15 / 41
白秋
はくしゅう9
しおりを挟む
「写真?」
「そう、写真。映える写真撮るの。SNSにもよく投稿されてるあれ」
「なるほど……写真か……」
テーブルに小さなぬいぐるみやアクリルスタンドを嬉々としながら飾り、写真撮影する自分を想像し、吐き気がした。
「なんか……私が考えてるものと奏汰さんが考えてるもの、違う気がする……」
怪訝そうな目でこちらを見るアリシャ。
「え、そうなの?」
解釈違いが起きたらしい。
「私が考えたのは、青春の1ページを切り取ること。カフェとか、映えスポットに絶対行かないといけないわけじゃなくて、いいなって思った部分をカメラでパシャっと」
アリシャは両手の親指と人差し指を使い、四角を作る。
「空とか、海とかだけ撮ったりとか。良くない?」
四角越しに俺を覗き込むとウインクした。
ウインクから何かが出ていたのかもしれない。
頭に衝撃が走った。
そうだ、俺が自分で動いていない。受け身で青春を体験できる訳じゃないんだ。
確かに、WINGに投稿されている写真には、写真映えするものもある。
最近は、イラスト以外にもそのような写真に反応することも増えた。
撮ってみよう。青春を撮ってみよう。
「なるほど、写真、いいかもしれない。考えてたものとだいぶ違った」
「助けになれたなら良かった」
アリシャの笑顔が輝く。
アリシャに見送られながら外に出た後、深いため息が出た。
もう列が
またここに来て話そうと思ったのもつかの間、予想以上に旅立つ紙幣を見ると躊躇してしまう。
お金に余裕が出来たらまた行こう。
そう決めながらスマホを取り出し、メッセージアプリを起動して文章を打つ。
『蒼依、前言ってた青春の話なんだけど』
すぐに既読のマークが付き、入力中の記号が表示された。
『あー、あれか、青春したいってやつか。忘れてた。青春見つけた?』
やはり蒼依は忘れていたらしい。
『写真撮ろうと思う』
『いいの撮れたら教えて』
メッセージと一緒に、劇画調のスタンプが送られてきた。
『辛口評価はいらないから。俺褒めて伸びるタイプだから』
『そんなんじゃ社会出て潰れちゃうから、俺がビシバシ鍛えとくわ』
「覚えとけよ」と捨て台詞を吐いているキャラクターのスタンプを一緒に送る。
赤信号で止まり、メッセージアプリを閉じた。
試しにカメラアプリを起動し、撮影画面を眺めてみる。
目の前で車が行き交う。車の向こうにも、信号を待つ人の姿が小さく映る。
規模に違いはあるが、それは幼い頃から見慣れた風景だ。
そんな風景を見ても、ときめくものは何も無い。
シャッターボタンを押さず、アプリを閉じた。
信号が青に変わるのを大人しく待ち、帰路についた。
「そう、写真。映える写真撮るの。SNSにもよく投稿されてるあれ」
「なるほど……写真か……」
テーブルに小さなぬいぐるみやアクリルスタンドを嬉々としながら飾り、写真撮影する自分を想像し、吐き気がした。
「なんか……私が考えてるものと奏汰さんが考えてるもの、違う気がする……」
怪訝そうな目でこちらを見るアリシャ。
「え、そうなの?」
解釈違いが起きたらしい。
「私が考えたのは、青春の1ページを切り取ること。カフェとか、映えスポットに絶対行かないといけないわけじゃなくて、いいなって思った部分をカメラでパシャっと」
アリシャは両手の親指と人差し指を使い、四角を作る。
「空とか、海とかだけ撮ったりとか。良くない?」
四角越しに俺を覗き込むとウインクした。
ウインクから何かが出ていたのかもしれない。
頭に衝撃が走った。
そうだ、俺が自分で動いていない。受け身で青春を体験できる訳じゃないんだ。
確かに、WINGに投稿されている写真には、写真映えするものもある。
最近は、イラスト以外にもそのような写真に反応することも増えた。
撮ってみよう。青春を撮ってみよう。
「なるほど、写真、いいかもしれない。考えてたものとだいぶ違った」
「助けになれたなら良かった」
アリシャの笑顔が輝く。
アリシャに見送られながら外に出た後、深いため息が出た。
もう列が
またここに来て話そうと思ったのもつかの間、予想以上に旅立つ紙幣を見ると躊躇してしまう。
お金に余裕が出来たらまた行こう。
そう決めながらスマホを取り出し、メッセージアプリを起動して文章を打つ。
『蒼依、前言ってた青春の話なんだけど』
すぐに既読のマークが付き、入力中の記号が表示された。
『あー、あれか、青春したいってやつか。忘れてた。青春見つけた?』
やはり蒼依は忘れていたらしい。
『写真撮ろうと思う』
『いいの撮れたら教えて』
メッセージと一緒に、劇画調のスタンプが送られてきた。
『辛口評価はいらないから。俺褒めて伸びるタイプだから』
『そんなんじゃ社会出て潰れちゃうから、俺がビシバシ鍛えとくわ』
「覚えとけよ」と捨て台詞を吐いているキャラクターのスタンプを一緒に送る。
赤信号で止まり、メッセージアプリを閉じた。
試しにカメラアプリを起動し、撮影画面を眺めてみる。
目の前で車が行き交う。車の向こうにも、信号を待つ人の姿が小さく映る。
規模に違いはあるが、それは幼い頃から見慣れた風景だ。
そんな風景を見ても、ときめくものは何も無い。
シャッターボタンを押さず、アプリを閉じた。
信号が青に変わるのを大人しく待ち、帰路についた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

俺と代われ!!Re青春
相間 暖人
青春
2025年、日本では国家主導で秘密裏に実験が行われる事になった。
昨今の少子化は国として存亡の危機にあると判断した政府は特別なバディ制度を実施する事により高校生の恋愛を活発にしようと計ったのだ。
今回はその一組の話をしよう。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

執事👨一人声劇台本
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
執事台本を今まで書いた事がなかったのですが、機会があって書いてみました。
一作だけではなく、これから色々書いてみようと思います。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
とあるアプリで出題されたテーマから紡がれるセカンドストーリー❤︎
砂坂よつば
青春
「書く習慣」というアプリから出題されるお題に沿って、セリフが入っていたり、ストーリーが進む予測不可能な小説。第2弾は新たな物語ラブコメでお届け!!
主人公、高校1年生 輪通 萌香(わづつ もえか)が屋上でクラスメイトの友達と昼食を食べながらグランドを眺めていると、萌香好みの男子生徒を発見!萌香は彼と両思いになって楽しくも甘酸っぱい?青春高校生活を送ることが出来るのだろうか運命やいかに––––!?
※お題によって主人公が出てこない場合もございます。
本作品では登場する様々なキャラクターの日常や過去、恋愛等を描けてたらと思っています。小説家になろうとカクヨムの方でも同じ内容で連載中!※
いくつかのお題をアルフォポリス限定で執筆予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる