136 / 191
剣士の章
124.絶交
しおりを挟む
お兄ちゃんと一緒に戦うね
リティアの発した言葉の真意を誰もが理解出来ず、呆然と固まっていた。そんな中でいち早くリティアに声を掛けたのはエルマーだった。
「リティア?それは一体どういう………」
「わたし、お兄ちゃんと一緒に戦うから。だから、みんなはもうわたしの傍に居なくていいよ」
リティアの言葉が三人の耳に届き、鼓膜を揺らす。それはリティアから発せられてるとは思えない程、声に何の感情も乗っていなかった。
「あ、あはは……何言ってるのリティアちゃん………?ミ、ミミリ達も一緒にーーー」
「もういいの。危ないからもう一緒に居ない方がいいよ」
「あ、危ないからこそ一緒に居るんでしょう!?リティア一人行かせるなんて出来る訳ーーーー」
「わたしの従者である二人に命令します。もうわたしに構わないで」
驚愕の表情を浮かべるエルマーとミミリ。エルマーはワナワナと震え、ミミリは目尻に涙を溜めている。
「ふ、ふざけないで下さい!そんな命令なんて聞ける筈無いでしょう!!?」
「わたしは魔姫だよ。命令には従って」
淡々と言い放つリティア。その瞳には先ほどよりも光が宿ってはいたが、それはエルマーやミミリが知るリティアの瞳とは違ってとても冷たい瞳だった。
「リティアちゃん………どうしてそんな悲しい事言うの……?わ、わたしもエルマーちゃんも頑張ってリティアちゃんに会いに来たのにぃぃ~~ッ」
ポロポロと泣き出すミミリ。リティアはくるりと踵を返すと、最後に二人に言い放った。
「命令聞けないなら……もう絶交だから」
そう言って声を絞り出したリティアはーーーーー、今にでも泣き出してしまいそうに顔を歪めていた。そしてそのまま、振り返る事無く歩き去って行く。
「リティア………何で………何でよぉぉーーーーっ!!」
「リティアちゃあぁぁぁーーーん!!うわぁぁぁぁぁーーーん!!」
リティアの遠ざかる後ろ姿を見ながら泣き叫ぶエルマーとミミリ。そんな二人の声を背中で聞き、リティアはグスッと鼻を鳴らした。
「泣くぐらいならあんな事言わなければいいのに」
その声は、すぐ隣で聞こえて来た。ハッと隣を見ると、いつの間にかアルトが一緒に歩いて着いて来ていたのだ。
「アルト………何してるの………」
「え?一緒に行くから着いて来てるんだけど」
「わたしの話………聞いてたよね。もうわたしに構わないでって」
「聞こえたよ。でも俺はリティアの従者じゃないし」
何事も無かったかの様にそう言うアルトを前に、リティアは立ち止まる。そしてアルトの顔を真剣な顔で見つめた。
「じゃあアルトとも絶交するから。だからもう着いて来ないで」
「じゃあ俺もリティアと絶交するよ。だから俺のする事に口を挟まないでね」
「なに……それ………そんなの………」
何故だろう。こんなにも理不尽な事を言われているのに何故か苛々しない。それどころか、優しいアルトの声音が心に染み込んで来る。
「リティア言ったよね、俺達は似てるって。俺も今ならそう思うよ」
「…………え?」
「俺もさ、セリナと勇者の関係を知った時はショックでさ、かなり危うい精神状態だった。でもその後に色々あって、一度持ち直したんだけど更に酷く傷ついて………今のリティアみたいな虚ろな目をしてたと思う」
何となくアルトの話を黙って聞くリティア。しかし彼女に言わせれば、自分の負っている悲しみはアルトの比ではない。もちろんアルトも辛い思いをしたのは知っているが、自分は父を失ったのだ。しかもその父の命を奪ったのはーーーーー
アルトとリティアが立ち止まって話をしている姿を見て、エルマーとミミリは顔を見合わせる。そしてコクリと頷くと、二人の元に向かって駆け出した。
「リティアに比べれば俺の負った心の傷なんて大した事無いって思うかもしれない。でも、セリナは俺の全てだった。失った幼馴染や仲間は、本当に掛け替えの無い存在だった。そんな人達を自分から手放してしまった俺は、今のリティアを絶対に放っておけない」
「何で………わたしとアルトじゃ事情が………」
「同じだよ。リティアは今、大事な人達を自分から手放そうとしてる。俺が以前そうしてしまったみたいに」
リティアの瞳から涙が零れ落ちる。そんな事、アルトに言われるまでも無く分かっているのだ。
何年も魔王城の中で独りぼっちだったリティアの前に、数年ぶりに現れたエルマーとミミリ。二人は血の滲むような努力の末、リティアの従者としての地位を勝ち取って会いに来てくれた。あの時、どれほど心が救われたのか言葉では語り尽くせない。
でもだからこそ、これ以上一緒には居られない。父が魔王だった時なら死ぬ前に二人を逃がす事も出来ただろうが、あの兄が魔王になった今はきっとそれは出来ない。死ぬまで戦えと、捨て石にされてしまう。
「大事だから………これ以上巻き込みたくないの………エルマーもミミリも…………もちろんアルトだって」
「巻き込まれたなんて思ってないよ。俺達は自分の意思でリティアを助けたいんだ。ね、二人とも」
いつの間にかリティアのすぐ後ろに立っていたエルマーとミミリ。荒い息を吐き出しながら、リティアをじっと見つめる。
「エルマー………ミミリ………」
「まったく………どうしようもないお馬鹿さんですよリティアは。わたしはいつだって貴女とミミリの為に命懸けで行動してます。馬鹿にしないでください」
「エルマー…………」
「そうだよ!ミミリだって二人を守る為に命懸けなんだから!自分の事なんかよりも二人の方がいっぱい大事なんだから!」
「ミミリ………」
二人の言葉が直接リティアの心を叩く。だがそれでも、やはり一緒には連れて行けない。エルマー、ミミリ、アルトの三人を、兄の元でなんて戦わせたくない。
「お父さんの命を奪ったのはね………お兄ちゃんなの」
リティアの言葉に目を細めるアルトと、驚愕の表情を浮かべるミミリ。エルマーだけはその事を予想していたので驚かないが、何故リティアがその事実に至ったのかを訊ねる。
「お父さんが死んだ時………お父さんの意識が流れ込んで来たの。最後にさようならって言いに来てくれた………その時にクレイには近づくなって…………」
ーーリティア。クレイはもはや、お前の知る優しい兄では無い
「お父さん………?」
ーー私の命を奪い、魔王の力を手にしたあいつは喜びに打ちひしがれていた
「お兄ちゃんが………お父さんを………」
ーーあれは悪鬼だ。あれに関わればお前も不幸になる
「そんな………お兄ちゃん………」
ーー逃げろリティア。クレイには近づくな。分かったな
「お父さん!お父さん!」
ーーさようならリティア。お父さんの為に色々ありがとう。幸せになってくれよ
「嫌だお父さん!行っちゃ嫌だよぉぉ!!」
ーーお前が居てくれて………私は幸せに………
「お父さぁぁぁーーーーん!!」
リティアの話を聞き終えたエルマーとミミリは、涙を流していた。最後に父が、最愛の娘を心配して会いに来てくれた。その父の娘を愛する想いが、エルマーとミミリの胸に突き刺さったのだ。
「そんな……グスッ……事が………」
「うぅ………リティアちゃんのお父さん………ひっく………リティアを守ろうとしてくれたんだね………」
「うん………でも………」
リティアの表情が沈んで行く。それは、父がリティアの中から消えてしまった直後に起こった。
「お兄ちゃんが魔王になって………わたしは”三魔闘”に選ばれちゃった………三魔闘は魔王の所に行かなくちゃならないの………」
それは魔族の主神ガルサ・タンネリアスの造った『黒の核』の揺るがせない決まり。三魔闘に選ばれた者は魔王の元に馳せ参じ、魔王に力を貸さなければならない。だからこそリティアは、一人で兄の元へ行こうと決心したのだ。大事な、とても大事な三人だからこそ、不幸になると分かっていて連れて行く事など出来なかった。
「分かってくれたよね………命を掛けるとかそういう事じゃないの。行けばみんな不幸になるから、だから連れて行けない。わたしはみんなが不幸になるなんて耐えられないもん。わたしはわたしの為にみんなを置いてーーーー」
「リティアは、お父さんの言葉を聞いてどう思ったの?」
突然、今まで口を閉していたアルトがリティアにそう訊ねた。
「え…………」
「お父さんの言葉を聞いて、お兄さんに協力したいと思った?」
ふるふると首を横に振るリティア。
「前は………どんなに酷い性格になっても大事なお兄ちゃんだって思ってた。大切な家族なんだって。でも………お父さんを…………うぅ………」
「今はもう大事じゃないって事だよね。お兄さんの所に行くのは三魔闘としての決まりだから仕方なくで、協力する気は無い」
こくんと頷くリティア。出来る事なら、昔の優しい兄戻って欲しい。そして父を殺した罪を償って欲しいが、それは叶わぬ夢物語だろう。そんな心が僅かにでも残っているのなら、父の命を奪ったりなどしない。奪った後で喜びに打ちひしがれたりしない。
「そっか。それなら勇者と戦う前にやる事が一つ増えただけだ」
「………………え?」
アルトの発した言葉の意味が分からずに、顔を上げてアルトを見るリティア。その横で、今度はエルマーが声を上げた。
「そうですね。まあ相手は手強いですが、勇者一行と戦うにはちょうど良い肩慣らしでしょう」
「え……?え……?」
エルマーの言ってる事を何となく理解するも、まだ確信は持っていないリティア。だがミミリの言葉を聞き、それは確信へと至る。
「ビシバシギューッって倒しちゃお!リティアちゃんには悪いけど手加減しないから!」
「ちょ、ちょっと待って!わたし達魔族は魔王に攻撃なんてーーーー」
そこまで言って、ハッと視線を正面に戻す。目の前に居るのは、その魔王に唯一攻撃する事が出来る人族の青年。
「倒そう魔王を。そしてみんなで勇者を迎え撃とう」
ボロボロと涙を流すリティア。自分から大事な者を手放す前に、自分の進む道は一つでは無いと教えてくれたアルト。
そんな、共に歩んでくれると言ってくれた人族の青年に抱きつき、その胸の中で泣き続けるのだったーーーーー
リティアの発した言葉の真意を誰もが理解出来ず、呆然と固まっていた。そんな中でいち早くリティアに声を掛けたのはエルマーだった。
「リティア?それは一体どういう………」
「わたし、お兄ちゃんと一緒に戦うから。だから、みんなはもうわたしの傍に居なくていいよ」
リティアの言葉が三人の耳に届き、鼓膜を揺らす。それはリティアから発せられてるとは思えない程、声に何の感情も乗っていなかった。
「あ、あはは……何言ってるのリティアちゃん………?ミ、ミミリ達も一緒にーーー」
「もういいの。危ないからもう一緒に居ない方がいいよ」
「あ、危ないからこそ一緒に居るんでしょう!?リティア一人行かせるなんて出来る訳ーーーー」
「わたしの従者である二人に命令します。もうわたしに構わないで」
驚愕の表情を浮かべるエルマーとミミリ。エルマーはワナワナと震え、ミミリは目尻に涙を溜めている。
「ふ、ふざけないで下さい!そんな命令なんて聞ける筈無いでしょう!!?」
「わたしは魔姫だよ。命令には従って」
淡々と言い放つリティア。その瞳には先ほどよりも光が宿ってはいたが、それはエルマーやミミリが知るリティアの瞳とは違ってとても冷たい瞳だった。
「リティアちゃん………どうしてそんな悲しい事言うの……?わ、わたしもエルマーちゃんも頑張ってリティアちゃんに会いに来たのにぃぃ~~ッ」
ポロポロと泣き出すミミリ。リティアはくるりと踵を返すと、最後に二人に言い放った。
「命令聞けないなら……もう絶交だから」
そう言って声を絞り出したリティアはーーーーー、今にでも泣き出してしまいそうに顔を歪めていた。そしてそのまま、振り返る事無く歩き去って行く。
「リティア………何で………何でよぉぉーーーーっ!!」
「リティアちゃあぁぁぁーーーん!!うわぁぁぁぁぁーーーん!!」
リティアの遠ざかる後ろ姿を見ながら泣き叫ぶエルマーとミミリ。そんな二人の声を背中で聞き、リティアはグスッと鼻を鳴らした。
「泣くぐらいならあんな事言わなければいいのに」
その声は、すぐ隣で聞こえて来た。ハッと隣を見ると、いつの間にかアルトが一緒に歩いて着いて来ていたのだ。
「アルト………何してるの………」
「え?一緒に行くから着いて来てるんだけど」
「わたしの話………聞いてたよね。もうわたしに構わないでって」
「聞こえたよ。でも俺はリティアの従者じゃないし」
何事も無かったかの様にそう言うアルトを前に、リティアは立ち止まる。そしてアルトの顔を真剣な顔で見つめた。
「じゃあアルトとも絶交するから。だからもう着いて来ないで」
「じゃあ俺もリティアと絶交するよ。だから俺のする事に口を挟まないでね」
「なに……それ………そんなの………」
何故だろう。こんなにも理不尽な事を言われているのに何故か苛々しない。それどころか、優しいアルトの声音が心に染み込んで来る。
「リティア言ったよね、俺達は似てるって。俺も今ならそう思うよ」
「…………え?」
「俺もさ、セリナと勇者の関係を知った時はショックでさ、かなり危うい精神状態だった。でもその後に色々あって、一度持ち直したんだけど更に酷く傷ついて………今のリティアみたいな虚ろな目をしてたと思う」
何となくアルトの話を黙って聞くリティア。しかし彼女に言わせれば、自分の負っている悲しみはアルトの比ではない。もちろんアルトも辛い思いをしたのは知っているが、自分は父を失ったのだ。しかもその父の命を奪ったのはーーーーー
アルトとリティアが立ち止まって話をしている姿を見て、エルマーとミミリは顔を見合わせる。そしてコクリと頷くと、二人の元に向かって駆け出した。
「リティアに比べれば俺の負った心の傷なんて大した事無いって思うかもしれない。でも、セリナは俺の全てだった。失った幼馴染や仲間は、本当に掛け替えの無い存在だった。そんな人達を自分から手放してしまった俺は、今のリティアを絶対に放っておけない」
「何で………わたしとアルトじゃ事情が………」
「同じだよ。リティアは今、大事な人達を自分から手放そうとしてる。俺が以前そうしてしまったみたいに」
リティアの瞳から涙が零れ落ちる。そんな事、アルトに言われるまでも無く分かっているのだ。
何年も魔王城の中で独りぼっちだったリティアの前に、数年ぶりに現れたエルマーとミミリ。二人は血の滲むような努力の末、リティアの従者としての地位を勝ち取って会いに来てくれた。あの時、どれほど心が救われたのか言葉では語り尽くせない。
でもだからこそ、これ以上一緒には居られない。父が魔王だった時なら死ぬ前に二人を逃がす事も出来ただろうが、あの兄が魔王になった今はきっとそれは出来ない。死ぬまで戦えと、捨て石にされてしまう。
「大事だから………これ以上巻き込みたくないの………エルマーもミミリも…………もちろんアルトだって」
「巻き込まれたなんて思ってないよ。俺達は自分の意思でリティアを助けたいんだ。ね、二人とも」
いつの間にかリティアのすぐ後ろに立っていたエルマーとミミリ。荒い息を吐き出しながら、リティアをじっと見つめる。
「エルマー………ミミリ………」
「まったく………どうしようもないお馬鹿さんですよリティアは。わたしはいつだって貴女とミミリの為に命懸けで行動してます。馬鹿にしないでください」
「エルマー…………」
「そうだよ!ミミリだって二人を守る為に命懸けなんだから!自分の事なんかよりも二人の方がいっぱい大事なんだから!」
「ミミリ………」
二人の言葉が直接リティアの心を叩く。だがそれでも、やはり一緒には連れて行けない。エルマー、ミミリ、アルトの三人を、兄の元でなんて戦わせたくない。
「お父さんの命を奪ったのはね………お兄ちゃんなの」
リティアの言葉に目を細めるアルトと、驚愕の表情を浮かべるミミリ。エルマーだけはその事を予想していたので驚かないが、何故リティアがその事実に至ったのかを訊ねる。
「お父さんが死んだ時………お父さんの意識が流れ込んで来たの。最後にさようならって言いに来てくれた………その時にクレイには近づくなって…………」
ーーリティア。クレイはもはや、お前の知る優しい兄では無い
「お父さん………?」
ーー私の命を奪い、魔王の力を手にしたあいつは喜びに打ちひしがれていた
「お兄ちゃんが………お父さんを………」
ーーあれは悪鬼だ。あれに関わればお前も不幸になる
「そんな………お兄ちゃん………」
ーー逃げろリティア。クレイには近づくな。分かったな
「お父さん!お父さん!」
ーーさようならリティア。お父さんの為に色々ありがとう。幸せになってくれよ
「嫌だお父さん!行っちゃ嫌だよぉぉ!!」
ーーお前が居てくれて………私は幸せに………
「お父さぁぁぁーーーーん!!」
リティアの話を聞き終えたエルマーとミミリは、涙を流していた。最後に父が、最愛の娘を心配して会いに来てくれた。その父の娘を愛する想いが、エルマーとミミリの胸に突き刺さったのだ。
「そんな……グスッ……事が………」
「うぅ………リティアちゃんのお父さん………ひっく………リティアを守ろうとしてくれたんだね………」
「うん………でも………」
リティアの表情が沈んで行く。それは、父がリティアの中から消えてしまった直後に起こった。
「お兄ちゃんが魔王になって………わたしは”三魔闘”に選ばれちゃった………三魔闘は魔王の所に行かなくちゃならないの………」
それは魔族の主神ガルサ・タンネリアスの造った『黒の核』の揺るがせない決まり。三魔闘に選ばれた者は魔王の元に馳せ参じ、魔王に力を貸さなければならない。だからこそリティアは、一人で兄の元へ行こうと決心したのだ。大事な、とても大事な三人だからこそ、不幸になると分かっていて連れて行く事など出来なかった。
「分かってくれたよね………命を掛けるとかそういう事じゃないの。行けばみんな不幸になるから、だから連れて行けない。わたしはみんなが不幸になるなんて耐えられないもん。わたしはわたしの為にみんなを置いてーーーー」
「リティアは、お父さんの言葉を聞いてどう思ったの?」
突然、今まで口を閉していたアルトがリティアにそう訊ねた。
「え…………」
「お父さんの言葉を聞いて、お兄さんに協力したいと思った?」
ふるふると首を横に振るリティア。
「前は………どんなに酷い性格になっても大事なお兄ちゃんだって思ってた。大切な家族なんだって。でも………お父さんを…………うぅ………」
「今はもう大事じゃないって事だよね。お兄さんの所に行くのは三魔闘としての決まりだから仕方なくで、協力する気は無い」
こくんと頷くリティア。出来る事なら、昔の優しい兄戻って欲しい。そして父を殺した罪を償って欲しいが、それは叶わぬ夢物語だろう。そんな心が僅かにでも残っているのなら、父の命を奪ったりなどしない。奪った後で喜びに打ちひしがれたりしない。
「そっか。それなら勇者と戦う前にやる事が一つ増えただけだ」
「………………え?」
アルトの発した言葉の意味が分からずに、顔を上げてアルトを見るリティア。その横で、今度はエルマーが声を上げた。
「そうですね。まあ相手は手強いですが、勇者一行と戦うにはちょうど良い肩慣らしでしょう」
「え……?え……?」
エルマーの言ってる事を何となく理解するも、まだ確信は持っていないリティア。だがミミリの言葉を聞き、それは確信へと至る。
「ビシバシギューッって倒しちゃお!リティアちゃんには悪いけど手加減しないから!」
「ちょ、ちょっと待って!わたし達魔族は魔王に攻撃なんてーーーー」
そこまで言って、ハッと視線を正面に戻す。目の前に居るのは、その魔王に唯一攻撃する事が出来る人族の青年。
「倒そう魔王を。そしてみんなで勇者を迎え撃とう」
ボロボロと涙を流すリティア。自分から大事な者を手放す前に、自分の進む道は一つでは無いと教えてくれたアルト。
そんな、共に歩んでくれると言ってくれた人族の青年に抱きつき、その胸の中で泣き続けるのだったーーーーー
0
お気に入りに追加
834
あなたにおすすめの小説
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる