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最終章
247.仲良し?
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サフィーの手を取り未来が向かったのは、帝都近くに設置してある転移魔法陣。
「はいサフィーよろしく!」
行き先はもちろんファルディナの街。サフィーは訳も分からずに未来に手を引かれ、若干息が上がっている。
「な、なんなのよも~!」
と、憤りながらも未来に言われた通り転移する。いつもの岩場に転移して二人は、未来の短距離転移で一気にファルディナの街の門近くまで移動した。そこからは再び未来がサフィーの手を引きながら走り出す。
「また走るの!?ってかあんた、SP枯渇してたわよね!?」
「え?スキルポーション五本飲んだから結構回復したけど?」
確かに飲んでいた。ツヴァイフェッターと一緒に帝都へ凱旋する為に歩いていた時に、何本も飲んでいた。
「五本って……よくお腹がタプタプにならないわね………」
未来に手を引かれ、走りながらも相変わらずの未来の行動に呆れてしまう。
だが、こうして一緒に手を繋いで走るのは別に嫌いではない。というより、サフィーは内心ではかなり未来の事を気に入っている。
自分には無い物をたくさん持っているし、とにかくいつも明るく天真爛漫な所は、見ていて気持ちがいい。
リズが加入して以来、最近はあまりしなくなったが、以前はエストも交えて身体を重ねたりもした。その度にいつも未来には気持ちよくして貰って(少し強引だが)、そういう所も好感が持てる。
普段から誰に対しても口調の強いサフィーは、たまに自分でも言い過ぎたなぁと後悔する事もあるのだが、未来の場合は多少言い過ぎたくらいでは動じず、ニコニコと笑顔を浮かべながら笑い飛ばしてくれる。
そうする事でサフィー自身、救われた気持ちになる事もあり、密かに感謝したりもしている。
もちろん恋心を抱く筈など無いが、もしもリーシャと出会わずに未来に出会っていたのなら、もしかするとそういった感情を覚えたかもしれない。それくらいには未来の事を気に入っているのだ。
「門番さん通るねーーッ!!」
すっかり顔見知りになった門番の横を、顔パスで駆け抜ける未来とサフィー。門番の方もファルディナの街で初のAランク冒険者パーティになったクローバーのメンバーを、わざわざ止めて身分確認などしない。
もっとも、実は既にAランクではなくSランク冒険者になっている事実などは知る由もないのだが。
ファルディナの街へと入り、そのまま走り続ける未来とサフィー。
「ミ、ミク!もう手は離してもいいから!」
未来が何処へ向かっているのかを既に理解しているサフィーは、未来に手を離すように促す。自分達の事を知らない者など一人も居ないであろうファルディナの街中で、恋人でもない未来と手を繋いで走っているこの状況がとても恥ずかしい。
もっとも、恋人のリーシャとだって街中で手を繋ぐ事など無いのだが。
「ええ?つれないなー。サフィーはあたしと手繋ぐのイヤな感じ?」
「そ、そんな事は無いけど………」
どうしてこの少女は、いつだって心の中に簡単に入り込んで来るのだろうか。
自分でも警戒心の強い人間だと思っている。余程の事が無い限り他人を信用したりしないし、ましてや身体に触れさせたりなど絶対にしない。
だがこの未来という存在は、こちらが作った壁をまるで初めから何も無いかの如く簡単に超えて来る。気付いた時には未来という存在が、隣に居て当たり前の存在だと心に植え付けてしまう。
「じゃあいいじゃん!ってか、女の子同士なんだから手繋ぐとかめっちゃ普通だし!」
「そ、そうなの!?」
こうやっていつも、未来のペースに飲み込まれる。でもそれはサフィーだけではなく、リーシャもエストもリズもそうなのだ。そして、あの愛莉さえも。
「そーそー、チョー普通だし!って事だからこのまま駆け抜けるからねーーッ!!」
「ひょえぇぇぇーーーッ!!ちょ、ちょっとは加減しなさいよねぇぇぇーーーーッ!!!」
口では非難轟々のサフィーだが、その表情は楽しそうに弾んでいる事に本人は気付いていなかった。
■■■
「はい到着!!」
「ぜーはー!ぜーはー!」
未来が涼しい顔で、サフィーが息切れしながら立つこの場所は、ファルディナの街の冒険者ギルド。二人にとっては既に見慣れた職場のような場所だ。
「んじゃ行こっか!こんにちはーーッ!!」
元気に挨拶をしながら中へと入る未来。そう言えばここ二週間ほどは、毎日朝から『濃霧の森』へとレベル上げに行っていたので、ギルドには顔を出していない。最後に顔を出したのは、初めてリズを連れて来た時だ。
「ん?おお、ミクとサフィーじゃねぇか!随分と久しぶーーーーー」
顔馴染みの冒険者達が二人に話し掛けようとしたのだが、突然驚愕の表情を浮かべて立ち尽くす。
(な、何だこの圧倒的な威圧感は……!?本当にミクとサフィーか……?)
(汗が……止まらない……なにこれ………)
今までに感じた事も無いほど強烈な威圧感を放っている未来とサフィー。それに加え、未来の凄まじい闘気、サフィーの恐ろしいほどの魔力が肌にビシビシと突き刺さる。
それもその筈で、ファルディナの冒険者達が最後にクローバーの皆に会った時は、リズを除いた五人のレベルは55だった(リズは35レベル)のに、現在の二人のレベルはなんと倍の110である。
帝国で一番レベルが高かったのはグランドマスターであるマディアスのレベル97だったが、先の黒き竜との勝利で、一気にマディアスを抜いてクローバーの六人が帝国で最強のレベルに到達した。なので、冒険者達のこの反応は至極当然だった。
そんな時、ギルドに入って来た一組のパーティが居た。そのうちの一人は茶髪の剣士、さらに赤い髪の目つきが少しだけ鋭い女性魔道士。
「なっ………あいつ……サフィーか……!?」
「うそ……なによこの魔力は………」
それはスナイプとメリッサ。かつてエストが所属していたパーティのメンバーであり、サフィーを誰よりも敵視していた二人。
だが色々あって、今は敵視はしていない。していないが、だからと言って仲良くなった訳でも無い。
そんなサフィーの威圧感と魔力に絶句する二人。ほんの数ヶ月前までは自分達の方がレベルもランクも上だったのに、そのたった数ヶ月の間に、かつてのライバルは信じられない程に強くなった。一体何をどうすれば、こんな僅かな月日でこれほどまでに強くなれるのだろうか。
その答えは、サフィーの隣に立つ少女。あの黒髪の少女と、もう一人の黒髪少女が現れてから、サフィーとリーシャの人生は劇的に変わった。
冒険者としては完全に『負け組』だったのに、あの黒髪少女達が現れてからは『勝ち組』になったのだ。
「あっ、イリアーナさーん!」
そんな未来とサフィーは後ろを振り返る事も無く、受付けカウンターへと直行する。もし振り返っていれば、かつて自分を馬鹿にした二人が、戦慄の表情を浮かべている姿を見る事になったのだが、どうやらそうはならなかったようだ。
「少しお久しぶりですねミクさん、サフィーさん。と言うか、珍しい組み合わせですね?」
いつもの柔らかな笑顔で応対する受付嬢のイリアーナ。彼女は冒険者ではなく一般人なので、未来とサフィーが無意識に放出している威圧感や闘気などを察知する能力は無い。なのでいつものように自然体だった。
「まあね!サフィーがどうしてもあたしと二人がいいって言うから」
「はぁぁ~~ッ!!?なに訳わかんない事言ってんのよ!あんたが勝手にあたしの手を引いて来たんでしょ!!」
「え?手繋ぐのイヤじゃないって言ってたじゃん」
「ちょっ!?いっ、言ったけど!それは今は関係ないでしょ!!」
顔を真っ赤にするサフィーを見て、イリアーナがクスッと笑う。
「ふふ、相変わらず仲良しですねお二人は」
「でしょ!?」
「どこが!?」
きっちり同じタイミングで答える辺り、息ピッタリで確かに仲良しと言えなくもない。
「それで、今日はどのようなご用件でしょうか?」
「うん。あのね、オルガノフのおじさんに会いたいんだけど!」
未来の元気で大きな声が、ギルドホールに響いたのだった。
「はいサフィーよろしく!」
行き先はもちろんファルディナの街。サフィーは訳も分からずに未来に手を引かれ、若干息が上がっている。
「な、なんなのよも~!」
と、憤りながらも未来に言われた通り転移する。いつもの岩場に転移して二人は、未来の短距離転移で一気にファルディナの街の門近くまで移動した。そこからは再び未来がサフィーの手を引きながら走り出す。
「また走るの!?ってかあんた、SP枯渇してたわよね!?」
「え?スキルポーション五本飲んだから結構回復したけど?」
確かに飲んでいた。ツヴァイフェッターと一緒に帝都へ凱旋する為に歩いていた時に、何本も飲んでいた。
「五本って……よくお腹がタプタプにならないわね………」
未来に手を引かれ、走りながらも相変わらずの未来の行動に呆れてしまう。
だが、こうして一緒に手を繋いで走るのは別に嫌いではない。というより、サフィーは内心ではかなり未来の事を気に入っている。
自分には無い物をたくさん持っているし、とにかくいつも明るく天真爛漫な所は、見ていて気持ちがいい。
リズが加入して以来、最近はあまりしなくなったが、以前はエストも交えて身体を重ねたりもした。その度にいつも未来には気持ちよくして貰って(少し強引だが)、そういう所も好感が持てる。
普段から誰に対しても口調の強いサフィーは、たまに自分でも言い過ぎたなぁと後悔する事もあるのだが、未来の場合は多少言い過ぎたくらいでは動じず、ニコニコと笑顔を浮かべながら笑い飛ばしてくれる。
そうする事でサフィー自身、救われた気持ちになる事もあり、密かに感謝したりもしている。
もちろん恋心を抱く筈など無いが、もしもリーシャと出会わずに未来に出会っていたのなら、もしかするとそういった感情を覚えたかもしれない。それくらいには未来の事を気に入っているのだ。
「門番さん通るねーーッ!!」
すっかり顔見知りになった門番の横を、顔パスで駆け抜ける未来とサフィー。門番の方もファルディナの街で初のAランク冒険者パーティになったクローバーのメンバーを、わざわざ止めて身分確認などしない。
もっとも、実は既にAランクではなくSランク冒険者になっている事実などは知る由もないのだが。
ファルディナの街へと入り、そのまま走り続ける未来とサフィー。
「ミ、ミク!もう手は離してもいいから!」
未来が何処へ向かっているのかを既に理解しているサフィーは、未来に手を離すように促す。自分達の事を知らない者など一人も居ないであろうファルディナの街中で、恋人でもない未来と手を繋いで走っているこの状況がとても恥ずかしい。
もっとも、恋人のリーシャとだって街中で手を繋ぐ事など無いのだが。
「ええ?つれないなー。サフィーはあたしと手繋ぐのイヤな感じ?」
「そ、そんな事は無いけど………」
どうしてこの少女は、いつだって心の中に簡単に入り込んで来るのだろうか。
自分でも警戒心の強い人間だと思っている。余程の事が無い限り他人を信用したりしないし、ましてや身体に触れさせたりなど絶対にしない。
だがこの未来という存在は、こちらが作った壁をまるで初めから何も無いかの如く簡単に超えて来る。気付いた時には未来という存在が、隣に居て当たり前の存在だと心に植え付けてしまう。
「じゃあいいじゃん!ってか、女の子同士なんだから手繋ぐとかめっちゃ普通だし!」
「そ、そうなの!?」
こうやっていつも、未来のペースに飲み込まれる。でもそれはサフィーだけではなく、リーシャもエストもリズもそうなのだ。そして、あの愛莉さえも。
「そーそー、チョー普通だし!って事だからこのまま駆け抜けるからねーーッ!!」
「ひょえぇぇぇーーーッ!!ちょ、ちょっとは加減しなさいよねぇぇぇーーーーッ!!!」
口では非難轟々のサフィーだが、その表情は楽しそうに弾んでいる事に本人は気付いていなかった。
■■■
「はい到着!!」
「ぜーはー!ぜーはー!」
未来が涼しい顔で、サフィーが息切れしながら立つこの場所は、ファルディナの街の冒険者ギルド。二人にとっては既に見慣れた職場のような場所だ。
「んじゃ行こっか!こんにちはーーッ!!」
元気に挨拶をしながら中へと入る未来。そう言えばここ二週間ほどは、毎日朝から『濃霧の森』へとレベル上げに行っていたので、ギルドには顔を出していない。最後に顔を出したのは、初めてリズを連れて来た時だ。
「ん?おお、ミクとサフィーじゃねぇか!随分と久しぶーーーーー」
顔馴染みの冒険者達が二人に話し掛けようとしたのだが、突然驚愕の表情を浮かべて立ち尽くす。
(な、何だこの圧倒的な威圧感は……!?本当にミクとサフィーか……?)
(汗が……止まらない……なにこれ………)
今までに感じた事も無いほど強烈な威圧感を放っている未来とサフィー。それに加え、未来の凄まじい闘気、サフィーの恐ろしいほどの魔力が肌にビシビシと突き刺さる。
それもその筈で、ファルディナの冒険者達が最後にクローバーの皆に会った時は、リズを除いた五人のレベルは55だった(リズは35レベル)のに、現在の二人のレベルはなんと倍の110である。
帝国で一番レベルが高かったのはグランドマスターであるマディアスのレベル97だったが、先の黒き竜との勝利で、一気にマディアスを抜いてクローバーの六人が帝国で最強のレベルに到達した。なので、冒険者達のこの反応は至極当然だった。
そんな時、ギルドに入って来た一組のパーティが居た。そのうちの一人は茶髪の剣士、さらに赤い髪の目つきが少しだけ鋭い女性魔道士。
「なっ………あいつ……サフィーか……!?」
「うそ……なによこの魔力は………」
それはスナイプとメリッサ。かつてエストが所属していたパーティのメンバーであり、サフィーを誰よりも敵視していた二人。
だが色々あって、今は敵視はしていない。していないが、だからと言って仲良くなった訳でも無い。
そんなサフィーの威圧感と魔力に絶句する二人。ほんの数ヶ月前までは自分達の方がレベルもランクも上だったのに、そのたった数ヶ月の間に、かつてのライバルは信じられない程に強くなった。一体何をどうすれば、こんな僅かな月日でこれほどまでに強くなれるのだろうか。
その答えは、サフィーの隣に立つ少女。あの黒髪の少女と、もう一人の黒髪少女が現れてから、サフィーとリーシャの人生は劇的に変わった。
冒険者としては完全に『負け組』だったのに、あの黒髪少女達が現れてからは『勝ち組』になったのだ。
「あっ、イリアーナさーん!」
そんな未来とサフィーは後ろを振り返る事も無く、受付けカウンターへと直行する。もし振り返っていれば、かつて自分を馬鹿にした二人が、戦慄の表情を浮かべている姿を見る事になったのだが、どうやらそうはならなかったようだ。
「少しお久しぶりですねミクさん、サフィーさん。と言うか、珍しい組み合わせですね?」
いつもの柔らかな笑顔で応対する受付嬢のイリアーナ。彼女は冒険者ではなく一般人なので、未来とサフィーが無意識に放出している威圧感や闘気などを察知する能力は無い。なのでいつものように自然体だった。
「まあね!サフィーがどうしてもあたしと二人がいいって言うから」
「はぁぁ~~ッ!!?なに訳わかんない事言ってんのよ!あんたが勝手にあたしの手を引いて来たんでしょ!!」
「え?手繋ぐのイヤじゃないって言ってたじゃん」
「ちょっ!?いっ、言ったけど!それは今は関係ないでしょ!!」
顔を真っ赤にするサフィーを見て、イリアーナがクスッと笑う。
「ふふ、相変わらず仲良しですねお二人は」
「でしょ!?」
「どこが!?」
きっちり同じタイミングで答える辺り、息ピッタリで確かに仲良しと言えなくもない。
「それで、今日はどのようなご用件でしょうか?」
「うん。あのね、オルガノフのおじさんに会いたいんだけど!」
未来の元気で大きな声が、ギルドホールに響いたのだった。
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