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我に栄光あれ(前編)
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オルレアン公王室ではエラによって託された手紙が王であるハインリヒ2世の手元で読み進められていた。
ハインリヒ2世は50代頃に見える顔の堀が深く重責を背負った風貌をしている。
その手紙の大まかな内容としてはキャルロット家に万が一の事が発生した場合、ヴェール家、キャピュレット家、オルレアン家の3家間
で紳士協定、及び軍事同盟を結ぶ事を願うものであった。
ヴェール家とは、かつてのキャルロット家、側近であった今は亡きアルフレッドの出身家である。
また、爵位の保障を求める代償として、キャルロット家はオルレアン家、キャピュレット家の双方に忠義を尽くすという内容であった
悪い読み方をするならば省略すると政略結婚を辞さないという内容である。
その上でヴェール家がキャルロット家に恩を預かった内容が記されていたのだった。
この内容を理解した王、ハインリヒ2世は深刻な表情を浮かべるのであった。
「キャピュレット家とヴェール家に紳士協定を伝令せよ。急げ。
キャルロット家に異変が起きている事に誰も気づいておらんのか!」
しかし、この伝令がキャピュレット家、ヴェール家へまともに届く事は無かった。
タイミングの差は出たものの、この時に初めて3家の領主がそれぞれ”自領が都合の良い様に騙されている事”にようやく気づいたのであった。
一方、キャピュレット家はこの状況をオルレアン公よりは多少なり先に得ていたのだった。
かつてキャルロット家のご息女だったエラをリバース領(旧キャルロット領)に荷馬車に隠して送った商人の話が発端であった。
「旦那様、リバース領で何やら暴動が起きておるようです。
一部、憲兵と農民が戦っております。」
「リバース領?
キャルロット領の誤りではないのか?」
怪訝な顔をしたキャピュレット家のアンドレの父、マルク侯爵は血相を変えたのだった。
ここで直ぐに呼ばれたのはアンドレであった。
アンドレはここで初めて父、マルク侯爵にキャルロット家の実情を申すのだった。
その下りは、キャルロット家のエラから舞踏会が始まる前に事情を直接聞いていながら、キャルロット家のエラを口説き倒していたという事実である。
この話を聞いたマルク侯爵はこの様に激怒したのであった。
「このバカ息子が!
キャルロット家を支えずしてどうするか!
お前はすぐさま軍を率い、エレノア嬢を支えよ!」
こうして、マルク侯爵はオルレアン公のハインリヒ2世に自ら謁見を申し立てる為に急いで出向くのであった。
この後、王であるハインリヒ2世はマルク侯爵の謁見によってこれまでの大方の全貌を知るのであった。
これによりキャルロット領へ出向いてリバース子爵を取り押さえる様、レオ王子に命じたのである。
その下りはリバースを逆賊の罪と爵位剥奪の弾劾裁判に掛けるためであった。
リバースを首尾よく捉えても恐らくは公開処刑、もしそうで無ければその場でリバースの首が討たれる。
公開処刑の方が民衆に晒されるだけに屈辱的であり、何れにせよリバースの運命は詰んでいた。
時を戻して、キャピュレット家からエラを隠してリバース領(旧キャルロット領)へ送った商人。
この商人がキャピュレット家のマルク侯爵に謁見する頃の時であった。
この時、農村地帯が憲兵と農民の小競り合いが起き、1人の農民が憲兵に殺されるのだった。
「このクズめ、今持っている麦を全てだせ。」
「内にはもうこれ以上、領主様に差し出せるものはありません。
どうかご勘弁を・・・」
この農民の風貌は痩せこけて飢えそうな状態であった。
憲兵はこの農民に剣を突き刺したのだった。
「往生際が悪い、死ぬがよいわ。」
これを見た他の者が、憲兵に食って掛かった状態であった。
この場に居合わせたのが今は無きキャルロット家のエラであった。
「そこの憲兵!
命を粗末にすると後で後悔する事になるぞ!」
エラは武装していない、商人の恰好であった。
ダボついたズボンに上はシャツを着ており、長い金色の髪はアップして纏め、布で隠していた。
エラの顔は怒りに満ちていた。
「この小娘が。
その減らず口を叩きなおしてやろうか。」
卑しい顔をした憲兵はエラに襲い掛かるのであった。
これを華麗にかわしたのがエラだった。
憲兵が振り上げた腕を取って投げ倒し、すぐざま憲兵の持っている剣を取り上げると首元に剣を突き付けた。
「これ以上動くとお前を殺すぞ。」
エラは酷く睨んだ形相で憲兵を牽制するのだった。
この様子を見た他の憲兵の一人がリバース子爵の元に戻り、他の憲兵がエラの周りを囲った。
タイミングを見計らっていた農民達は今までの不満が爆発し、ここで一気に暴動を起こすのだった。
その声には「エラ様!」「お嬢様!」という声が飛び交っていた。
この状況を憲兵の報告で知ったリバース子爵の態度は鼻で笑うかの様だった。
容姿は40代中盤で目つきは犯罪者の様相、頬骨が見えて貧素でしゃくれた顎。
人物像の印象は悪い。
「この無能めが、農民くらいさっさと始末しろ。
俺が出向いてやるわ。」
その顔は薄気味悪い笑った顔を浮かべている。
こうしてリバース子爵は高を括り、のこのと農村地帯に出向くのであった。
時を同じくしてキャピュレット領からアンドレの部隊がリバース領の付近まで進めていた。
暴動が発生する中でエラは華麗な剣さばきで次々と憲兵をなぎ倒していく。
この時にリバース子爵がエラの前に到着したのだった。
「これはこれは。
お前はシンデラではないか。」
馬の手綱を引いたリバース子爵は悪徳の表情で目を見開いてこの様に述べた。
続けてすぐさま冷徹な顔となり、片手を振り上げてこの様に言い放ったのだった。
「こざかしい!皆殺しにせよ。」
この言葉を耳にしたエラは逆上するのだった。
「お前を生かすわけにはいかぬ。
死を持って償え、リバース!!」
剣を振り上げてリバース子爵の立ち位置に剣先を向け、姿勢を低く構えたのだった。
エラは鋭い目でリバースの姿を睨みつける。
同時に少し遠くから「全軍突撃せよ!」という声が聞こえたのであった。
颯爽と馬を走らせ、剣を片手で上げ、「我に続け!!」。
そう大きく叫んだのは茶色の髪を風でなびかせたキャピュレット領からの援軍、アンドレであった。
キャピュレットから率いて来た大軍は溢れた強い士気と統制を感じさせた。
この大誤算に大きく驚愕したのはリバース子爵であった。
リバースの頭には、まともに武器を扱えない歯向かって来た農民を切り殺せば済むと計算していたのだった。
つまり、自らの安全は確実に保障されると踏んでいたのだ。
「このクソッタレ。
俺は屋敷に戻るぞ!
お前らはこの者達を始末せよ!!」
リバース子爵は血相を変えて一目散に全速力で屋敷へ引き返すのだった。
しかし、馬を走らせている間にリバースはふと考え直すと目は微妙に笑ったのである。
ハインリヒ2世は50代頃に見える顔の堀が深く重責を背負った風貌をしている。
その手紙の大まかな内容としてはキャルロット家に万が一の事が発生した場合、ヴェール家、キャピュレット家、オルレアン家の3家間
で紳士協定、及び軍事同盟を結ぶ事を願うものであった。
ヴェール家とは、かつてのキャルロット家、側近であった今は亡きアルフレッドの出身家である。
また、爵位の保障を求める代償として、キャルロット家はオルレアン家、キャピュレット家の双方に忠義を尽くすという内容であった
悪い読み方をするならば省略すると政略結婚を辞さないという内容である。
その上でヴェール家がキャルロット家に恩を預かった内容が記されていたのだった。
この内容を理解した王、ハインリヒ2世は深刻な表情を浮かべるのであった。
「キャピュレット家とヴェール家に紳士協定を伝令せよ。急げ。
キャルロット家に異変が起きている事に誰も気づいておらんのか!」
しかし、この伝令がキャピュレット家、ヴェール家へまともに届く事は無かった。
タイミングの差は出たものの、この時に初めて3家の領主がそれぞれ”自領が都合の良い様に騙されている事”にようやく気づいたのであった。
一方、キャピュレット家はこの状況をオルレアン公よりは多少なり先に得ていたのだった。
かつてキャルロット家のご息女だったエラをリバース領(旧キャルロット領)に荷馬車に隠して送った商人の話が発端であった。
「旦那様、リバース領で何やら暴動が起きておるようです。
一部、憲兵と農民が戦っております。」
「リバース領?
キャルロット領の誤りではないのか?」
怪訝な顔をしたキャピュレット家のアンドレの父、マルク侯爵は血相を変えたのだった。
ここで直ぐに呼ばれたのはアンドレであった。
アンドレはここで初めて父、マルク侯爵にキャルロット家の実情を申すのだった。
その下りは、キャルロット家のエラから舞踏会が始まる前に事情を直接聞いていながら、キャルロット家のエラを口説き倒していたという事実である。
この話を聞いたマルク侯爵はこの様に激怒したのであった。
「このバカ息子が!
キャルロット家を支えずしてどうするか!
お前はすぐさま軍を率い、エレノア嬢を支えよ!」
こうして、マルク侯爵はオルレアン公のハインリヒ2世に自ら謁見を申し立てる為に急いで出向くのであった。
この後、王であるハインリヒ2世はマルク侯爵の謁見によってこれまでの大方の全貌を知るのであった。
これによりキャルロット領へ出向いてリバース子爵を取り押さえる様、レオ王子に命じたのである。
その下りはリバースを逆賊の罪と爵位剥奪の弾劾裁判に掛けるためであった。
リバースを首尾よく捉えても恐らくは公開処刑、もしそうで無ければその場でリバースの首が討たれる。
公開処刑の方が民衆に晒されるだけに屈辱的であり、何れにせよリバースの運命は詰んでいた。
時を戻して、キャピュレット家からエラを隠してリバース領(旧キャルロット領)へ送った商人。
この商人がキャピュレット家のマルク侯爵に謁見する頃の時であった。
この時、農村地帯が憲兵と農民の小競り合いが起き、1人の農民が憲兵に殺されるのだった。
「このクズめ、今持っている麦を全てだせ。」
「内にはもうこれ以上、領主様に差し出せるものはありません。
どうかご勘弁を・・・」
この農民の風貌は痩せこけて飢えそうな状態であった。
憲兵はこの農民に剣を突き刺したのだった。
「往生際が悪い、死ぬがよいわ。」
これを見た他の者が、憲兵に食って掛かった状態であった。
この場に居合わせたのが今は無きキャルロット家のエラであった。
「そこの憲兵!
命を粗末にすると後で後悔する事になるぞ!」
エラは武装していない、商人の恰好であった。
ダボついたズボンに上はシャツを着ており、長い金色の髪はアップして纏め、布で隠していた。
エラの顔は怒りに満ちていた。
「この小娘が。
その減らず口を叩きなおしてやろうか。」
卑しい顔をした憲兵はエラに襲い掛かるのであった。
これを華麗にかわしたのがエラだった。
憲兵が振り上げた腕を取って投げ倒し、すぐざま憲兵の持っている剣を取り上げると首元に剣を突き付けた。
「これ以上動くとお前を殺すぞ。」
エラは酷く睨んだ形相で憲兵を牽制するのだった。
この様子を見た他の憲兵の一人がリバース子爵の元に戻り、他の憲兵がエラの周りを囲った。
タイミングを見計らっていた農民達は今までの不満が爆発し、ここで一気に暴動を起こすのだった。
その声には「エラ様!」「お嬢様!」という声が飛び交っていた。
この状況を憲兵の報告で知ったリバース子爵の態度は鼻で笑うかの様だった。
容姿は40代中盤で目つきは犯罪者の様相、頬骨が見えて貧素でしゃくれた顎。
人物像の印象は悪い。
「この無能めが、農民くらいさっさと始末しろ。
俺が出向いてやるわ。」
その顔は薄気味悪い笑った顔を浮かべている。
こうしてリバース子爵は高を括り、のこのと農村地帯に出向くのであった。
時を同じくしてキャピュレット領からアンドレの部隊がリバース領の付近まで進めていた。
暴動が発生する中でエラは華麗な剣さばきで次々と憲兵をなぎ倒していく。
この時にリバース子爵がエラの前に到着したのだった。
「これはこれは。
お前はシンデラではないか。」
馬の手綱を引いたリバース子爵は悪徳の表情で目を見開いてこの様に述べた。
続けてすぐさま冷徹な顔となり、片手を振り上げてこの様に言い放ったのだった。
「こざかしい!皆殺しにせよ。」
この言葉を耳にしたエラは逆上するのだった。
「お前を生かすわけにはいかぬ。
死を持って償え、リバース!!」
剣を振り上げてリバース子爵の立ち位置に剣先を向け、姿勢を低く構えたのだった。
エラは鋭い目でリバースの姿を睨みつける。
同時に少し遠くから「全軍突撃せよ!」という声が聞こえたのであった。
颯爽と馬を走らせ、剣を片手で上げ、「我に続け!!」。
そう大きく叫んだのは茶色の髪を風でなびかせたキャピュレット領からの援軍、アンドレであった。
キャピュレットから率いて来た大軍は溢れた強い士気と統制を感じさせた。
この大誤算に大きく驚愕したのはリバース子爵であった。
リバースの頭には、まともに武器を扱えない歯向かって来た農民を切り殺せば済むと計算していたのだった。
つまり、自らの安全は確実に保障されると踏んでいたのだ。
「このクソッタレ。
俺は屋敷に戻るぞ!
お前らはこの者達を始末せよ!!」
リバース子爵は血相を変えて一目散に全速力で屋敷へ引き返すのだった。
しかし、馬を走らせている間にリバースはふと考え直すと目は微妙に笑ったのである。
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