22 / 41
白秋
はくしゅう16
しおりを挟む
真横から撮影した写真を見ていると、一枚の写真が目に留まった。
二本の鎖が、それぞれいびつにねじれ、座る箇所が前方に向かって浮く。
子どものころ、ブランコをから飛び降りた経験を連想する写真だった。
「これ、よくない?」
写真を確認している間に、ブランコに乗っていた蒼依に声をかける。
「お、いいじゃん。光の加減もいい感じ」
「だよねだよね」
自分の頬が緩んでしまうのがわかる。
胸の方から、キラキラとしたものが溢れていく。
「俺でも、こんな写真撮れるんだな」
噛みしめるように、言葉を発する。
「そりゃ、一緒に勉強したんだから撮れるだろ。頑張ってたよ、奏汰」
蒼依からの思いがけない評価に、俺は驚きを隠せない。
「いやいや。頑張ってなんかないって」
俺の返答に、蒼依は気を悪くすることなく見つめ返す。
「奏汰からするとそうかもしれないけど、俺から見たら頑張ってたと思う。奏汰の自己評価は違うかもだけど、俺からの評価は頑張っていたってものから変更したくない」
俺達を包み込むように温かな風が吹く。
気が付くと、俺は体験したかったものの欠片を握ることができていた。
「奏汰見てたら俺もやる気になってきたわ。俺もちょっと頑張ってくる」
蒼依は腕まくりをし、ゆっくりとした足取りで公園の奥へ向かった。
残された俺は、ブランコの向かいにあるベンチへ向かい、腰を下ろした。
スマホを開き、再びブランコの写真を表示させる。
今までとは比較にならないくらい、気に入った作品ができた。
ベンチに座りながら、次の被写体を探す。
スマホのカメラを起動させる前に、両手の親指と人差し指を使って四角い枠を作り、公園を眺めていく。
先程までいなかった、日に焼けた子ども達が目の前を走り抜けていった。
老夫婦が、両手にスキー選手のような棒を持って歩いていた。
先ほどのブランコは、俺と同じくらいの男女グループが占領して童心にかえり、ブランコに乗っている。
奥の方に生えている木の近くで、褐色の体格がよい男がしゃがみ、何かに向かってスマホを向けているのが見えた。
蒼依は木の根元でなにを撮影しているのだろうか。
様子を見に行こうと立ち上がった途端、俺に向かって黄色いボールが転がってくる。
それを拾い上げると、転がってきた方を確認する。
「すみませーん!」
こちらに向かって謝罪しながら、小柄な女性が走ってきているのが見えた。
その声に、段々と近づく人物に覚えがあった。
初めて聞く声ではなかった。
小柄な体格に、一つ結びの髪型見覚えがあった。
声の主も徐々に近づいてくる。
「あ」
あちらも俺の顔に見覚えがあったらしい。
それもそうだろう。
「三宅さん」
注文の食事が完成する度に睨みつけていた人間がボールを拾い上げていたのだから。
二本の鎖が、それぞれいびつにねじれ、座る箇所が前方に向かって浮く。
子どものころ、ブランコをから飛び降りた経験を連想する写真だった。
「これ、よくない?」
写真を確認している間に、ブランコに乗っていた蒼依に声をかける。
「お、いいじゃん。光の加減もいい感じ」
「だよねだよね」
自分の頬が緩んでしまうのがわかる。
胸の方から、キラキラとしたものが溢れていく。
「俺でも、こんな写真撮れるんだな」
噛みしめるように、言葉を発する。
「そりゃ、一緒に勉強したんだから撮れるだろ。頑張ってたよ、奏汰」
蒼依からの思いがけない評価に、俺は驚きを隠せない。
「いやいや。頑張ってなんかないって」
俺の返答に、蒼依は気を悪くすることなく見つめ返す。
「奏汰からするとそうかもしれないけど、俺から見たら頑張ってたと思う。奏汰の自己評価は違うかもだけど、俺からの評価は頑張っていたってものから変更したくない」
俺達を包み込むように温かな風が吹く。
気が付くと、俺は体験したかったものの欠片を握ることができていた。
「奏汰見てたら俺もやる気になってきたわ。俺もちょっと頑張ってくる」
蒼依は腕まくりをし、ゆっくりとした足取りで公園の奥へ向かった。
残された俺は、ブランコの向かいにあるベンチへ向かい、腰を下ろした。
スマホを開き、再びブランコの写真を表示させる。
今までとは比較にならないくらい、気に入った作品ができた。
ベンチに座りながら、次の被写体を探す。
スマホのカメラを起動させる前に、両手の親指と人差し指を使って四角い枠を作り、公園を眺めていく。
先程までいなかった、日に焼けた子ども達が目の前を走り抜けていった。
老夫婦が、両手にスキー選手のような棒を持って歩いていた。
先ほどのブランコは、俺と同じくらいの男女グループが占領して童心にかえり、ブランコに乗っている。
奥の方に生えている木の近くで、褐色の体格がよい男がしゃがみ、何かに向かってスマホを向けているのが見えた。
蒼依は木の根元でなにを撮影しているのだろうか。
様子を見に行こうと立ち上がった途端、俺に向かって黄色いボールが転がってくる。
それを拾い上げると、転がってきた方を確認する。
「すみませーん!」
こちらに向かって謝罪しながら、小柄な女性が走ってきているのが見えた。
その声に、段々と近づく人物に覚えがあった。
初めて聞く声ではなかった。
小柄な体格に、一つ結びの髪型見覚えがあった。
声の主も徐々に近づいてくる。
「あ」
あちらも俺の顔に見覚えがあったらしい。
それもそうだろう。
「三宅さん」
注文の食事が完成する度に睨みつけていた人間がボールを拾い上げていたのだから。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

俺と代われ!!Re青春
相間 暖人
青春
2025年、日本では国家主導で秘密裏に実験が行われる事になった。
昨今の少子化は国として存亡の危機にあると判断した政府は特別なバディ制度を実施する事により高校生の恋愛を活発にしようと計ったのだ。
今回はその一組の話をしよう。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

執事👨一人声劇台本
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
執事台本を今まで書いた事がなかったのですが、機会があって書いてみました。
一作だけではなく、これから色々書いてみようと思います。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
とあるアプリで出題されたテーマから紡がれるセカンドストーリー❤︎
砂坂よつば
青春
「書く習慣」というアプリから出題されるお題に沿って、セリフが入っていたり、ストーリーが進む予測不可能な小説。第2弾は新たな物語ラブコメでお届け!!
主人公、高校1年生 輪通 萌香(わづつ もえか)が屋上でクラスメイトの友達と昼食を食べながらグランドを眺めていると、萌香好みの男子生徒を発見!萌香は彼と両思いになって楽しくも甘酸っぱい?青春高校生活を送ることが出来るのだろうか運命やいかに––––!?
※お題によって主人公が出てこない場合もございます。
本作品では登場する様々なキャラクターの日常や過去、恋愛等を描けてたらと思っています。小説家になろうとカクヨムの方でも同じ内容で連載中!※
いくつかのお題をアルフォポリス限定で執筆予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる