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3.大好きな凛ちゃん ★星輝
しおりを挟む僕には大好きなお姉ちゃんがいる。
お隣のお家に住む凛ちゃんだ。
両親同士の仲が良く、僕が生まれた時からずっと凛ちゃんは本当のお姉ちゃんのような存在だった。
僕の両親は2人とも外で働いていたので平日はいつも凛ちゃんのお家でご飯を食べさせてもらっていた。
凛ちゃんは運動神経も良くて頭も良い。まさに文武両道で面倒見もいい。
そんな凛ちゃんは僕の憧れだ。
そして初恋の相手だ。
凛ちゃんみたいな人がずっとそばにいて好きにならない方がおかしい。
凛ちゃん本人は全く気がついていないけど。
僕も凛ちゃんみたいになりたくて勉強だって頑張っているし、習い事だって色々やっている。
7つも年上の凛ちゃんに、今はまだまだ何も及ばない。
だけどいつか僕がもっともっと成長して凛ちゃんの隣に並べるようになったら、
その時は大好きだって告白するんだ。
今日はサッカーのクラブチームの練習があった。
帰り道、信号待ちの交差点でマイボールでリフティングの練習をしていた。
「あっっっ」
ちょっと失敗した。
ボール取りに行かなきゃ。
「星輝!!!!!」
僕は馬鹿だ。大馬鹿者だ。
それまで車が全然通ってなかったからって、確認をしなかった。
ちゃんと確認していれば、凛ちゃんを失わずに済んだのに。
「凛ちゃん!!!!!」
なんでこんなに血が出てるの。
ねえ凛ちゃん。やだよ。死んじゃやだよ。
僕が悪いのに。
僕まだちゃんと好きだって伝えれてないのに。
お願い凛ちゃん、僕を置いていかないで。
すぐに近くにいた大人の人が救急車を呼んでくれたけど間に合わなかった。
僕のせいで凛ちゃんが死んだ。
その日から1週間、僕は自分の部屋に引きこもって泣き続けた。
泣いては疲れて眠り、また起きては泣いての繰り返しだった。
そうやって1週間が経って、ようやくお腹が空いた僕は久しぶりに部屋を出た。
両親は驚いていたが、何も言わずご飯を用意してくれた。
そして僕がご飯を食べ終わる頃、お母さんが話しかけてきた。
「凛ちゃんに守ってもらった命なのだから、凛ちゃんに恥ずかしくないように大切に生きなさい。」
もう流せる涙なんて残っていないと思ったのに、また涙が出てきた。
それから20年、僕はもうすぐ30歳だ。
あれからもずっと凛ちゃんのような人になりたいと、生きてきた。
一流の大学を出て大手企業に就職し、順調に昇進してそれなりに充実した毎日を送っていると思う。
だけどどうしても恋愛だけはできなかった。
両親譲りの整った容姿も相まって女性から好意を向けられることは多かったが、
僕には凛ちゃんがいる。他の人ではダメだ。
今日も一日仕事で疲れたなと、帰宅する途中。
工事途中の建物の近くで遊んでいる子供達がいた。
微笑ましく子供達の様子を見ていた時、嫌な予感がした。
「危ない!!!!!!」
工事のために組まれていた鉄パイプが何かの弾みで崩れて落ちてくる。
僕は咄嗟に飛び出していき、下敷きになりそうだった子供を庇った。
あれ、、、、、
何か叫んでいる人の声が聞こえる、、、
ああそうか。
鉄パイプに当たったのか。
あの子は無事だったかな。
ちゃんと守れたかな。
凛ちゃんに守ってもらった命だったけど、もうここまでみたいだ。
でもきっと凛ちゃんも褒めてくれるよね。
もうすぐ凛ちゃんに会えるかな。
今会いに行くよ、凛ちゃん
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