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朱夏
しゅか3
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『アンタ、今日アパートにいるの?』
バイトも予定もない、貴重な休日。
俺がゲームをしていると、母からメッセージが来た。
最後に連絡を取ったのは、五月頃。
俺が実家に残していたキャリーケースを妹に貸してもよいかという連絡が最後だった。
『いるけど、何か用?』
返信をしようとした直後、インターホンが鳴った。
ゲーミングチェアから立ち上がり、室内に取り付けられたモニターを確認する。
画面には、過剰な程フリルを胸元にあしらい、水色という奇抜な髪色をした身長の女性が映っていた。
我が妹なら、もう少しカジュアルな服でやって来るはずだ。
知り合いにこんな系統の服を好む女性はいないはずだが、この来客は誰だ。
間違いか、宗教勧誘か。
こんな服装で宗教勧誘することもないか。
声を出さず、来客が去るのを見届けることにした。
しかし、来客はなかなか玄関前から動かない。
早く去れと念じながらモニターを眺めていると、画面端に見覚えのあるスーツケースが映っていることに気づいた。
来客は、背負っているリュックの紐を手で弄りながら、身体を左右に軽く捻り、水色のツインテールを揺らす。
女の子らしい仕草とは裏腹に、インターホン備え付けのカメラを睨みつけ続ける。
外見は記憶と違うが、その目つきの悪さには覚えがあった。
「律花だけど……いないの?」
しびれを切らしてか、来客はインターホンに向かって自らの名前を名乗る。
その声は、声優と言われても納得できる、可愛らしい独特の高音だ。
俺は、足早に玄関へ向かう。
鈴名律花。
目つきと声以外記憶と違っているが、あれは我が妹のようだ。
「お前、俺の知ってる鈴名律花で合ってるか?」
ドアを開けながら、我が妹に声をかける。
「俺の妹は150センチあるかないかの身長だが」
全体像を見て、高身長だと勘違いした理由があらわになる。
ミニスカートから伸びる、やや筋肉質な両足は、俺が履いたら足を挫いてしまいそうな程、底が分厚い靴を着用していた。
靴を脱げば、記憶と同じ身長になるだろう。
「スーツケース、返しにきた」
我が妹は素っ気なく要件のみ伝えると、スーツケースと共に玄関の中に入り込み、
乱暴にドアを閉めた。
下駄箱横にキャリーケースを置くと、家主を押しのけ、我が物顔でリビングに進む。
ゲーミングチェアに座ると、こちらを睨みつける。
反抗期というやつか? それとも何か怒られることをしただろうか。
思い当たる節を考えながら、キャリーケースの前で足を止めた。
深く考えることなく乱雑に置いたように見えたが、キャリーケースの端と下駄箱の端が重なる位置に、下駄箱に沿うように置いてある。
自分のものは整理整頓しないと落ち着かず、乱雑に物を置かれる度に堪忍袋の緒が切れる。
そんな俺の性格を覚えてくれているらしい。
キャリーケースはそのままに、リビングに入る。
「何でニヤニヤしてんの、きっしょ」
「我が妹からの愛を感じて」
可愛い妹が小声で辛辣な言葉を吐き捨てたのを、お前の兄は聞き逃さなかったぞ。
バイトも予定もない、貴重な休日。
俺がゲームをしていると、母からメッセージが来た。
最後に連絡を取ったのは、五月頃。
俺が実家に残していたキャリーケースを妹に貸してもよいかという連絡が最後だった。
『いるけど、何か用?』
返信をしようとした直後、インターホンが鳴った。
ゲーミングチェアから立ち上がり、室内に取り付けられたモニターを確認する。
画面には、過剰な程フリルを胸元にあしらい、水色という奇抜な髪色をした身長の女性が映っていた。
我が妹なら、もう少しカジュアルな服でやって来るはずだ。
知り合いにこんな系統の服を好む女性はいないはずだが、この来客は誰だ。
間違いか、宗教勧誘か。
こんな服装で宗教勧誘することもないか。
声を出さず、来客が去るのを見届けることにした。
しかし、来客はなかなか玄関前から動かない。
早く去れと念じながらモニターを眺めていると、画面端に見覚えのあるスーツケースが映っていることに気づいた。
来客は、背負っているリュックの紐を手で弄りながら、身体を左右に軽く捻り、水色のツインテールを揺らす。
女の子らしい仕草とは裏腹に、インターホン備え付けのカメラを睨みつけ続ける。
外見は記憶と違うが、その目つきの悪さには覚えがあった。
「律花だけど……いないの?」
しびれを切らしてか、来客はインターホンに向かって自らの名前を名乗る。
その声は、声優と言われても納得できる、可愛らしい独特の高音だ。
俺は、足早に玄関へ向かう。
鈴名律花。
目つきと声以外記憶と違っているが、あれは我が妹のようだ。
「お前、俺の知ってる鈴名律花で合ってるか?」
ドアを開けながら、我が妹に声をかける。
「俺の妹は150センチあるかないかの身長だが」
全体像を見て、高身長だと勘違いした理由があらわになる。
ミニスカートから伸びる、やや筋肉質な両足は、俺が履いたら足を挫いてしまいそうな程、底が分厚い靴を着用していた。
靴を脱げば、記憶と同じ身長になるだろう。
「スーツケース、返しにきた」
我が妹は素っ気なく要件のみ伝えると、スーツケースと共に玄関の中に入り込み、
乱暴にドアを閉めた。
下駄箱横にキャリーケースを置くと、家主を押しのけ、我が物顔でリビングに進む。
ゲーミングチェアに座ると、こちらを睨みつける。
反抗期というやつか? それとも何か怒られることをしただろうか。
思い当たる節を考えながら、キャリーケースの前で足を止めた。
深く考えることなく乱雑に置いたように見えたが、キャリーケースの端と下駄箱の端が重なる位置に、下駄箱に沿うように置いてある。
自分のものは整理整頓しないと落ち着かず、乱雑に物を置かれる度に堪忍袋の緒が切れる。
そんな俺の性格を覚えてくれているらしい。
キャリーケースはそのままに、リビングに入る。
「何でニヤニヤしてんの、きっしょ」
「我が妹からの愛を感じて」
可愛い妹が小声で辛辣な言葉を吐き捨てたのを、お前の兄は聞き逃さなかったぞ。
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