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聖女の章

59.興味

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 ※ようやくアルトサイド再開です。でもこの章は『聖女の章』なので、基本的にフィリア(とセリナ)にスポットを当てています。なのでアルトの活躍はこの後もあまり無いです。あと、しばらくエッチシーンも無いです(笑)







 ノエルの心臓は爆発寸前だった。


「ふぅ……気持ちがいい。ノエルは上手だね」


 アルトと二人きり。まさかこんな瞬間が来るなど、夢にも思っていなかった。


「そ、そんな事無いです………あの、わたしも気持ちいい……」
「ごめんね、俺はその………下手で。せっかくこんなに気持ちがいいのに」
「そんな事無いです!アルトさんも上手です!」
「はは……ありがとう。男として少し自身無くしてたけど………ノエルに褒められたからもっと頑張るよ」
「ーーーッ!?」


 アルトの言葉に、ただでさえ激しい鼓動が更に激しさを増す。


(嗚呼……アルトさん………好き………)


 密かにアルトへの想いが増して行くノエル。そんなアルトと二人きりの今の状況が、まさに夢の様だった。


 さて、傍から聞くと怪しい会話に聞こえる二人だが、別にやらしい事をしている訳では無い。


「それにしても、今日は風が気持ちいいね」
「は、はい!わ、わたしも気持ちいいなって思ってて………」
「でもごめんね。もう少し上手に手綱を握れると良かったんだけど」
「い、いえいえ!馬もちゃんと歩いてるし、問題無いと思います」
「うん、ありがとう。ノエル、何か急に声が大きくなったね?」
「~~~ッ!!」


 それはアルトに褒められたからなのだが、指摘されて思わず頬を染めるノエル。
 アルトとノエルの二人は現在、御者席に座って二人きりで手綱を握っていた。この二週間、アルト、エリーゼ、ノエルの御者が出来ない三人は、御者の経験のあるビリー、レック、サリーに付いて御者のやり方をレクチャーされていた。
 そしてこの日、アルト達三人もようやく御者が様になって来たので、ビリー達三人が隣に付かないで、二人だけでやらせてみようと言う事になり、その最初の二人がアルトとノエルになったのである。
 もちろんエリーゼが内心で羨ましがったのは言うまでも無い。


「それしてもノエルは上達が早いね」
「それはきっと……ビリーさんの教え方が上手だったからです」


 アルトたちに付いて御者を教えたのは、アルトにはサリー。エリーゼにはレック。そしてノエルにはビリーがそれぞれ固定で教えた。盗賊に遭遇した時までは教える側も教わる側もランダムだったのだが、毎回教える者が代わるより、固定した方が良いだろうとのレックの意見でそうなった。なったのだが…………


「そっか。ビリーは昔から家の用事で馬を引いてたからなぁ」
「そ、そうなんですか。それであの………アルトさんは毎回サリーさんと一緒に………」


 正直、ノエルもエリーゼも毎回気が気では無かった。あのサリーがーーーー、あんなに女のフェロモンを出しまくっている美人が毎回アルトと二人きりで教えていたのである。普通の男なら、ものの数刻でサリーに惚れてしまうだろう。


「あー………うん。サリーさんは確かに自分が手綱を握るのは上手なんだけど………」


 常に男の手綱を握るサリーは、馬の手綱を握るのも上手かったらしい。


「何かやたら身体をくっつけて来るし………ずっと変な質問して来るし………」
「か、身体を………!?」


 あの悩殺的な身体を密着させられれば、大抵の男は撃沈してしまうだろう。まさか既にアルトとサリーは………と、変な想像をして身体が熱くなるノエルだが、そんな筈は無いと首をブンブンと横に振る。
 基本的に、野宿の日はそういう行為をする隙など誰にも無い。あの性欲が人一倍強いサリーですら、野宿の日は我慢していると本人が言っていた。
 そうなると街の宿に泊まった時だけだが、グレノールの街を出て以降は、街は二つしか無かった。一週間前の盗賊を冒険者ギルドに引き渡した街と、つい二日ほど前に立ち寄った小さな街だけ。


(うう………でもそのどっちもサリーさんは………)


 その二つの街でサリーは、ビリーと行為をしていた。
 レックがエリーゼと二人きりで行為に及んだ為、サリーはビリーと。そしてそのサリー達と一緒にノエルも同じ場に。
 もちろん、ノエルは自分が好きになった人に処女を捧げると自分自身に誓っているので、ビリーと本番行為はしていない。したのはビリーへのフェラチオと、ビリーやサリーに愛撫されただけ。ビリーはノエルにれたいと懇願したが、そこはノエルがキッパリと断ったし、サリーも一緒に止めてくれた。

 つまり、どちらもサリーと一緒に居たノエルは、アルトとサリーがそんな関係では無い事は分かっている。分かってはいても、大人の色気たっぷりのサリーがアルトに密着しながら教えていたなどと聞かされては、心穏やかではいられないのだ。
 

「へ、変な質問って………どんな事を聞かれたの?」
「うん……実はーーー」


 ーー以下、アルトの回想。


「そうそう、上手よぉアルト君」
「あのサリーさん……そんなにくっつかなくても」
「うふふ、いいじゃない。アルト君はあたしの事嫌い?」
「いえ、別に嫌いでは………」


 凄くいい匂いするなサリーさん…………


「アルト君はどんな女の子がタイプなのぉ?」
「え?タイプって………」
「おっぱい大きい女と小さい女なら、どっちがいい?」


 おっぱいって………


「えっと………小さい方がいいです」


 セリナのおっぱ……………胸、小さいし。


「えーっ!?ざんね~ん。じゃあさ、どんな性格の女の子が好き?」
「性格は………大人しいけど本当はいつも元気で、内向的だけど芯がしっかりしてる、つい守ってあげたくなる感じですね」


 まあ、セリナの事だけど。


「ふふ、随分と具体的ね。もしかして彼女?」
「まあ、そんな感じです」



 ーー以上、アルトの回想終わり。



「って感じの質問だったかな」


 ちなみに、最後の彼女云々の所は口にしていない。なので、アルトの話を聞き終えたノエルは「そうなんだ~」と相槌を打ちつつも、内心とても喜んでいた。


(よ、良かった~………とりあえずサリーさんには興味無いみたい。って言うか…………)


 好きなタイプは、胸の小さい、大人しい、内向的な、つい守ってあげたくなる女の子。
 聞けば聞くほど、もしかしてそれってわたしの事?と、自分の事を言っている様な気になるノエル。もちろん盛大な勘違いなのだが。


「まあ、そんな感じ。色々と凄い人だよねサリーさん」


 実はチラチラと、サリーの露出した太ももや大きな胸に視線が行ってしまっていたアルト。何度か下半身が元気になりかけたが、何とかサリーには気づかれずに済んだという事もあったのは内緒だった。


「あの……アルト君も女の子に………興味があったりするの………?」
「…………え?」


 興味。もちろんアルトはセリナ一筋だが、年頃の青年でもある。
 そして未だに思い出すのは、セリナともう少しで一つになれたあの日の夜と、ビリーとエリーゼの行為の一部始終。
 セリナの裸、セリナの嬌声、セリナの悶えた顔。
 エリーゼの裸、エリーゼの嬌声、エリーゼの悶えた顔。エリーゼとビリーが繋がっていた結合部。それを見ながら自慰に耽った、あの日の自分。


「えっと………それは………」


 何度忘れようとしても、毎日一緒に居るエリーゼの顔を見ると、どうしても思い出してしまう。そして、ふとした時にエリーゼの裸を想像してしまう。
 もちろんエリーゼだけではない。サリーの裸だって想像した事もあった。当然だ、思春期真っ只中の十五歳の青年が、同い年の少女の行為を見て、そして自分より年上の女性が肌の露出の多い服装で密着して来て、想像しない方がおかしい。女性に興味を持たない方がおかしい。

 ビリーやエリーゼ、レックにサリー、そしてノエル達五人が宿で行為に及んでいる時、セリナを想いながら膨張したモノを人知れず慰めていたなど、きっとノエル達は誰も想像すらしていないだろう。
 

 しかし結局アルトは何も答えられず、気まずくなった二人は無言で手綱を握るのだった。






 


 
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