29 / 41
玄冬
げんとう3
しおりを挟む
予定していた当日。俺は大学近くの公園にあるベンチに座っていた。
予定の時間より五分程早めに着いたのだが、誰も到着していない。
ちゃんと公園入り口近くのベンチと指定したので、場所は間違っていないはずだ。
もし勘違いを起こしていたとしても、ここに座っておけば見逃すこともないだろう。
WINGを開くが、遅れる連絡は来ていない。
暇過ぎて、スマホを開いてスマホゲームを始めた。
「おっしゃ」
よく使うキャラの限界突破が上限まで完了し、思わず声が溢れてしまった。
スマホゲームにはほとんど課金をしない上、最近はそこまで起動していなかったため、限界突破するのに時間がかかってしまった。
「面白そうですね」
横から声を掛けられ飛び上がる。
そこには、三宅さんが立っていた。
黒いPコートに、以前も履いていたカーゴパンツという装いは、意表をつかれることもなく、彼女に似合っていると感じる。
「すみません。集中していたみたいで声掛けにくくて」
「お、おう」
未だにバクバクしている心臓は落ち着かない。
三宅さんは俺の事情にはお構いなしに、俺の右横に座る。
「あきさん、少し遅れるってチャットありましたね」
「そうなんだ」
ゲーム中で通知が来なかったのか、全く気づかなかった。
「やっぱり緊張しちゃうな」
左右をキョロキョロして、落ち着かない様子を見せる。
「あー」
そうだよな。
目の前から歩いてきている男があきだとは思わないよな。
あきちゃんの中の人は、俺達に向かって手を振る。
「えっと、知り合いですか?」
「うん」
「ごめん遅れた。寝坊した」
「あの……えっと」
唯一状況を把握し切れていない三宅さんが狼狽えている。
「おい、ちゃんと説明しろよ」
俺は蒼依に全てを委ねた。
蒼依は黙って頷く。
「初めまして。あきです」
口に出す気はないが、狼狽していた人間の表情が、恐怖を帯びた驚愕に変わる様は面白かった。
他人事だから呑気にそう観察できるのだろう。
居心地が悪そうにしている蒼依や、女性だと思っていた相手が男性だったことを必死に受け止めようとしている三宅さんの立場なら、そんな余裕はなかっただろう。
「すみまさん。騙すつもりはなかったんですけど。元々、九遠がやってるのに参加した時から女性っぽい口調だった訳だし」
「それは、一応アカウントの投稿は最初から見てたので、分かってはいたんですが。その」
「その、これ、久遠にも言ってなかったんですけど」
予想外な場面で俺の名前が出てきた。
「と、とりあえず座らない?」
この話は長くなると察し、俺は少し歩いた先にある休憩所を指差す。
この雰囲気で、三人仲良くベンチに座るのは気が引けた。
屋根が付いており、下に大人数が座ることのできる大きさの丸いテーブルと固定された椅子が設置してある。
「そうしよっか」
三宅さんを見ると、小さく頷いた。
俺が先陣を切って歩く。黙ったままの三人は、机を囲んで座った。
予定の時間より五分程早めに着いたのだが、誰も到着していない。
ちゃんと公園入り口近くのベンチと指定したので、場所は間違っていないはずだ。
もし勘違いを起こしていたとしても、ここに座っておけば見逃すこともないだろう。
WINGを開くが、遅れる連絡は来ていない。
暇過ぎて、スマホを開いてスマホゲームを始めた。
「おっしゃ」
よく使うキャラの限界突破が上限まで完了し、思わず声が溢れてしまった。
スマホゲームにはほとんど課金をしない上、最近はそこまで起動していなかったため、限界突破するのに時間がかかってしまった。
「面白そうですね」
横から声を掛けられ飛び上がる。
そこには、三宅さんが立っていた。
黒いPコートに、以前も履いていたカーゴパンツという装いは、意表をつかれることもなく、彼女に似合っていると感じる。
「すみません。集中していたみたいで声掛けにくくて」
「お、おう」
未だにバクバクしている心臓は落ち着かない。
三宅さんは俺の事情にはお構いなしに、俺の右横に座る。
「あきさん、少し遅れるってチャットありましたね」
「そうなんだ」
ゲーム中で通知が来なかったのか、全く気づかなかった。
「やっぱり緊張しちゃうな」
左右をキョロキョロして、落ち着かない様子を見せる。
「あー」
そうだよな。
目の前から歩いてきている男があきだとは思わないよな。
あきちゃんの中の人は、俺達に向かって手を振る。
「えっと、知り合いですか?」
「うん」
「ごめん遅れた。寝坊した」
「あの……えっと」
唯一状況を把握し切れていない三宅さんが狼狽えている。
「おい、ちゃんと説明しろよ」
俺は蒼依に全てを委ねた。
蒼依は黙って頷く。
「初めまして。あきです」
口に出す気はないが、狼狽していた人間の表情が、恐怖を帯びた驚愕に変わる様は面白かった。
他人事だから呑気にそう観察できるのだろう。
居心地が悪そうにしている蒼依や、女性だと思っていた相手が男性だったことを必死に受け止めようとしている三宅さんの立場なら、そんな余裕はなかっただろう。
「すみまさん。騙すつもりはなかったんですけど。元々、九遠がやってるのに参加した時から女性っぽい口調だった訳だし」
「それは、一応アカウントの投稿は最初から見てたので、分かってはいたんですが。その」
「その、これ、久遠にも言ってなかったんですけど」
予想外な場面で俺の名前が出てきた。
「と、とりあえず座らない?」
この話は長くなると察し、俺は少し歩いた先にある休憩所を指差す。
この雰囲気で、三人仲良くベンチに座るのは気が引けた。
屋根が付いており、下に大人数が座ることのできる大きさの丸いテーブルと固定された椅子が設置してある。
「そうしよっか」
三宅さんを見ると、小さく頷いた。
俺が先陣を切って歩く。黙ったままの三人は、机を囲んで座った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
スカートの中、…見たいの?
サドラ
大衆娯楽
どうしてこうなったのかは、説明を省かせていただきます。文脈とかも適当です。官能の表現に身を委ねました。
「僕」と「彼女」が二人っきりでいる。僕の指は彼女をなぞり始め…
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる