40 / 41
玄冬
げんとう14
しおりを挟む
いつも蒼依とバドミントンをしていた、寮のスペースは、いつの間にかブルーシートが敷いてあり、スペースが狭くなっていた。
三角コーンも置いてあり、近々なんらかの工事をすることが分かる。
蒼依は寮の建物にもたれかかっている。
黒いコートを羽織り、横には見覚えのある鞄が置いてあった。
「お待たせ」
「奏汰。ごめん」
蒼依は、深く頭を下げた。
あの日から時間が経ち、俺も気持ちに整理ができている。
「こっちこそ、ごめん」
蒼依に負けないくらい、頭を下げた。
「俺が女の子の言葉を使ったのをあんな目で見られたのは嫌だった。でも、それは当たり前の反応だし、仕方ないと思ってた」
「正直、冗談であんな口調をしてたんだと思ってたから、隠さずに、露骨に、嫌な顔した」
「あの後考えてたんだけど、奏汰がりょーちゃんのこと好きだったんだよな。じゃないとあんな感じにならないよな」
「俺も、三宅さんのこと好きって言ってなかったし。仕方ない」
「本当に知らなかった。俺はりょーちゃんのこと、普通に年下の子としか思ってなくて。友達が好きな子にあんな感じで話てたら嫌だよな」
「なんかあの日イライラしてて、やり過ぎなくらい怒ってしまったと思う」
「俺もあの日、実は親と電話で喧嘩した後で。俺もイライラしてたと思う」
お互い、今まで思ってたことを告白し合う。
落ち着いた今、あの日知らなかったことを知り、腑に落ちていく。
もう離れたままでもいいと思ったけど、こうやって話していたらそれじゃすまない。
「蒼依がよければ、また仲良くしてくれませんか」
「もちろん。俺もそう言いたくて、バドミントンセット用意してた」
蒼依は、横に置いた鞄からバドミントンのセットを取り出し、立ち上がる。
「そう言いたくてバドミントンセット用意するってなんだよ」
「いや、よくやってたからさ。またやりたいなって。俺、蒼依以外に友達いないからさ」
その言葉に、違和感を覚えた。
喧嘩した後も、蒼依は同じ学部の学生と一緒に過ごしていたはずだ。
その人数は、俺より多いのではないかと思う。
「いないわけないだろ」
「確かに。言い方が悪かった。本心さらけ出せるのは、お前だけだ」
「なるほど、納得」
蒼依は器用に、バドミントンの羽根を宙に打ち上げ、一人で遊んでいる。
何となく、スマホを取り出して、その様子を撮影した。
一人でラケットを持ち、羽根を宙に打ち上げる蒼依の写真。
宙に浮く羽根だけを撮影した写真。
「そうだ、めっちゃ高く打ち上げてよ」
「え?」
困惑しながらも、蒼依は羽根を空高く打ち上げた。
その羽根を追いながら、羽根の真下に移動し、シャッターボタンを押す。
「見せてみ」
蒼依に言われ、撮った写真を全て蒼依に送信する。
見事に映えない写真達が、カメラロールを占めていた。
三角コーンも置いてあり、近々なんらかの工事をすることが分かる。
蒼依は寮の建物にもたれかかっている。
黒いコートを羽織り、横には見覚えのある鞄が置いてあった。
「お待たせ」
「奏汰。ごめん」
蒼依は、深く頭を下げた。
あの日から時間が経ち、俺も気持ちに整理ができている。
「こっちこそ、ごめん」
蒼依に負けないくらい、頭を下げた。
「俺が女の子の言葉を使ったのをあんな目で見られたのは嫌だった。でも、それは当たり前の反応だし、仕方ないと思ってた」
「正直、冗談であんな口調をしてたんだと思ってたから、隠さずに、露骨に、嫌な顔した」
「あの後考えてたんだけど、奏汰がりょーちゃんのこと好きだったんだよな。じゃないとあんな感じにならないよな」
「俺も、三宅さんのこと好きって言ってなかったし。仕方ない」
「本当に知らなかった。俺はりょーちゃんのこと、普通に年下の子としか思ってなくて。友達が好きな子にあんな感じで話てたら嫌だよな」
「なんかあの日イライラしてて、やり過ぎなくらい怒ってしまったと思う」
「俺もあの日、実は親と電話で喧嘩した後で。俺もイライラしてたと思う」
お互い、今まで思ってたことを告白し合う。
落ち着いた今、あの日知らなかったことを知り、腑に落ちていく。
もう離れたままでもいいと思ったけど、こうやって話していたらそれじゃすまない。
「蒼依がよければ、また仲良くしてくれませんか」
「もちろん。俺もそう言いたくて、バドミントンセット用意してた」
蒼依は、横に置いた鞄からバドミントンのセットを取り出し、立ち上がる。
「そう言いたくてバドミントンセット用意するってなんだよ」
「いや、よくやってたからさ。またやりたいなって。俺、蒼依以外に友達いないからさ」
その言葉に、違和感を覚えた。
喧嘩した後も、蒼依は同じ学部の学生と一緒に過ごしていたはずだ。
その人数は、俺より多いのではないかと思う。
「いないわけないだろ」
「確かに。言い方が悪かった。本心さらけ出せるのは、お前だけだ」
「なるほど、納得」
蒼依は器用に、バドミントンの羽根を宙に打ち上げ、一人で遊んでいる。
何となく、スマホを取り出して、その様子を撮影した。
一人でラケットを持ち、羽根を宙に打ち上げる蒼依の写真。
宙に浮く羽根だけを撮影した写真。
「そうだ、めっちゃ高く打ち上げてよ」
「え?」
困惑しながらも、蒼依は羽根を空高く打ち上げた。
その羽根を追いながら、羽根の真下に移動し、シャッターボタンを押す。
「見せてみ」
蒼依に言われ、撮った写真を全て蒼依に送信する。
見事に映えない写真達が、カメラロールを占めていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

俺と代われ!!Re青春
相間 暖人
青春
2025年、日本では国家主導で秘密裏に実験が行われる事になった。
昨今の少子化は国として存亡の危機にあると判断した政府は特別なバディ制度を実施する事により高校生の恋愛を活発にしようと計ったのだ。
今回はその一組の話をしよう。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

執事👨一人声劇台本
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
執事台本を今まで書いた事がなかったのですが、機会があって書いてみました。
一作だけではなく、これから色々書いてみようと思います。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
とあるアプリで出題されたテーマから紡がれるセカンドストーリー❤︎
砂坂よつば
青春
「書く習慣」というアプリから出題されるお題に沿って、セリフが入っていたり、ストーリーが進む予測不可能な小説。第2弾は新たな物語ラブコメでお届け!!
主人公、高校1年生 輪通 萌香(わづつ もえか)が屋上でクラスメイトの友達と昼食を食べながらグランドを眺めていると、萌香好みの男子生徒を発見!萌香は彼と両思いになって楽しくも甘酸っぱい?青春高校生活を送ることが出来るのだろうか運命やいかに––––!?
※お題によって主人公が出てこない場合もございます。
本作品では登場する様々なキャラクターの日常や過去、恋愛等を描けてたらと思っています。小説家になろうとカクヨムの方でも同じ内容で連載中!※
いくつかのお題をアルフォポリス限定で執筆予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる