青春活動

獅子倉 八鹿

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玄冬

げんとう14

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 いつも蒼依とバドミントンをしていた、寮のスペースは、いつの間にかブルーシートが敷いてあり、スペースが狭くなっていた。
 三角コーンも置いてあり、近々なんらかの工事をすることが分かる。

 蒼依は寮の建物にもたれかかっている。
 黒いコートを羽織り、横には見覚えのある鞄が置いてあった。

「お待たせ」
「奏汰。ごめん」
 蒼依は、深く頭を下げた。
 あの日から時間が経ち、俺も気持ちに整理ができている。
「こっちこそ、ごめん」
 蒼依に負けないくらい、頭を下げた。

「俺が女の子の言葉を使ったのをあんな目で見られたのは嫌だった。でも、それは当たり前の反応だし、仕方ないと思ってた」
「正直、冗談であんな口調をしてたんだと思ってたから、隠さずに、露骨に、嫌な顔した」

「あの後考えてたんだけど、奏汰がりょーちゃんのこと好きだったんだよな。じゃないとあんな感じにならないよな」
「俺も、三宅さんのこと好きって言ってなかったし。仕方ない」
「本当に知らなかった。俺はりょーちゃんのこと、普通に年下の子としか思ってなくて。友達が好きな子にあんな感じで話てたら嫌だよな」

「なんかあの日イライラしてて、やり過ぎなくらい怒ってしまったと思う」
「俺もあの日、実は親と電話で喧嘩した後で。俺もイライラしてたと思う」

 お互い、今まで思ってたことを告白し合う。
 落ち着いた今、あの日知らなかったことを知り、腑に落ちていく。

 もう離れたままでもいいと思ったけど、こうやって話していたらそれじゃすまない。

「蒼依がよければ、また仲良くしてくれませんか」
「もちろん。俺もそう言いたくて、バドミントンセット用意してた」
 蒼依は、横に置いた鞄からバドミントンのセットを取り出し、立ち上がる。

「そう言いたくてバドミントンセット用意するってなんだよ」
「いや、よくやってたからさ。またやりたいなって。俺、蒼依以外に友達いないからさ」
 その言葉に、違和感を覚えた。
 喧嘩した後も、蒼依は同じ学部の学生と一緒に過ごしていたはずだ。
 その人数は、俺より多いのではないかと思う。

「いないわけないだろ」
「確かに。言い方が悪かった。本心さらけ出せるのは、お前だけだ」
「なるほど、納得」
 蒼依は器用に、バドミントンの羽根を宙に打ち上げ、一人で遊んでいる。
 何となく、スマホを取り出して、その様子を撮影した。

 一人でラケットを持ち、羽根を宙に打ち上げる蒼依の写真。
 宙に浮く羽根だけを撮影した写真。
「そうだ、めっちゃ高く打ち上げてよ」
「え?」
 困惑しながらも、蒼依は羽根を空高く打ち上げた。
 その羽根を追いながら、羽根の真下に移動し、シャッターボタンを押す。

「見せてみ」

 蒼依に言われ、撮った写真を全て蒼依に送信する。

 見事に映えない写真達が、カメラロールを占めていた。
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