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朱夏
しゅか2
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「あいつに彼女だと?」
女なんて嫌いだ、俺は一生独りで過ごすのだと何度も投稿していたあいつに?
嫌いだとか言いながら、結局彼女欲しかったんじゃないか。
深いため息をつき、ゲーミングチェアから降りた。
電気を消し、ベッドに潜る。
こんな時は寝るに限る。バイトで疲れているのだから、寝るのは容易いはずだ。
無理やり目を閉じる。
目を閉じた暗闇の先で、根暗な友人は、公園と思われる場所に設置されたベンチに腰掛けてスマホを操作している。
「カオルンゴくーん!」
花柄の可愛らしいワンピースの裾を揺らしながら、交際相手らしき女が近づいてきた。
友人のアカウント名を呼ぶ姿は滑稽だが、俺は本名を知らないのだから仕方ない。
「おはよう、みぃこ」
周りの雑音にかき消されそうなか細い声だが、友人の耳にはしっかり届いたようだ。
顔を上げて、女に向けて微笑む。
2人の目線がぶつかると、お互い目を背けてしまった。
初々し過ぎだろ。使い古された反応しやがって。
というか相手の名前、もっといい名前ないのかよ。
脳内が捏造する友人と、友人の恋人相手に悪態をつく。
「待った?」
「先に到着したけど、みぃこのことを考えていたらあっという間だったよ」
こんな使い古されたセリフ言ってると、振られるのも時間の問題だな。
自分が作ったフィクションの会話に安堵し、カオルンゴを鼻で笑う。
「そっか。なんか、カオルンゴ君らしい返事で安心した」
思わぬ展開になり、俺は物悲しい顔になる。
「なんか、私の格好って平凡だよね。量産型ってやつかな?」
しおらしく歩く、みぃこという架空の登場人物。
確かに、人混みの中で目立つような服装ではない。
まじまじと服装を確認した友人は、真っ赤にした顔を背け言う。
「その辺を歩いている有象無象より……似合ってる」
勝手に脳内で捏造された映像に神経が逆撫でされ、瞼が勝手に開く。
マンガでも読もう。気持ちを切り替えるんだ。
再び明るくなった部屋に顔を険しくさせながらベッドから転がり出ると、ベットサイドに設置してある本棚を眺める。
さて、どれを読もうか。
しばらく唸った後、来月アニメの放送が決定しているマンガに決めた。
これくらいのボリュームであれば、寝る前の読書にはちょうど良い。
読んでいる間に眠気が来るだろう。
アニメ放送前にキャラや伏線の確認をしたいし、ちょうど良いタイミングだ。
集めた巻を全て取り出そうとした時、明らかに巻数が足りないことに気付く。
一巻から三巻まで、大事な序盤の巻が抜けていた。
一巻から読み進めて、設定の復習や伏線を確認するのが楽しいのに、なんで抜けてんだ。
出鼻をくじかれ、何も手にせずベッドに寝転がる。
白い天井を眺めながら、マンガの行き先を思い出すため、脳細胞を働かせる。
蒼依ではない。あいつはこの作者が大嫌いだ。
悠二でもない。あいつはネカフェで読むからいいと言っていたし、以前貸したマンガがしばらく返ってこなかったから今後貸さないと言ったはずだ。
そうなると誰に貸した? 他に俺がマンガを貸すような人物は誰だ。
1番仲の良い友人でもなく、バイト先の友人でもなく、他に俺が貸した相手は誰だ。
唸りながら寝返りを打つと、下駄箱が見えた。
「あ」
それをきっかけに記憶が巻き戻される。
一昨日、珍しい来客があった。
女なんて嫌いだ、俺は一生独りで過ごすのだと何度も投稿していたあいつに?
嫌いだとか言いながら、結局彼女欲しかったんじゃないか。
深いため息をつき、ゲーミングチェアから降りた。
電気を消し、ベッドに潜る。
こんな時は寝るに限る。バイトで疲れているのだから、寝るのは容易いはずだ。
無理やり目を閉じる。
目を閉じた暗闇の先で、根暗な友人は、公園と思われる場所に設置されたベンチに腰掛けてスマホを操作している。
「カオルンゴくーん!」
花柄の可愛らしいワンピースの裾を揺らしながら、交際相手らしき女が近づいてきた。
友人のアカウント名を呼ぶ姿は滑稽だが、俺は本名を知らないのだから仕方ない。
「おはよう、みぃこ」
周りの雑音にかき消されそうなか細い声だが、友人の耳にはしっかり届いたようだ。
顔を上げて、女に向けて微笑む。
2人の目線がぶつかると、お互い目を背けてしまった。
初々し過ぎだろ。使い古された反応しやがって。
というか相手の名前、もっといい名前ないのかよ。
脳内が捏造する友人と、友人の恋人相手に悪態をつく。
「待った?」
「先に到着したけど、みぃこのことを考えていたらあっという間だったよ」
こんな使い古されたセリフ言ってると、振られるのも時間の問題だな。
自分が作ったフィクションの会話に安堵し、カオルンゴを鼻で笑う。
「そっか。なんか、カオルンゴ君らしい返事で安心した」
思わぬ展開になり、俺は物悲しい顔になる。
「なんか、私の格好って平凡だよね。量産型ってやつかな?」
しおらしく歩く、みぃこという架空の登場人物。
確かに、人混みの中で目立つような服装ではない。
まじまじと服装を確認した友人は、真っ赤にした顔を背け言う。
「その辺を歩いている有象無象より……似合ってる」
勝手に脳内で捏造された映像に神経が逆撫でされ、瞼が勝手に開く。
マンガでも読もう。気持ちを切り替えるんだ。
再び明るくなった部屋に顔を険しくさせながらベッドから転がり出ると、ベットサイドに設置してある本棚を眺める。
さて、どれを読もうか。
しばらく唸った後、来月アニメの放送が決定しているマンガに決めた。
これくらいのボリュームであれば、寝る前の読書にはちょうど良い。
読んでいる間に眠気が来るだろう。
アニメ放送前にキャラや伏線の確認をしたいし、ちょうど良いタイミングだ。
集めた巻を全て取り出そうとした時、明らかに巻数が足りないことに気付く。
一巻から三巻まで、大事な序盤の巻が抜けていた。
一巻から読み進めて、設定の復習や伏線を確認するのが楽しいのに、なんで抜けてんだ。
出鼻をくじかれ、何も手にせずベッドに寝転がる。
白い天井を眺めながら、マンガの行き先を思い出すため、脳細胞を働かせる。
蒼依ではない。あいつはこの作者が大嫌いだ。
悠二でもない。あいつはネカフェで読むからいいと言っていたし、以前貸したマンガがしばらく返ってこなかったから今後貸さないと言ったはずだ。
そうなると誰に貸した? 他に俺がマンガを貸すような人物は誰だ。
1番仲の良い友人でもなく、バイト先の友人でもなく、他に俺が貸した相手は誰だ。
唸りながら寝返りを打つと、下駄箱が見えた。
「あ」
それをきっかけに記憶が巻き戻される。
一昨日、珍しい来客があった。
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