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皇女との邂逅の章
140.幼い頃から
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リーシャの膣口に自らの陰茎を充てがうカロン。
ようやくだ、ようやくこの瞬間が訪れた。このまま腰を落としてゆけば、この人生最大にまで膨張した肉棒が、この世で最も恋い焦がれ愛するリーシャの膣内へ侵入出来るのだ。
それは男性として生まれて来た喜びを、全身全霊で感じる事の出来る瞬間。魂そのものが震える達成感。その瞬間がようやく訪れたのだ。あとは少しずつこの硬く膨らんだ亀頭を膣内へと進めてゆけばーーーーーー
「嫌ぁぁぁーーーーーッ!!!!!」
無意識だった。リーシャはベッドの支柱から伸びた革紐に手を縛られながら、無意識のうちに手のひらに魔力を込めていた。
現れたのは召喚陣。そして無意識に召喚した召喚獣はーーーーー
「………なんだ?白い……狐?」
リーシャが無意識に召喚したのは、十歳の頃に初めて契約した召喚獣。これから最大に怒張した陰茎を挿入しようとした所に突然現れた三眼狐を、訝しげな目で見つめるカロン。
その時、三眼狐の額の目、第三の目が突然強烈な光を放った。
「うっ……!」
あまりの眩しさに目を閉じるカロン。まさか何か攻撃を仕掛けて来るのかと一瞬身構えるが、特にそういう様子は無い。
「くっ………」
不意打ちのように目くらましを食らったが、だんだんと視界が回復してくる。そしてすぐに三眼狐を確認するが、召喚された時と全く同じ場所で佇んでいる。
それを見て、カロンは思わず笑いが込み上げて来る。召喚獣だからと警戒したが、どうやら攻撃手段は何も持っていないらしい。もしも何かしらの攻撃手段を有しているのなら、今の目くらましの間に仕掛けて来ていた筈だからだ。
「ははは、それが君の能力かい?使えない召喚獣も居たものだ」
目くらましなど何だと言うのだ。そんなものをいくら食らった所で、痛くも痒くもない。
そして、これからリーシャと繋がる事に対しても何の問題も無い。再び同じように目くらましをしてきた所で、そもそも視界など必要無いのだ。目が見えなくても挿入は出来るし、抽挿も出来る。
あえて言えば、犯されているリーシャの表情、感じているリーシャの表情が見られなくなるのが残念だが、そんなのは視力が回復してから見ればいい。とにかく今は、一刻でも早く挿入したい。
(思いがけない邪魔は入ったが、これでようやく………)
気が付けば、いつの間にかリーシャの叫び声が聞こえなくなっていた。どうやら観念したかと、僅かに回復した視覚で視線を自身の男根へと戻す。リーシャの膣内に挿入する為に。
ーー赤黒い腐った身体が視界に入った。
肉は原型が分からぬほどに腐り落ち、身体の中身が飛び出している。
手を掛けていた筈の白い太ももはドス黒く変色し、朽ちた肉の中では無数の蟲が蠢いている。自身の硬く膨張した亀頭を宛てがっていた膣口からは、黒い液体が溢れ出して赤黒い亀頭を真っ黒に染めていた。
「うわぁぁぁぁーーーーーーッ!!!!」
反射的に後ろに飛び退くカロン。全身からは汗が吹き出し、粟だった身体には鳥肌が立って総毛立つ。
「な、なななななっ!!!!」
どうなっているのだ。今の今までこの世で最も恋い焦がれる美しい少女、リーシャをその手に抱いていた筈だ。
リーシャの美しい胸を、性器を愛撫し、いよいよ挿入する直前まで事が運んでいた筈なのだ。
それなのに、一体なんだコレは!?何故美しいリーシャが一瞬にして、腐り果てた肉の塊になっているのか。なぜこんな………屍人のような姿になってしまったのか。
「はぁはぁはぁ!!」
ブルブルと身体が震える。みっともなく床に尻もちを付き、ゆっくりと後ずさる。だが、そんなカロンの足首を、突如として床の中から現れた手が掴む。
「ひいっ!!」
床から生えるように現れた手が、カロンの身体を床の中へと引きずり込もうとする。ガタガタと震えながらも、必死に抵抗するカロン。
「や、やめ……やめやめやめてくくくれれーーー」
必死に腕に力を込めて、何とか後ろに逃れようとする。そのあまりの恐怖からか、今の今まで硬く怒張していた陰茎は、小さくなってだらし無くブラブラと揺れている。
そして今度はそんなカロンの手首を、新たに現れた手が掴む。そのまま足と腕、両方から床の中に引きずり込まれようとしていた。
「あ……ああっ!アアアアァァァァァーーーーーーッ!!!!!」
ーーその光景を、相変わらずベッドに拘束されて身動きの取れないリーシャが茫然と眺めていた。
「な……に……?」
やめてと鳴き叫んでいたリーシャの前に、突如現れた召喚獣の三眼狐。その三眼狐の額の目が突然光ったかと思うと、次の瞬間にはカロンはリーシャから飛び退くように離れ、ガタガタと震えながら叫び始めた。
もちろん、カロンに挿入される危機から脱したリーシャは処女を奪われずに済んだのだが、カロンの突然の奇行に思考が着いてゆけずに茫然とする事しか出来ない。
その視界には縮んだカロンの男根も映りこんでいて、すぐにでも目を背けたいのだが、またカロンが襲いかかって来るかもしれない恐怖に、目を逸らす事も出来ない。
『良かった。何とか間に合ったね』
茫然とするリーシャの耳に、昔から良く知っている声が届いた。
「コン………ちゃん……?」
『良かったリーシャ、ちゃんと僕の声が聴こえていたんだね』
「え……こ、声?」
その瞬間、唐突に思い出すリーシャ。そう、先ほど夢の中で誰かに語り掛けられていたのだ。早く目を覚ませ、早く起きろと。
その声の言うとおりに目を覚してみれば、自分は見た事も無い部屋のベッドに拘束され、カロンから辱めを受けていた。
どうやらギリギリの所で最後までは至らなかったみたいだが、あの時目を覚していなければ、きっと今頃はーーーーー
「コンちゃんが……助けてくれたのね……」
既に流れていた涙が、更に量を増やして流れ落ちる。
もう駄目だと思った。サフィーに助けてと叫んでも、クローバーのみんなに助けを求めても、もう間に合わないと絶望していた。
このまま無理やりカロンに………泣き叫びながら、心の奥底で半ば諦めていた。
そんな状況を救ってくれたのは、自身が無意識に呼び出した召喚獣。幼い頃に初めて契約したその召喚獣は、今の今まで探索専門の召喚獣だと思っていた。
「ありがとうコンちゃん……でも……どうなっているの……?」
どうなっているのとは、現在のカロンの様子だ。何故突然あんな奇行に走ったのか、その理由が分からない。
『彼には幻覚を見せているよ。かなりキツいのをね』
「幻……覚……?」
まさか三眼狐にそんな能力があるなんて知らなかった。先ほど額の目が光ったのは、おそらくその幻覚を見せる為のものなのだろう。あの額の目は、探索時に色々と良く見えるようにあるのだと思っていたのだが、実は幻覚を見せる為のものらしい。
『僕が彼の幻覚を解かない限り、もう正気には戻らないから安心して』
三眼狐はそう言うと、リーシャの元から離れた。そのまま窓際まで歩いて行く。
「コ、コンちゃん……?」
『助けを呼んで来るよ。すぐに戻るから』
どうやらリーシャの拘束を解くような能力は持ち合わせていないらしい。なので助けを呼びに行くらしいのだが、リーシャはゆっくりと首を横に振る。
「ま、待って……行かないで……」
いくら幻覚を見ているからと言って、自分を強姦しようとした男と二人きりで部屋に残されるのは恐怖でしかない。万が一、幻覚が解けてしまったらーーーーー
「お願いコンちゃん……傍に居て……!」
行かないで。一人にしないで。カロンと二人だけにしないで。そんな悲痛な心の叫びを知っているのかいないのか、三眼狐は『すぐに戻るから』と繰り返してその姿を消した。
「嫌………コンちゃん……コンちゃぁぁぁーーーーん!!」
身動きの取れないリーシャの叫び声が、部屋の中に響き渡った。
ようやくだ、ようやくこの瞬間が訪れた。このまま腰を落としてゆけば、この人生最大にまで膨張した肉棒が、この世で最も恋い焦がれ愛するリーシャの膣内へ侵入出来るのだ。
それは男性として生まれて来た喜びを、全身全霊で感じる事の出来る瞬間。魂そのものが震える達成感。その瞬間がようやく訪れたのだ。あとは少しずつこの硬く膨らんだ亀頭を膣内へと進めてゆけばーーーーーー
「嫌ぁぁぁーーーーーッ!!!!!」
無意識だった。リーシャはベッドの支柱から伸びた革紐に手を縛られながら、無意識のうちに手のひらに魔力を込めていた。
現れたのは召喚陣。そして無意識に召喚した召喚獣はーーーーー
「………なんだ?白い……狐?」
リーシャが無意識に召喚したのは、十歳の頃に初めて契約した召喚獣。これから最大に怒張した陰茎を挿入しようとした所に突然現れた三眼狐を、訝しげな目で見つめるカロン。
その時、三眼狐の額の目、第三の目が突然強烈な光を放った。
「うっ……!」
あまりの眩しさに目を閉じるカロン。まさか何か攻撃を仕掛けて来るのかと一瞬身構えるが、特にそういう様子は無い。
「くっ………」
不意打ちのように目くらましを食らったが、だんだんと視界が回復してくる。そしてすぐに三眼狐を確認するが、召喚された時と全く同じ場所で佇んでいる。
それを見て、カロンは思わず笑いが込み上げて来る。召喚獣だからと警戒したが、どうやら攻撃手段は何も持っていないらしい。もしも何かしらの攻撃手段を有しているのなら、今の目くらましの間に仕掛けて来ていた筈だからだ。
「ははは、それが君の能力かい?使えない召喚獣も居たものだ」
目くらましなど何だと言うのだ。そんなものをいくら食らった所で、痛くも痒くもない。
そして、これからリーシャと繋がる事に対しても何の問題も無い。再び同じように目くらましをしてきた所で、そもそも視界など必要無いのだ。目が見えなくても挿入は出来るし、抽挿も出来る。
あえて言えば、犯されているリーシャの表情、感じているリーシャの表情が見られなくなるのが残念だが、そんなのは視力が回復してから見ればいい。とにかく今は、一刻でも早く挿入したい。
(思いがけない邪魔は入ったが、これでようやく………)
気が付けば、いつの間にかリーシャの叫び声が聞こえなくなっていた。どうやら観念したかと、僅かに回復した視覚で視線を自身の男根へと戻す。リーシャの膣内に挿入する為に。
ーー赤黒い腐った身体が視界に入った。
肉は原型が分からぬほどに腐り落ち、身体の中身が飛び出している。
手を掛けていた筈の白い太ももはドス黒く変色し、朽ちた肉の中では無数の蟲が蠢いている。自身の硬く膨張した亀頭を宛てがっていた膣口からは、黒い液体が溢れ出して赤黒い亀頭を真っ黒に染めていた。
「うわぁぁぁぁーーーーーーッ!!!!」
反射的に後ろに飛び退くカロン。全身からは汗が吹き出し、粟だった身体には鳥肌が立って総毛立つ。
「な、なななななっ!!!!」
どうなっているのだ。今の今までこの世で最も恋い焦がれる美しい少女、リーシャをその手に抱いていた筈だ。
リーシャの美しい胸を、性器を愛撫し、いよいよ挿入する直前まで事が運んでいた筈なのだ。
それなのに、一体なんだコレは!?何故美しいリーシャが一瞬にして、腐り果てた肉の塊になっているのか。なぜこんな………屍人のような姿になってしまったのか。
「はぁはぁはぁ!!」
ブルブルと身体が震える。みっともなく床に尻もちを付き、ゆっくりと後ずさる。だが、そんなカロンの足首を、突如として床の中から現れた手が掴む。
「ひいっ!!」
床から生えるように現れた手が、カロンの身体を床の中へと引きずり込もうとする。ガタガタと震えながらも、必死に抵抗するカロン。
「や、やめ……やめやめやめてくくくれれーーー」
必死に腕に力を込めて、何とか後ろに逃れようとする。そのあまりの恐怖からか、今の今まで硬く怒張していた陰茎は、小さくなってだらし無くブラブラと揺れている。
そして今度はそんなカロンの手首を、新たに現れた手が掴む。そのまま足と腕、両方から床の中に引きずり込まれようとしていた。
「あ……ああっ!アアアアァァァァァーーーーーーッ!!!!!」
ーーその光景を、相変わらずベッドに拘束されて身動きの取れないリーシャが茫然と眺めていた。
「な……に……?」
やめてと鳴き叫んでいたリーシャの前に、突如現れた召喚獣の三眼狐。その三眼狐の額の目が突然光ったかと思うと、次の瞬間にはカロンはリーシャから飛び退くように離れ、ガタガタと震えながら叫び始めた。
もちろん、カロンに挿入される危機から脱したリーシャは処女を奪われずに済んだのだが、カロンの突然の奇行に思考が着いてゆけずに茫然とする事しか出来ない。
その視界には縮んだカロンの男根も映りこんでいて、すぐにでも目を背けたいのだが、またカロンが襲いかかって来るかもしれない恐怖に、目を逸らす事も出来ない。
『良かった。何とか間に合ったね』
茫然とするリーシャの耳に、昔から良く知っている声が届いた。
「コン………ちゃん……?」
『良かったリーシャ、ちゃんと僕の声が聴こえていたんだね』
「え……こ、声?」
その瞬間、唐突に思い出すリーシャ。そう、先ほど夢の中で誰かに語り掛けられていたのだ。早く目を覚ませ、早く起きろと。
その声の言うとおりに目を覚してみれば、自分は見た事も無い部屋のベッドに拘束され、カロンから辱めを受けていた。
どうやらギリギリの所で最後までは至らなかったみたいだが、あの時目を覚していなければ、きっと今頃はーーーーー
「コンちゃんが……助けてくれたのね……」
既に流れていた涙が、更に量を増やして流れ落ちる。
もう駄目だと思った。サフィーに助けてと叫んでも、クローバーのみんなに助けを求めても、もう間に合わないと絶望していた。
このまま無理やりカロンに………泣き叫びながら、心の奥底で半ば諦めていた。
そんな状況を救ってくれたのは、自身が無意識に呼び出した召喚獣。幼い頃に初めて契約したその召喚獣は、今の今まで探索専門の召喚獣だと思っていた。
「ありがとうコンちゃん……でも……どうなっているの……?」
どうなっているのとは、現在のカロンの様子だ。何故突然あんな奇行に走ったのか、その理由が分からない。
『彼には幻覚を見せているよ。かなりキツいのをね』
「幻……覚……?」
まさか三眼狐にそんな能力があるなんて知らなかった。先ほど額の目が光ったのは、おそらくその幻覚を見せる為のものなのだろう。あの額の目は、探索時に色々と良く見えるようにあるのだと思っていたのだが、実は幻覚を見せる為のものらしい。
『僕が彼の幻覚を解かない限り、もう正気には戻らないから安心して』
三眼狐はそう言うと、リーシャの元から離れた。そのまま窓際まで歩いて行く。
「コ、コンちゃん……?」
『助けを呼んで来るよ。すぐに戻るから』
どうやらリーシャの拘束を解くような能力は持ち合わせていないらしい。なので助けを呼びに行くらしいのだが、リーシャはゆっくりと首を横に振る。
「ま、待って……行かないで……」
いくら幻覚を見ているからと言って、自分を強姦しようとした男と二人きりで部屋に残されるのは恐怖でしかない。万が一、幻覚が解けてしまったらーーーーー
「お願いコンちゃん……傍に居て……!」
行かないで。一人にしないで。カロンと二人だけにしないで。そんな悲痛な心の叫びを知っているのかいないのか、三眼狐は『すぐに戻るから』と繰り返してその姿を消した。
「嫌………コンちゃん……コンちゃぁぁぁーーーーん!!」
身動きの取れないリーシャの叫び声が、部屋の中に響き渡った。
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