滅するのを待っていればいい。伯父が弱気になって攻めてこないなら、先手の有利を活かして絞り込むだけだ。
「2はありません」
伯父の回答に夏菜子のポーカーフェイスが一瞬崩れた。それは時間にすれば0.1秒。瞬きの間もない軽微な反応だった。気づかれたか?いや、今の伯父にそこまでシャープな目はない。夏菜子は自分に、そう、言い聞かせ、波打つ鼓動を抑え込んだ。
伯父の目が生気を取り戻した。
「ハッハッハ、夏菜子さん。やっちまったな。まさか初手で来るとは思ってなかった、ってわけか。随分生意気な口を叩いてくれたが、自信過剰が命取りだったってわけだ」
まさか。見破られた?あり得ない。これもブラフか?
「ごちゃごちゃ言ってねえで、さっさと次行けよ。それともコールか?トロトロしてんなよ。こっちはいつまでもクソオヤジと付き合ってなんかいらんねえんだ。何でもいいから、早くやれよ」
夏菜子の威勢に伯父がたじろぐ。伯父が夏菜子の動揺を引き出そうとしたブラフに、危うくハマるところだった。伯父は再び迷い出したようだ。夏菜子はポーカーフェイスを崩さなかったが、内心ではホッとしていた。いずれにしても伯父の次の一手で勝負は決まる。
質問に来るか、それともコールか?
伯父は手札を置き、夏菜子に向かってニヤリと笑う。来る。勝負に来る。
「コールだ。2」
伯父が中央のカードに手を伸ばした。
万事休す。ゆっくりとめくられたカードは。
「7」
「まさか」
伯父が驚きの声を上げて、テーブルに置いた自らの手札を確認する。2は伯父の手札の中にあった。見間違い。いやそんなはずはない。動揺した伯父は、目を見開いて夏菜子にツバキを飛ばしてガナリ声を上げた。
「貴様あ、いかさまか」
「変な言い掛かりつけんじゃねえよ。てめえのミスだろう。むしろルールを破ったのはお前の方だろう」
「い、いや、俺の手元に2はなかった。絶対になかったんだ」
「知るか。終いだ。私の勝ち。もう用はねえだろう。さっさと消えてくれ。もう二度と私の前に姿を現すなよ」
伯父はワナワナと震える手をテーブルに叩きつけた。
「ふざけるな。元々温情でしてやったゲームだ。こんないかさまゲームは無効だ。絶対に認めんぞ」
「往生際の悪いオヤジだな。恥ずかしくねえのか」
「それはこっちの台詞だ。貴様がどんな素性の女か知らねえが随分な猫っ被りしていやがったのは間違いねえ。一体どんな汚ねえ手を使ったんだ。白状しろ」
伯父は夏菜子に詰め寄った。
「はん。いかさまなんかあるわけねえだろう。いい加減なこと言ってんじゃねえぞ。もしいかさまだっていうなら、証拠を示してみろよ」
理では敵わないと悟った伯父は、ならば力づくだとばかりに真っ赤な顔で「このやろう」と夏菜子に襲い掛かった。
「ふざけんな、やめろよ」必死で抵抗する夏菜子だったが、小柄な夏菜子の女の力では伯父の力に抗することが出来ず、再びベッドに押さえつけられてしまう。伯父は夏菜子の細い首筋を両手で掴んだ。
「さあ、吐け。どうやってやった。どうしていかさまをしたか言うんだ」
「ふ、ふざけんなよ、やってねえもんはやってねえんだ、うぐぅ」
伯父の指が夏菜子の首筋を締め付ける。
「く、苦しい、や、やめろ」
「正直に言うんだ。言わねえとこのままぶっ殺すぞ」
「や、やめ、やめろ、や、やめて、うぐぅぅぅっ」
夏菜子が白目を剥く寸前に、伯父が手を緩めた。咳き込む夏菜子。間髪をいれず再び首筋に手が掛かる。
「もう、やめて、おねがい、ううううぐぁぁ、ぶぐふぉ」
「ほら、ホントに殺されるぞ、いいのか、おらおらおら」
手加減を知らない素人は怖い。賭場で見た争いごとでは、喧嘩慣れしていない奴ほど相手に大けがを負わせて警察の厄介になっていた。本当に殺されるかも知れないと、夏菜子は思った。下手に抗わない方が良い。夏菜子は抵抗をやめ伯父のなすがままに身を委ねた。
抵抗をやめた夏菜子の身体を眼下に収めた伯父は、夏菜子を征服した快感に満たされていた。
「そうだ。そうやって最初から大人しくしていればいいものを」
伯父は首に回していた手をそのまま数センチ下に移動させ、夏菜子の白いブラウスのボタンを外す。夏菜子の白い首の下の鎖骨とレースをあしらった清楚なレースのブラジャーの上部が覗いた。はあはあという伯父の荒い息が夏菜子の首筋に掛かる。畜生、何だってこんなやつと勝負なんてしたんだろう。悔し涙が一粒こぼれた。
「お父さん」
夏菜子は心の中で亡き父に助けを乞うていた。
(続く)
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