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逆襲の目
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緒戦で感情を揺さぶられてしまった夏菜子は、続く第2戦も呆気なく伯父の策略に敗れた。限りなく確定を得ながら、コール出来なかったことが敗因だった。伯父の一挙手に惑い、一言に揺れた。このままではダメだと焦る気持ちがミスを呼び、決断力を鈍らせた。
「夏菜子さん、全然相手にならないね。それとも早く私の好きにして欲しいってことかな」
第3戦は夏菜子の先番。ここから三連勝しなければ、伯父の自由にされてしまう。伯父は一体何をさせようとするだろうか。伯父はまだ何をするとも言っていない。しかし、夏菜子の想像は、どうしても淫らなことから逃れられなかった。あの日のゲスイットで夫に負けて全裸にされた時のオーガズムが、今にも甦りそうになって、慌てて自分を戒める。負けるなんて思っちゃダメ。夏菜子は自らを鼓舞して手札を確認した。
A.3.8.10.J.K
一瞬目を疑った。これって。初回の手札と全く同じである。しまった。動揺を伯父に見透かされたかも知れない。取り繕おうとすれば墓穴を掘るだけだ。初手を、初手の質問を出さなくては。焦る気持ちを抑えることに精一杯の夏菜子は、魅入られるように初手を出した。
「Qはありますか?」
伯父は笑いを堪えられないとばかりに顔を綻ばせて答える。
「Qはあります」
再現フィルム。やってしまった。伯父の手札に4がなければ、コールするだろう。流れを変えるべきだったと、夏菜子は後悔したが、意外にも伯父はコールして来なかった。4は手札か?連勝で王手を掛けている伯父が、勢いに任せて一気に決めてくるならコールだった筈だ。あの笑みの意味は何なのか?不可解ではあったが、命拾いをしたと同時に、ここは一気に2枚消したと考えることにした。勝ち運を引き寄せるには、コールして勝つしかない。
伯父の初手。
「2はありますか?」
やはりなぞって来た。
「2はありません」
行くしかない。そう思ってコールし掛けたが、夏菜子は思い止まった。
裏の裏か。この二戦の伯父の手は、確定の上にも確定を重ねるような手筋。果敢なめではない。ここも動揺している夏菜子の自滅を待つ作戦で来るだろう。つまり確定が無い以上コールはない。そう決め打ちする。逆転への手筋はこれしかないと、夏菜子は前を向いた。
「コールするのかしないのか、どっちにするか早く決めてくれよ」
急かす伯父に、夏菜子は熱い質問をぶつける。
「4はありますか?」
伯父の顔色が変わる。夏菜子が「4」を質問してくるとは予測していなかったようだ。初戦のターゲットだった「4」は、実は2戦目のターゲットでもあった。ツラを張れ、とは博打の格言だが、あくまでも丁半博打でのこと。13分の1の確率で3回連続でターゲットにハマるという線はむしろ敬遠すべきであり、可能ならば『見』のタイミングである。
そこをあえて攻めて来た夏菜子の度量に伯父はたじろいだのだ。手札を見た時の夏菜子に見えたわずかな動揺と、自身の手札、初手の流れから夏菜子の手札を初回と同じと読んでいたが、この手で迷わされる。全く同じ手札が入る確率はそれほどに低い。
「4はあります」
伯父に迷いが出た。これで2勝している伯父がこのゲームで攻めて来る目は完全に消えた。夏菜子は確信した。
「9はありますか?」
揺さぶりか。初回に夏菜子がコールした数字の質問だったが、夏菜子は涼しい顔で答える。
「9はありません」
残りは3枚。勿論、伯父の初手の2そして今の9がターゲットである可能性はある。初戦はそれに踊らされて負けてしまったのだから警戒しないわけではない。しかし、既に2勝している伯父が、あえて確定を引いていながら罠を張る必要はないのだ。というか、それならそれで仕方ない。そんな割り切りが今の夏菜子にはあった。
これで終わらせる。そんな覚悟が見え隠れする夏菜子の三つ目の質問が伯父に刺さる。
「Kはありますか?」
「Kはありません」
苦しげに答えた伯父は、コールを宣言した。まぬけ。墓穴を掘ったわね。
「ターゲットはKだ」
裏返されたカードに記されていた数字は、「7」だった。
夏菜子の勝ちである。
「くっ、やはり同じ手札か!」
「そうよ。まさかという顔をしたのを見破られて、もうダメかと思ったけど、あなたもまだまだ甘いわね」
夏菜子の口調ががらりと変わっていることに、この時はまだ夏菜子自身も気付いていなかった。
(続く)
「夏菜子さん、全然相手にならないね。それとも早く私の好きにして欲しいってことかな」
第3戦は夏菜子の先番。ここから三連勝しなければ、伯父の自由にされてしまう。伯父は一体何をさせようとするだろうか。伯父はまだ何をするとも言っていない。しかし、夏菜子の想像は、どうしても淫らなことから逃れられなかった。あの日のゲスイットで夫に負けて全裸にされた時のオーガズムが、今にも甦りそうになって、慌てて自分を戒める。負けるなんて思っちゃダメ。夏菜子は自らを鼓舞して手札を確認した。
A.3.8.10.J.K
一瞬目を疑った。これって。初回の手札と全く同じである。しまった。動揺を伯父に見透かされたかも知れない。取り繕おうとすれば墓穴を掘るだけだ。初手を、初手の質問を出さなくては。焦る気持ちを抑えることに精一杯の夏菜子は、魅入られるように初手を出した。
「Qはありますか?」
伯父は笑いを堪えられないとばかりに顔を綻ばせて答える。
「Qはあります」
再現フィルム。やってしまった。伯父の手札に4がなければ、コールするだろう。流れを変えるべきだったと、夏菜子は後悔したが、意外にも伯父はコールして来なかった。4は手札か?連勝で王手を掛けている伯父が、勢いに任せて一気に決めてくるならコールだった筈だ。あの笑みの意味は何なのか?不可解ではあったが、命拾いをしたと同時に、ここは一気に2枚消したと考えることにした。勝ち運を引き寄せるには、コールして勝つしかない。
伯父の初手。
「2はありますか?」
やはりなぞって来た。
「2はありません」
行くしかない。そう思ってコールし掛けたが、夏菜子は思い止まった。
裏の裏か。この二戦の伯父の手は、確定の上にも確定を重ねるような手筋。果敢なめではない。ここも動揺している夏菜子の自滅を待つ作戦で来るだろう。つまり確定が無い以上コールはない。そう決め打ちする。逆転への手筋はこれしかないと、夏菜子は前を向いた。
「コールするのかしないのか、どっちにするか早く決めてくれよ」
急かす伯父に、夏菜子は熱い質問をぶつける。
「4はありますか?」
伯父の顔色が変わる。夏菜子が「4」を質問してくるとは予測していなかったようだ。初戦のターゲットだった「4」は、実は2戦目のターゲットでもあった。ツラを張れ、とは博打の格言だが、あくまでも丁半博打でのこと。13分の1の確率で3回連続でターゲットにハマるという線はむしろ敬遠すべきであり、可能ならば『見』のタイミングである。
そこをあえて攻めて来た夏菜子の度量に伯父はたじろいだのだ。手札を見た時の夏菜子に見えたわずかな動揺と、自身の手札、初手の流れから夏菜子の手札を初回と同じと読んでいたが、この手で迷わされる。全く同じ手札が入る確率はそれほどに低い。
「4はあります」
伯父に迷いが出た。これで2勝している伯父がこのゲームで攻めて来る目は完全に消えた。夏菜子は確信した。
「9はありますか?」
揺さぶりか。初回に夏菜子がコールした数字の質問だったが、夏菜子は涼しい顔で答える。
「9はありません」
残りは3枚。勿論、伯父の初手の2そして今の9がターゲットである可能性はある。初戦はそれに踊らされて負けてしまったのだから警戒しないわけではない。しかし、既に2勝している伯父が、あえて確定を引いていながら罠を張る必要はないのだ。というか、それならそれで仕方ない。そんな割り切りが今の夏菜子にはあった。
これで終わらせる。そんな覚悟が見え隠れする夏菜子の三つ目の質問が伯父に刺さる。
「Kはありますか?」
「Kはありません」
苦しげに答えた伯父は、コールを宣言した。まぬけ。墓穴を掘ったわね。
「ターゲットはKだ」
裏返されたカードに記されていた数字は、「7」だった。
夏菜子の勝ちである。
「くっ、やはり同じ手札か!」
「そうよ。まさかという顔をしたのを見破られて、もうダメかと思ったけど、あなたもまだまだ甘いわね」
夏菜子の口調ががらりと変わっていることに、この時はまだ夏菜子自身も気付いていなかった。
(続く)
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