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玄冬
げんとう9
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このまま進むと失恋記録を更新してしまう可能性があるのだが、今回はさらにタチが悪い。
今までは湧き上がらなかった熱が、どす黒いものが、醜くグチャグチャしたものが、少しでも隙があれば表出しようと体内で蠢いている。
自分のものにしたい。
蒼依と仲良くしないで欲しい。
俺もりょーちゃんと呼びたい。
蠢くそれらの動きを止めるため、ここ最近の俺は自分と終わらない戦いをする羽目になっている。
そして今日も、青春活動のため公園へ集まる。
ここでしか見れない、三宅さんを見るために。
「奏汰?」
待ち合わせの定番になりつつある公園入り口のベンチに座り、ぼんやりと冬の空を眺めていると、蒼依に声を掛けられた。
気温は下がってきているが、羽織っているジャケットは薄く見える。
ダウンジャケットにマフラー、貼るカイロを着込んでいる俺から見ると寒そうでたまらない。
「ああ、おはよ」
「おはよって。もう昼過ぎてる」
苦笑気味に言う蒼依に、今日はやけに腹が立つ。
蒼依は普段通りのはずなのに。前日に何かが起きたり、何か言われた訳でももないのに。
「ごめんごめん」
落ち着け。もっと余裕を持とう。
蒼依は俺の左横に座り、スマホを取り出した。
俺は引き続き、空を眺める。
「おはようございます」
しばらく無言のまま過ごしていると、三宅さんがやってきた。
丈の長いコートから、赤いチェックのスカートがわずかに覗き、三宅さんの足に合わせて揺れる。
今日の三宅さんは普段とは違い、大人の雰囲気を纏っていた。
「今日はスカートだ。りょーちゃんがスカート履いてるの初めて見たかも」
見るところは同じだったらしく、蒼依が声を掛ける。
「雑誌でこんなファッション見て、可愛いなって。変じゃないですか?」
「変じゃないよ。今日のりょーちゃん大人っぽくて、あきはいいと思う!」
「良かった。私背が低いのに、身長高いモデルさんの着こなしを真似しちゃったから変かなって」
「大丈夫大丈夫!」
「ねえ、撮影しに来たんじゃないの?」
俺の発した黒い言葉に、二人が振り向いた。
怒りと動揺が跳ね返ってくる。
知ったこっちゃない。
こっちは戦い続けて、負けてしまったんだ。
「おい、そこまで強く言わなくてもいいだろ」
「その話、歩きながらでも良いだろ。早急に必要な話だった?」
なあ蒼依。三宅さんがいるからって本心を隠すなよ。
どうせ戦うなら、本心を露わにした蒼依がいい。
「何のために集まったんだよ。写真だろ」
「写真撮るためだけなら、一人で出来る。仲良く交流しながら、話しながら写真撮るのがいいんだろ」
「俺を除け者にして話すために来てんの?」
「はぁ? お前何言ってんの。なに、褒めるチャンス逃したからって拗ねる? 子どもかよ」
蒼依の口調が徐々に変わり、本心が露わになっていく。
今までは湧き上がらなかった熱が、どす黒いものが、醜くグチャグチャしたものが、少しでも隙があれば表出しようと体内で蠢いている。
自分のものにしたい。
蒼依と仲良くしないで欲しい。
俺もりょーちゃんと呼びたい。
蠢くそれらの動きを止めるため、ここ最近の俺は自分と終わらない戦いをする羽目になっている。
そして今日も、青春活動のため公園へ集まる。
ここでしか見れない、三宅さんを見るために。
「奏汰?」
待ち合わせの定番になりつつある公園入り口のベンチに座り、ぼんやりと冬の空を眺めていると、蒼依に声を掛けられた。
気温は下がってきているが、羽織っているジャケットは薄く見える。
ダウンジャケットにマフラー、貼るカイロを着込んでいる俺から見ると寒そうでたまらない。
「ああ、おはよ」
「おはよって。もう昼過ぎてる」
苦笑気味に言う蒼依に、今日はやけに腹が立つ。
蒼依は普段通りのはずなのに。前日に何かが起きたり、何か言われた訳でももないのに。
「ごめんごめん」
落ち着け。もっと余裕を持とう。
蒼依は俺の左横に座り、スマホを取り出した。
俺は引き続き、空を眺める。
「おはようございます」
しばらく無言のまま過ごしていると、三宅さんがやってきた。
丈の長いコートから、赤いチェックのスカートがわずかに覗き、三宅さんの足に合わせて揺れる。
今日の三宅さんは普段とは違い、大人の雰囲気を纏っていた。
「今日はスカートだ。りょーちゃんがスカート履いてるの初めて見たかも」
見るところは同じだったらしく、蒼依が声を掛ける。
「雑誌でこんなファッション見て、可愛いなって。変じゃないですか?」
「変じゃないよ。今日のりょーちゃん大人っぽくて、あきはいいと思う!」
「良かった。私背が低いのに、身長高いモデルさんの着こなしを真似しちゃったから変かなって」
「大丈夫大丈夫!」
「ねえ、撮影しに来たんじゃないの?」
俺の発した黒い言葉に、二人が振り向いた。
怒りと動揺が跳ね返ってくる。
知ったこっちゃない。
こっちは戦い続けて、負けてしまったんだ。
「おい、そこまで強く言わなくてもいいだろ」
「その話、歩きながらでも良いだろ。早急に必要な話だった?」
なあ蒼依。三宅さんがいるからって本心を隠すなよ。
どうせ戦うなら、本心を露わにした蒼依がいい。
「何のために集まったんだよ。写真だろ」
「写真撮るためだけなら、一人で出来る。仲良く交流しながら、話しながら写真撮るのがいいんだろ」
「俺を除け者にして話すために来てんの?」
「はぁ? お前何言ってんの。なに、褒めるチャンス逃したからって拗ねる? 子どもかよ」
蒼依の口調が徐々に変わり、本心が露わになっていく。
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