32 / 41
玄冬
げんとう6
しおりを挟む
猿待公園は、心なしか先程の公園よりも人がいる印象だった。
先程までいた公園よりも広く、遊具で身体を動かすことは重視されておらず、遊歩道の延長といった雰囲気だ。
遊具の数は少ないがベンチの数が多く、謎のモニュメントも複数置いてある。
ベンチの種類も一種類ではなく、高さが高いものや低いもの、マッサージに良さそうな凹凸が付いたもの、横長ではあるが、区切るように手すりがあるものなど、様々な種類が設置されていた。
「よし、撮ろう」
「はい」
「どうする? 個人行動する? 三人で歩いて止まりながら写真撮っていく?」
二人に訊ねてみた。
個人行動しようと言ってくれることを期待しながら。
「いや、三人で行動しよ。りょーちゃんも今日会ったばかりの奴と二人きりは困るでしょ」
当然の如く期待は裏切られる。
「分かった」
もちろん、俺は反論せず、歩きを止めない。
川に隣接しているため、川を眺めるのに最適な場所にベンチが置いてある。
「あ、鳥」
目的地を決めないまま歩いていると、三宅さんが川を指差した。
指差す方を覗くと、確かに白と黒の模様をした鳥が数匹泳いでいる。
鳥には詳しくないが、鴨か何かだろうか。
三宅さんは、スマホを構え、鳥を写真に収めようとしている。
よっ、はっ、と小さく声を出しながらちょこちょこと動く様子は小動物のようだ。
「ダメでした。何をどうしても川に浮く豆達になっちゃう」
肩を落としながらスマホを下ろす三宅さんは、バイトの時とは比べものにならないくらい可愛らしい。
「ぶっ!」
そして、独特の例えが蒼依のツボにハマったらしい。
急に蒼依が吹き出し、腹を抱えて笑い出す。
「えっ、いや、そんなに面白い……?」
どう対応していいのか分からないのだろう。三宅さんはこちらを見て助けを求める。
ただ、俺も笑いを堪えるのに必死でそれどころではない。
「えっ、ちょっと、鈴名さん!」
「いや、ごめん。その、つられ笑いと、後から笑いが来て」
笑っていることを認めてしまうと、もう笑いを収めることが出来なくなる。
「ちょっと! 私そんなに面白いこと言ってないって!」
ムキになって怒る三宅さんが、笑い転げている俺達を止められるはずもなく、しばらく俺達は笑い転げていた。
笑った効果により、俺の落ち込みも多少は消えていた。
二人の笑いが収まった後、再び行き当たりばったりに歩き出す。
「鈴名さんは、青春を撮りたいんですっけ」
急に三宅さんが、俺に話を振ってきた。
「うん。青春ってやつを体験し損ねたから、体験したいというか」
「映える写真を撮りたいってことですか?」
「写真映えしている写真に、青春って感じを入れたい」
もっともらしく聞こえるよう、俺は得意げな顔をしてみる。
三宅さんからは険しい顔が帰ってきただけだった。
「自分でも考えてみましたけど、考えてみてもいまいち分かりません」
「仕方ないだろ。俺もそれ以外の説明が出来ないんだよ」
顔をしかめながらこちらを見る三宅さんに、俺も険しい顔をして見返す。
「まず、青春を感じる写真ってどんな写真ですか。組体操でもすればいいんですか」
「もしかして、してって言ったらしてくれるの」
「しません」
フラフラしながらV字バランスや片手バランスをする三宅さんを想像してしまったが、残念ながらこの目で見ることはできないらしい。
先程までいた公園よりも広く、遊具で身体を動かすことは重視されておらず、遊歩道の延長といった雰囲気だ。
遊具の数は少ないがベンチの数が多く、謎のモニュメントも複数置いてある。
ベンチの種類も一種類ではなく、高さが高いものや低いもの、マッサージに良さそうな凹凸が付いたもの、横長ではあるが、区切るように手すりがあるものなど、様々な種類が設置されていた。
「よし、撮ろう」
「はい」
「どうする? 個人行動する? 三人で歩いて止まりながら写真撮っていく?」
二人に訊ねてみた。
個人行動しようと言ってくれることを期待しながら。
「いや、三人で行動しよ。りょーちゃんも今日会ったばかりの奴と二人きりは困るでしょ」
当然の如く期待は裏切られる。
「分かった」
もちろん、俺は反論せず、歩きを止めない。
川に隣接しているため、川を眺めるのに最適な場所にベンチが置いてある。
「あ、鳥」
目的地を決めないまま歩いていると、三宅さんが川を指差した。
指差す方を覗くと、確かに白と黒の模様をした鳥が数匹泳いでいる。
鳥には詳しくないが、鴨か何かだろうか。
三宅さんは、スマホを構え、鳥を写真に収めようとしている。
よっ、はっ、と小さく声を出しながらちょこちょこと動く様子は小動物のようだ。
「ダメでした。何をどうしても川に浮く豆達になっちゃう」
肩を落としながらスマホを下ろす三宅さんは、バイトの時とは比べものにならないくらい可愛らしい。
「ぶっ!」
そして、独特の例えが蒼依のツボにハマったらしい。
急に蒼依が吹き出し、腹を抱えて笑い出す。
「えっ、いや、そんなに面白い……?」
どう対応していいのか分からないのだろう。三宅さんはこちらを見て助けを求める。
ただ、俺も笑いを堪えるのに必死でそれどころではない。
「えっ、ちょっと、鈴名さん!」
「いや、ごめん。その、つられ笑いと、後から笑いが来て」
笑っていることを認めてしまうと、もう笑いを収めることが出来なくなる。
「ちょっと! 私そんなに面白いこと言ってないって!」
ムキになって怒る三宅さんが、笑い転げている俺達を止められるはずもなく、しばらく俺達は笑い転げていた。
笑った効果により、俺の落ち込みも多少は消えていた。
二人の笑いが収まった後、再び行き当たりばったりに歩き出す。
「鈴名さんは、青春を撮りたいんですっけ」
急に三宅さんが、俺に話を振ってきた。
「うん。青春ってやつを体験し損ねたから、体験したいというか」
「映える写真を撮りたいってことですか?」
「写真映えしている写真に、青春って感じを入れたい」
もっともらしく聞こえるよう、俺は得意げな顔をしてみる。
三宅さんからは険しい顔が帰ってきただけだった。
「自分でも考えてみましたけど、考えてみてもいまいち分かりません」
「仕方ないだろ。俺もそれ以外の説明が出来ないんだよ」
顔をしかめながらこちらを見る三宅さんに、俺も険しい顔をして見返す。
「まず、青春を感じる写真ってどんな写真ですか。組体操でもすればいいんですか」
「もしかして、してって言ったらしてくれるの」
「しません」
フラフラしながらV字バランスや片手バランスをする三宅さんを想像してしまったが、残念ながらこの目で見ることはできないらしい。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

俺と代われ!!Re青春
相間 暖人
青春
2025年、日本では国家主導で秘密裏に実験が行われる事になった。
昨今の少子化は国として存亡の危機にあると判断した政府は特別なバディ制度を実施する事により高校生の恋愛を活発にしようと計ったのだ。
今回はその一組の話をしよう。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

執事👨一人声劇台本
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
執事台本を今まで書いた事がなかったのですが、機会があって書いてみました。
一作だけではなく、これから色々書いてみようと思います。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
とあるアプリで出題されたテーマから紡がれるセカンドストーリー❤︎
砂坂よつば
青春
「書く習慣」というアプリから出題されるお題に沿って、セリフが入っていたり、ストーリーが進む予測不可能な小説。第2弾は新たな物語ラブコメでお届け!!
主人公、高校1年生 輪通 萌香(わづつ もえか)が屋上でクラスメイトの友達と昼食を食べながらグランドを眺めていると、萌香好みの男子生徒を発見!萌香は彼と両思いになって楽しくも甘酸っぱい?青春高校生活を送ることが出来るのだろうか運命やいかに––––!?
※お題によって主人公が出てこない場合もございます。
本作品では登場する様々なキャラクターの日常や過去、恋愛等を描けてたらと思っています。小説家になろうとカクヨムの方でも同じ内容で連載中!※
いくつかのお題をアルフォポリス限定で執筆予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる