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白秋
はくしゅう20
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今日はやけに客が途切れない。三宅さんと話す暇もなく、バイトは終了を迎えた。
三宅さんが先に上がり、スタッフの人数が減ってから、客が途切れて一息入れる時間が生まれた。
休憩室に戻ると、机に白い封筒が置いてあるのが目に入る。
横型の封筒には、可愛らしい文字で俺の名前が書いてあった。
バイトに入る時、こんなのなかったはずなんだけど。
着替えるより先に手紙を手に取り、裏面を見るが、差出人は書いていない。
開けようとして、このようなシチュエーションを知っていることに気づく。
下駄箱を開くと置いてある手紙。開くと屋上への呼び出し。
そこに待ち受けていたのは高嶺の花。口を開くと告白の言葉が……。
そうか、ここでしか会えない相手なら、ここに置くことになっても仕方ないよな。
でも恥ずかしがり屋な差出人だ。直接言ってくれてもいいのに。
顔がにやけてしまうが、他のスタッフは先に着替えており、他に誰もいない。
誰も戻ってこないことを確認しつつ、そっと中を確認する。
『鈴名さん
青春活動について話がしたいです。連絡ください。
三宅涼』
一緒に、メッセージアプリのIDが書かれていた。
踊っていた心が急スピードでどん底に落ちていく。
どうやら、帰宅前に置いて帰ったらしい。
とうとう俺もラブレターデビューを果たすことができたのかと思ってしまった。
手紙を持ち、休憩室にため息を残すと足取り重く更衣室に入った。
「鈴名君。机に置いてあった手紙見た?」
先に更衣室に入った正社員に声を掛けられる。
「あー、はい」
ロッカーの鍵を開け、手紙を荷物の中に入れる。
「ラブレターってやつ?」
俺は静かに首を横に振る。
「そっか……」
気まずい雰囲気から逃げるよう、正社員のスタッフは足早に去っていった。
バイト先を出てスマホを開き、メッセージアプリを開く。確か、連絡先は交換していたはずだ。
『お疲れ様です。手紙見たので連絡しました』
連絡先の中に埋もれていた、三宅涼という名前を探しだし、メッセージを送信する。
絵文字やスタンプは付けずに文章を打つ。
なんとなく、三宅さんはそれらの類いが嫌いではないかと考えたからだ。
バイトの疲れから、ゆっくりとしたスピードで帰宅したが、返信は来ないままだ。
家に帰り、シャワーを浴び、再びスマホを見ると連絡が来ていた。
『連絡ありがとうございます。活動をどのようにしていけばいいのかよく分からなくて。WINGに写真を投稿すればいいんですか?』
やはり、三宅さんの文章には絵文字もスタンプも付いて来なかった。読みは当たっていたようだ。
『三宅さんが検索してくれたWINGのアカウントで、俺達と同じように投稿して欲しい。共有モードってやつにしてるから、三人で運営できるはず』
『分かりました。登録してみるのでIDとパスワードを教えてください』
やり方を尋ねられるかと思っていたが、三宅さんは方法を知っていたらしい。
逆にやり方が分かっていないのは俺だった。
ブラウザで方法を検索し、IDとパスワードを三宅さんに送信する。
しばらくすると、WINGから通知が来る。
『りょーさんがこのアカウントに参加しました!』
以前蒼依が共有アカウントの設定をした際、WINGの通知が来ないよう設定が帰られていた。それに気づき、通知が来るよう設定を戻したので今回は来たようだ。
直後に、三宅さんから連絡が来る。
『入れたと思うんですが、確認して頂けますか?』
『りょーさんが参加しましたって通知来たよ』
『良かったです。共有チャットに挨拶入れておきます』
また見知らぬ言葉が出てきた。共有チャットとはなんだ。
再び検索をしていると、再び通知が鳴る。
通知をタップし、WINGに移動すると、普段見たことのない画面が開かれる。
『今日から参加します、りょーと申します。よろしくお願い致します』
そこには、三宅さんの文章が打ってあった。
俺と蒼依は使っておらず知らなかったが、チャットの機能があったらしい。
『あき、この子が前言ってた新メンバー。りょーさん、よろしくお願いします』
入力欄はすぐわかり、文章を入力することは簡単だった。
『なるほど! 話は九遠から聞いてたよ。よろしくね!』
蒼依からも、絵文字や顔文字付きのチャットの文章が飛んでくる。
俺。女の子のフリをする筋肉隆々男子。論破系高校生。
個性が豊かなメンバーが集い、良くも悪くも賑やかになりそうだ。
三宅さんが先に上がり、スタッフの人数が減ってから、客が途切れて一息入れる時間が生まれた。
休憩室に戻ると、机に白い封筒が置いてあるのが目に入る。
横型の封筒には、可愛らしい文字で俺の名前が書いてあった。
バイトに入る時、こんなのなかったはずなんだけど。
着替えるより先に手紙を手に取り、裏面を見るが、差出人は書いていない。
開けようとして、このようなシチュエーションを知っていることに気づく。
下駄箱を開くと置いてある手紙。開くと屋上への呼び出し。
そこに待ち受けていたのは高嶺の花。口を開くと告白の言葉が……。
そうか、ここでしか会えない相手なら、ここに置くことになっても仕方ないよな。
でも恥ずかしがり屋な差出人だ。直接言ってくれてもいいのに。
顔がにやけてしまうが、他のスタッフは先に着替えており、他に誰もいない。
誰も戻ってこないことを確認しつつ、そっと中を確認する。
『鈴名さん
青春活動について話がしたいです。連絡ください。
三宅涼』
一緒に、メッセージアプリのIDが書かれていた。
踊っていた心が急スピードでどん底に落ちていく。
どうやら、帰宅前に置いて帰ったらしい。
とうとう俺もラブレターデビューを果たすことができたのかと思ってしまった。
手紙を持ち、休憩室にため息を残すと足取り重く更衣室に入った。
「鈴名君。机に置いてあった手紙見た?」
先に更衣室に入った正社員に声を掛けられる。
「あー、はい」
ロッカーの鍵を開け、手紙を荷物の中に入れる。
「ラブレターってやつ?」
俺は静かに首を横に振る。
「そっか……」
気まずい雰囲気から逃げるよう、正社員のスタッフは足早に去っていった。
バイト先を出てスマホを開き、メッセージアプリを開く。確か、連絡先は交換していたはずだ。
『お疲れ様です。手紙見たので連絡しました』
連絡先の中に埋もれていた、三宅涼という名前を探しだし、メッセージを送信する。
絵文字やスタンプは付けずに文章を打つ。
なんとなく、三宅さんはそれらの類いが嫌いではないかと考えたからだ。
バイトの疲れから、ゆっくりとしたスピードで帰宅したが、返信は来ないままだ。
家に帰り、シャワーを浴び、再びスマホを見ると連絡が来ていた。
『連絡ありがとうございます。活動をどのようにしていけばいいのかよく分からなくて。WINGに写真を投稿すればいいんですか?』
やはり、三宅さんの文章には絵文字もスタンプも付いて来なかった。読みは当たっていたようだ。
『三宅さんが検索してくれたWINGのアカウントで、俺達と同じように投稿して欲しい。共有モードってやつにしてるから、三人で運営できるはず』
『分かりました。登録してみるのでIDとパスワードを教えてください』
やり方を尋ねられるかと思っていたが、三宅さんは方法を知っていたらしい。
逆にやり方が分かっていないのは俺だった。
ブラウザで方法を検索し、IDとパスワードを三宅さんに送信する。
しばらくすると、WINGから通知が来る。
『りょーさんがこのアカウントに参加しました!』
以前蒼依が共有アカウントの設定をした際、WINGの通知が来ないよう設定が帰られていた。それに気づき、通知が来るよう設定を戻したので今回は来たようだ。
直後に、三宅さんから連絡が来る。
『入れたと思うんですが、確認して頂けますか?』
『りょーさんが参加しましたって通知来たよ』
『良かったです。共有チャットに挨拶入れておきます』
また見知らぬ言葉が出てきた。共有チャットとはなんだ。
再び検索をしていると、再び通知が鳴る。
通知をタップし、WINGに移動すると、普段見たことのない画面が開かれる。
『今日から参加します、りょーと申します。よろしくお願い致します』
そこには、三宅さんの文章が打ってあった。
俺と蒼依は使っておらず知らなかったが、チャットの機能があったらしい。
『あき、この子が前言ってた新メンバー。りょーさん、よろしくお願いします』
入力欄はすぐわかり、文章を入力することは簡単だった。
『なるほど! 話は九遠から聞いてたよ。よろしくね!』
蒼依からも、絵文字や顔文字付きのチャットの文章が飛んでくる。
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