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賢者の章

1.プロローグ

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 王都。そこは世界の中心にして、世界で最も賑やかで華やかな場所。
 人々は明日の希望を胸に、今日も明るい笑顔で通りを行き交う。

 そんな王都の貴族街には豪華な屋敷が建ち並び、自分の権力を誇示するかの様に多種多様な屋敷が存在を主張している。
 その中でもひと際豪華で立派な屋敷、その一室には居た。

   今年成人したばかりの彼女は、まだ十五歳の少女。しかしその容姿は、例えば往来で十人がすれ違えば十人全員が振り返り、目を奪われてしまう程の美少女。
 薄紫色の透き通った髪に、少し細すぎるくらいに華奢な身体。色は白磁の様に白く、艷やかで張りのある綺麗な肌。

 そんな美少女は現在、豪華な屋敷の一室、そこの大きなベッドの上に、一糸纏わぬ姿で横たわっている。
 綺麗なうなじと鎖骨、控えめな双丘の頂点には、薄桃色の綺麗な蕾。蕾が濡れているのは、つい今しがたまで口にふくまれ、舌でコロコロと刺激されていたせいだろう。

 一切無駄な肉が付いていない華奢な身体を更に見ていくと、くびれた細い腰。その下へ行くと、ふっくらとした恥丘が現れる。
 恥丘には雛鳥の様なうぶ毛が僅かに生え、彼女が十五歳の少女だという事を静かに物語っている。

 恥丘を下ると、そこは女性の最も大事な部位。全く色を変える事の無い綺麗な陰唇を少し開くと、そこは既に蜜で溢れ、綺麗な薄桃色の膣内部の壁が小刻みに震えている。
 そして細い太ももからつま先までは一切の体毛が無く、その細く美しい足はスラリと長い。

 そんな、まさに芸術作品の様な彼女の身体。その太ももに手をかけ、まだ誰の侵入も許した事の無い膣の入り口に自らの男性器を近づけるのは金色の髪の美男子。
 彼の目を見る彼女の表情は、不安、恐怖、後悔、罪悪感など、様々な負の感情が見て取れる。そして、瞳に涙を溜めた彼女は呟く様に言葉を発した。


「あ、あの………やっぱりわたし………」


 これから彼と何をするのか、それが分かっている美少女は、震える声で彼に懇願する。こんな事、やっぱり出来ないーーーー、いや、するべきではないと。


「大丈夫だよ、僕に任せてくれればいい。それに先ほども言った様に、これは大事ななんだ。君が僕のを得る為のね」


 甘く囁く様に、金色の髪の美男子は少女に柔らかい笑顔を向けながら言った。
 そして彼は、最大に怒張した自らの男性器を、穢れの知らない少女の膣の入り口、小陰唇へと充てがった。


 少女の脳裏にーーーー、愛しい人の笑顔が浮かんだ。




■■■




 ーーひと月ほど前


 この日は世界中で共通とされる『成人の義』が催される日。
 『成人の義』とは、その年に十五歳になった全ての者が、この世界の主神である”ヴォルテニクス”より称号を賜る、人生で最も大事な日。

 称号を得ると、自分の得た称号に関係した能力が開花する。
 例えば”商人”の称号なら商才が開花し、”職人”の称号なら物づくりの才能が開花する。
 他にも芸術系の称号や、大工、船乗り、料理人など、称号の数は数百以上。

 この世界に生きるほぼ全ての者が、自分の得た称号に合った職業に就く。つまり『成人の義』とは、この後の自分の人生が決まる日なのだと言い換える事が出来る。
 それはこの田舎の村、ウルスス村でも同じだった。
 今年、ウルスス村で十五歳になった者は四名。その一人、綺麗な顔立ちをした青年アルトは、同じ村の少女セリナと一緒に成人の義を受けていた。

 村の中央に作られた儀式用の祭壇では、近くの都市から派遣されてきた聖職者が、成人の義の時にのみ語られる祝詞を読み上げていた。


「いよいよか………」


 緊張を隠せないアルト。彼にはどうしても手に入れたい称号があった。


「そうだね。わたし……どんな称号かなぁ……」


 アルトの隣で呟くのは、アルトの幼馴染のセリナ。その顔立ちは、まるで物語に登場する天女の様に美しく、身体もとても華奢で触れると壊れてしまう様だった。


「大丈夫だよセリナ。きっと俺達二人ともーーー」


 アルトがどうしても得たい称号は、戦闘系の称号。彼は冒険者になる事を夢見ていた。
 主神から世界中の人々に授けられる戦闘系の称号、その最高峰の称号は”勇者”の称号。

 勇者とは、世界に”魔王”が誕生した時代に、魔王を討つ為に神から与えられる称号。
 それは人類の宝であり、最も人々から尊敬され、崇拝される至高の称号。その時代に一人しか授からない勇者の称号を持つ者は、この世界に既に存在する。なので、アルトが勇者の称号を授かる事は絶対に無い。

 そして、そんな勇者をサポートする為に与えられる称号もまた、世界に一人だけの稀有な称号。
 それは”聖女”、”剣聖”、そして”賢者”の称号である。
 その中で、聖女と剣聖の称号を授かった者は既にこの世界に存在している。今この時代、魔王が誕生したこの時代で魔王を討つ勇者一行に居ないのは”賢者”の称号を与えられし者。

 しかし、そんな事はこの田舎に住むアルト達には関係ない事。アルトの夢は、幼馴染であり許嫁でもあるセリナと共に戦闘系の称号を得て、二人で冒険者になる事。それがアルトのみならず、セリナの夢でもあった。
 

「では主神に祈りを。お一人ずつこちらへ」


 儀式を行う為に派遣されて来た司祭が、一人ずつ祭壇へ上がるよう指示する。


「よし、じゃあ俺から!」


 真っ先に名乗りを上げたのは、アルトとセリナの幼馴染の青年ビリー。いつも元気なムードメーカーの青年だ。

 ビリーは祭壇へ上がると膝を折り、手を合わせて主神ヴォルニテスクに祈る。


「主よ、敬虔な者に力を授け給え」


 司祭がじょうを振ると、ビリーの身体が青い光に包まれた。
 それは、毎年見てきた光景。成人を迎えた村の者達が、今のビリーと同じように青い光に包まれ、その後に得た称号を司祭から言い渡される。


「ウルスス村の青年ビリー。其方が主より授かった称号は『鍛冶師』の称号なり」


 鍛冶師。武器や農耕具などの制作を得意とする職業。所謂”生産系”の称号だ。


「鍛冶師……鍛冶師かぁ……」
「主に感謝の言葉を」
「あ、はい!主よ、慎んで賜わります!」


 ビリーが壇上から降りて来る。その表情は、ホッとした様な、少し残念な様な何とも言えない表情だった。


「では次の者、壇上へ」
「えっと、次どうする?」


 アルトとセリナの顔を見ながら、もう一人の幼馴染の少女エリーゼが声を上げた。

 赤い髪を短く切った、目のクリっとした可愛い少女である。


「俺が行くよ」


 アルトが真っ直ぐに壇上を見つめる。ビリーが称号を授かるのを見て、早く自分も得られる称号を知りたくなったらしい。


「アルト」


 セリナが心配そうにアルトを見つめる。アルトはセリナに向かって微笑むと、「先に行って待ってるよ」と言って、壇上に上がった。そして主神に祈りを捧げる。


「主よ、敬虔な者に力を授け給え」


 アルトの身体が青い光に包まれる。その光はほんのりと温かく、心が休まる様な感覚を覚えた。そしてーーーーー


「ウルスス村の青年アルト、其方が主より授かった称号は…………」


 ゴクリと喉を鳴らすアルト。その称号はーーーーー


「『剣士』の称号なり」



 思わず拳を握り締めるアルト。

 剣士の称号、それは切望していた”戦闘系”の称号。その中でも剣士とは、接近戦の戦闘系の花形。その称号がアルトに授けられたのだ。


「主よ、慎んで賜わります!あ、ありがとうございます!!」


 瞳が潤むアルト。やった!ずっと願っていた戦闘系の称号!しかも剣士だ!
 アルトにとって、まさに最高の日になったのだ。壇上からセリナを見ながら拳を振り上げる。セリナも満面の笑みをアルトに向けていた。

 アルトの次はエリーゼが壇上へ上がった。そして授かった称号は”会計士”の称号。
 商売をするならば無くてはならない称号。引く手数多の将来有望な称号に、見守っていたエリーゼの両親は泣いて喜んでいた。

 そして最後はセリナが壇上へと上がる。儀式を進行する司祭が、チラチラとセリナを見ていたのは、あまりにも美しい顔立ちだから。
 しかし当のセリナは気にせず、主神に祈りを捧げる。その様子を、アルトは緊張しながら見守っていた。

 自分は剣士の称号を得た。後はセリナが、同じように戦闘系の称号を授かれば…………二人で夢見た”冒険者”に一緒になれるのだ。
 壇上で手を合わせるセリナを見ながら、アルトも祈る様に手を合わせた。

 
「ウルスス村の少女セリナ、其方が授かった称号は…………………え?」


 司祭の様子がおかしい。何やら、混乱している様子だ。


「し、司祭様……?」


 セリナが司祭に声をかける。何だろう。そんなに変な称号だったのだろうかと、セリナは気が気ではない。


「あ………し、失礼。セリナが授かった称号は……………けーー」


 セリナに緊張が走る。どうか、アルトと同じ戦闘系の称号でありますように。


「賢者…………なり」
「………………はい?」


 静まり返る広場。誰もが司祭の言葉の意味をすぐには理解出来ず、呆然と立ち尽くしていたがそんな中、アルトだけは目を大きく見開いていた。



 この瞬間、幸せな未来を歩むはずだったアルトとセリナの運命がーーーーー、大きく狂い始めたのだった。







    
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