青春活動

獅子倉 八鹿

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玄冬

げんとう4

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「で、改めて話すんだけど」
「うん」

 一体蒼依からどんな話が飛び出すのか。
 緊張に身を固めながら耳を傾ける。

「女の子っていうのに憧れてるようなところがあって」

 開いた口は、なかなか閉じなかった。
「手術してまで女になりたいとかじゃないんだけど。恋愛対象も女の子だし」

 淡々と話を続ける。

「なんて言えばいいのかな。女の子の口調に憧れて、言いたくなることがあるというか」

 そこまで話すと、蒼依は俺達の様子を伺うようにこちらを見る。
 どう反応していいか分からず、そのままの表情て話を聞き続ける。
 ふざけるような余裕もないし、そんな場面ではないと分かっていた。
 三宅さんは考え込むように、蒼依の方を見ている。

「でも奏汰――あ、久遠か」
「いいよ。二人とも俺の本名知ってるし」
 そうい言う俺の声は、普段と同じように振るまえているだろうか。
 心配になるが、それを確かめる術を持ち合わせていない。

「ありがとう。俺がふざけた感じで話すこともあるだろうけど、俺が女の子ぶると奏汰も気持ち悪そうに見てくる。こんな男っぽい声で、男っぽい体格の俺が女の子ぶるのも気持ち悪いしよなって俺も思う。だから、顔出しすることのない場所なら、女の子っぽく振る舞っていいかなって思った。最初は奏汰だけで、時期を見て話そうと思ってはいた」
 そこまで言うと、蒼依にしては珍しく、しおらしい表情で俯いた。

 俺の喉は潰れ、声帯は固まり、空気は呼吸するためだけに循環するだけだ。

 俺の発言は、友達を傷つけていた。
 その事実に、なんと答えるのがベストなのか。

「別に、奏汰を責めてる訳じゃないから」
 フォローのつもりだろうが、その言葉は何の効果も持たない。
「うん」
 心のこもってない返事を、かろうじて搾り出すことができた。

 そして、気まずい沈黙が流れていく。

「鈴名さんだけじゃなくて、こんな、実際に会うのが初めての人間に言って良かったんですか。大事なこと、私にも伝えても良かったんですか」
 沈黙を止めたのは三宅さんだった。
「うん。一緒に活動するのに、なんで女の子口調なのか知らないままってのもりょーちゃんに悪いでしょ。平等じゃないというか」

「そういうの、かっこいいと思います」

 それは蒼依に向けた言葉だったが、俺の元にも届き、鋭い風となって体内を駆け抜けた。

「実際にその声を聞いたことないから、気持ち悪いかは分からないし、聞いたら気持ち悪いって思うんだろうけど、フェアじゃないからってその行動の理由を初対面の私に隠さずに伝えられるの、かっこいいです」

 バイトの時は、反論を返すだけだった。
 人がやることなすことに反論して、悦に浸っているだけだと思っていた。
 正直に言うと、バイトでの空気をかき乱して、空気を読まなくて面倒だと思っていた。

 今の三宅さんは、なんで今、こんなに輝いているんだろう。
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