青春活動

獅子倉 八鹿

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玄冬

げんとう10

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「今日なんかあったのか? 今日の奏汰、変だ」
「別に何もない。なんだよ、懐深いってアピールしたいのかよ」
「だからなんでそうなるんだよバカ」
「俺なんて空気だろ、いらないだろ。さっきだっていないように振る舞ってたもんな!」
 俺と蒼依の言葉は加速するばかりで、ブレーキを担うものはない。

「そうじゃないだろ!」
「蒼依が振る舞いたいように、女性みたいに振る舞った時、俺はお前を拒絶したもんな? 嫌だったんだろ? そんな友達は消えてやる。青春活動も今日で終わりだ」
「あれは気にすんなって言ったろ! リーダーだからって勝手に終わらせんなよアホ!」

「もうやめてください」

 凛とした声はブレーキとなり、俺達は止まった。
 声を張り上げても、涙を流してもいない。
 バイトの時とは比にならない鋭い目と鋭い声が、俺達を刺す。

「少しは落ち着いてくださいよ。なんで私の服装についてから喧嘩が始まるんですか」
 俺は何も返さなかったが、蒼依は小さな声で謝罪を述べた。
「鈴名さんを仲間はずれにするくらいなら、蒼依さんだけ呼び出して話してます。蒼依さんも興奮し過ぎです。公衆の場で大声出さないでください。恥ずかしい」

 三宅さんは、口を一文字に結び、下を向いた。
 ボソリと何かを言ったような気がしたのだが、聞き取れない。
 顔を上げたと思うと、三宅さんの足は入り口に向かう。

「りょーちゃん、今」
 蒼依の声に一瞬、足が止まる。
「仲直りしたら、共通チャットで教えてください」
 俺達のことは見ず、そう言い残して去っていった。

 蒼依は小さな背中を追いかける。
 俺は何もせず、そのままベンチに座ったまま、空を眺めた。

 全てが終わった。頭の中でエンドロールが流れている。
 好きになった女の子も、友達も、俺は失った。

 これじゃグッドエンドどころか、バッドエンドじゃないか。
 現実はゲームみたいにうまく行かないと知っていても、自分に負けてしまった俺を責めた。

 蒼依の気持ちを知った時のもどかしさは、消えたと見せかけてずっと残っていたらしい。
 黒いものに負けて、吐き出すことでやっと把握することができた。
 把握した結果、大切なものは失ったけれど。

 自責しながら、身体を引きずって自室に戻る。
 何かをする体力も、上着を脱ぐ気力さえもなく、ベッドにダイブし、目を閉じた。

 起きると、部屋は真っ暗だった。
 何時なのか分からない。ズボンのポケットからスマホを出す気力もない。

 暗いな。
 当たり前のことを再確認し、暗闇を眺め続けた。

 ポケットのスマホが震える。
 ずっとバイブレーションが止まらない。どうやら電話の通知らしい。

 俺に電話をかける相手といえば、バイト先くらいしか考えられない。

 え、今日バイト入ってたっけ?

 慌ててスマホを取り出した。
 画面に映るのは非通知の文字だ。多分間違い電話か迷惑電話だろう。

 電話を切り、部屋の電気を付けてシフト表を取り出す。
 今日、俺は休みになっている。スマホを見、日付が間違っていないかも確認する。
 バイトは休みで合っていたようだ。
 安堵のため息をつきながらダウンジャケットを脱ぐと、今度はベッドの中に潜り込んだ。
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