青春活動

獅子倉 八鹿

文字の大きさ
上 下
25 / 41
白秋

はくしゅう19

しおりを挟む
 行く方向も分からず離れてしまったが、先程蒼依を見かけた方に向かう。
 広い公園ではないので、こちらに向かって歩いている姿がすぐ見つかった。
「お、見てよ力作。どんぐりハート」
 ニコニコしながら近づき、スマホを操作するとこちらに向ける。
 地面に並べられたどんぐりがハート型に並べられており、中にはハート型になるよう落ち葉が二枚、並べられている。


「おー、いいじゃん。ムキムキの男がせっせと並べたとは思えないな」
「俺の中身は女子だから。ところでさ」
 冗談か本気か、最近は判別が付かない発言をしなが、蒼依はこちらに顔を近づける。
 このタイミングでの話の切り出しと顔のにやけ具合から、内容を察するのは容易だった。

「さっき、女の子と話してたよな? 誰?」
 やっぱりそうなるよな。
「同じバイトの高校生」
「高校生か。中学生かと思った」
「まぁ、背低いからな」
 普段話す時、目線を下げていることを思い出した。

「あ、そうだ。その子も青春活動に参加します」
 ちょうど良いタイミングだった。俺は他のメンバーに先程の話と、三宅さんがどのような性格なのかを伝える。
「うわ、なんか難ありな感じじゃん。最近流行りの論破系? めんど」
 本人がこの場にいないことをいいことに、顔をしかめながら歯に衣着せぬ物言いをする。
「許せ」
「まぁ、リーダーの決定には従うね。だってあきは、ただのメンバーだし」
 蒼依はそう言うと、俺の腹部に軽くパンチする。
「この一発で許してやるわよ」
「ありがとう」
 俺はそう言いながら、蒼依に軽く蹴りを入れる。

 次の日。
 幸か不幸か、俺はバイトだった。
 三宅さんに会うのは、少し気まずい。だからといって、バイトをサボるのも面倒だ。
 講義が終わった後、気乗りはしなかったがバイト先に向かう。

 パートさんは戻ってきたが、家の関係で以前より出勤日数はだいぶ減ったらしい。
 穴埋めのために、新しくアルバイトが入る訳でもなく、比較的自由に出勤時間を決められるパートさんや正社員でなんとか回しているらしい。
 その関係で、三宅さんと同じシフトになる日は減らなかった。

「おはようございます」
 普段通り挨拶をしながら休憩室に入る。今日も三宅さんは、俺より先に到着してパンを食べている。
 パンが口に入っていたらしく、三宅さんは顔だけこちらを向き、頭を下げた。

 今は声をかけるタイミングではないと判断し、先に着替えることにした。
 着替えて戻ると、三宅さんと目が合う。

「あの、青春活動のアカウント見ました」
「ありがとう。すぐ見つかった?」
「いくつか候補が出て、3つ目くらいに出てきました。オトナの青春部とかいう怪しいアカウントから、美酒鍋太郎とかいう名前のアカウントまで引っかかりましたけど」
「美酒鍋太郎……?」
 WINGの検索機能の精度を疑った。オトナの青春部はまだ理解できるが、何をどうやったら、青春活動と検索して美酒鍋太郎が引っかかるんだ。

「いや、ホントに出たんだから仕方ないですよ。嘘ついてませんよ私」
「分かった。で、青春活動のアカウント見てどう思った?」
 話を戻す。三宅さんは顔色を変えずに口を開く。
「まぁ、やってみます。参加してみます。あの時失礼なこと言っちゃったし」
「そうか。じゃあ、よろしく」
 詳しく話をしようとした矢先、休憩室に店長が入ってきた。
 別にやましい話をしている訳では無いが、気まずくなり話をやめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺と代われ!!Re青春

相間 暖人
青春
2025年、日本では国家主導で秘密裏に実験が行われる事になった。 昨今の少子化は国として存亡の危機にあると判断した政府は特別なバディ制度を実施する事により高校生の恋愛を活発にしようと計ったのだ。 今回はその一組の話をしよう。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

執事👨一人声劇台本

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
執事台本を今まで書いた事がなかったのですが、機会があって書いてみました。 一作だけではなく、これから色々書いてみようと思います。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

とあるアプリで出題されたテーマから紡がれるセカンドストーリー❤︎

砂坂よつば
青春
「書く習慣」というアプリから出題されるお題に沿って、セリフが入っていたり、ストーリーが進む予測不可能な小説。第2弾は新たな物語ラブコメでお届け!! 主人公、高校1年生 輪通 萌香(わづつ もえか)が屋上でクラスメイトの友達と昼食を食べながらグランドを眺めていると、萌香好みの男子生徒を発見!萌香は彼と両思いになって楽しくも甘酸っぱい?青春高校生活を送ることが出来るのだろうか運命やいかに––––!? ※お題によって主人公が出てこない場合もございます。 本作品では登場する様々なキャラクターの日常や過去、恋愛等を描けてたらと思っています。小説家になろうとカクヨムの方でも同じ内容で連載中!※ いくつかのお題をアルフォポリス限定で執筆予定です。

処理中です...