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1.平和とは

3.誰の所為か、血が怖い

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ん…はっ!ここは…病院?
「あ、気づかれましたか!先生、呼んできます!」
「おお、これは奇跡ですな。」
「先生、目覚めてすぐで申し訳ないのですが」
「はい?」
姉ちゃんを色々脅威に巻き込みたくない。姉ちゃんの邪魔になりたくない。ならば俺にできることは一つだけ。
「姉にこれを」
そう言って俺は、医師に紙を渡した。一見何も書いていないように見えるが、あるひと手間で文字が浮きでてくるのだ。まあ、姉ちゃんなら分かるだろう。
「バイタル、血圧80-115、心拍数80でサイナスです。」
「それは良かった。乙宮さん、今なら退院できますが?」
「姉が心配なので…。退院したいです…っ!」
「乙宮さん、乙宮さん!」
「CPAです!」
「アドレナリン投与、急いで!」
退院出来ると思ったのに。苦しい。息ができない。アドレナリンが投与される。こんな状況ながら考えてしまう、「あれ、アドレナリン多くない?」と。だんだんと意識が遠のいていく。そこで意識は途絶えた。

茜…茜…。私を、私を…にしないで。
「はぁっ!はぁ…はぁ…はぁ…。」
また、悪い夢を見てしまった。茜が私の元から離れていく夢。気付いたら茜を思い涙を流している。そんなことが、度々ある。茜のこと以外考えられない。
「茜…。早く目を覚まして、私を抱きしめてよ…」
茜の温もりが忘れられない。茜の声が忘れられない。いつもなら起きたらそこには茜がいて、私の作る朝ごはんに文句言って。いつも楽しかった。いつも通りの日常なら、茜はこんな思いをしなくても済んだのかもしれない。私がセンサーに気づいていなかったら。あのフェンスについていた赤いものに、私が気づいていなければ…!
「はぁ。お腹空いた。茜は死ぬ訳ないよね。とりあえず朝ごはん食べよう。」
朝食は、昨日の朝茜が作ってくれたバナナサンドにすることにした。バナナは1つしか無かった。
「頂きます。」
牛乳を片手に、サンドイッチにかぶりつく。そしてそれと同時に涙が溢れ出す。
「違う…茜の味にならない」
こんなもの作ったせいで、茜を思い出して泣き出してしまう。これ以上食べる気にはなれなかったが、勿体ないから全部食べた。
「優様、おはようございます。ご気分はいかがですか?」
「うーん…最悪ね。…考えてしまうのよ。あの時私が酔い止めを飲んでなくて酔って一日が無駄になってしまっていたら、捜査は始まらず、もう少し依頼人について調べられたかもしれないのに、私が風邪でも引いていたら良かったのに…って。」
「そうですか。ご自分ばかり責めないでくださいね。そうそう、今日CPAに陥ったが一命は取り留めた、との報告がありました。それと、今日はお休みになってください。今回受けた依頼に関しましては、精神的負荷も考慮致しまして、知識員の捜査官に引き継ぎを頼みましたので、ご安心ください。」
「そう、ありがとう」
「では失礼致します。」
宮沢さんはそう言うと事務所から出ていった。
 休みを貰ったとしても、やることは無かった。茜のお見舞いに行こうと思ったけど、焦っていたのと動揺していたので、茜がどこの病院に搬送されたのか、分からない。
「このまま家で寝るのもいいわね。でも、寝たらどうせ茜の夢見ちゃうしなー」
考えに考えた結果、取り敢えず近くの山登りに行くことにした。
「最近運動してないし、いい運動になるかな。近くの山は…あ、たしか『美ヶ峰』って山があったわよね。意外と低いし、私でも登れるかも。」
しかし、自転車に乗って行く気分でもないし、電車はこの辺通ってないしと考えたけど、やはり歩く以外の方法が思いつかなかったので、歩いていくことにした。
「意外と遠いわね…。まさか2時間かかるとは」
ずっと歩いていたせいで、足が棒のようだ。まだ時間もあったし、取り敢えず近くの喫茶店に入る。
「いらっしゃいませー。ご注文はどうしますか?」
「うーん…。」
あ、こんな田舎町にもタピオカってあるのね。意外だわ。
「じゃー、タピオカ抹茶ラテで。」
「はい、かしこまりましたー」
前に都会に行った時に1度だけタピオカミルクティーを飲んでなかなか美味しくてハマってしまった。しかし、地元にはタピオカがなかなか売っていなくて、ここに事務所を置いてからやっと見つけられたわ!
「お待たせ致しました、タピオカ抹茶ラテです」
おー!美味しそう。LIMEで茜に送ろう…。ついでに葵にもね。この前電話して以来、話してなかったし。
「いただきまーす」
普通より太めのタピオカ専用のストローをさして飲み始める。最初は何故かタピオカが出てこなかったけど、だんだん出てくるようになった。
「おー!凄いもちもちしてて美味しー」
ここの喫茶店、あまり人がいないし、この辺の人は私のことを知っているから結構騒げる。まあだからといって騒いでいいってわけじゃないんだけど。
「ふう。そろそろ出ようかな」
その時だった。空間を劈くような音が鳴り響いた。まさかこれって銃声?
「動くな!ここの店長を出せ」
???何今の
「ひぃっ!は、はい、ただいまっ!!」
あーもう、なんで呼んじゃうのよーっ!ここは私が出るしかないかなー…。やだなー、怖い…。
「はい。私が店長ですが?」
「金を出せ。そしてタピオカも全てな。」
ちょっとまって、可愛いな!タピオカ!?
「は、はい?」
「モタモタするんじゃねぇ!早くしろ!」
そう言うとタピオカ強盗が店長に銃を突きつける。
「は、はい。金です。」
「タピオカはどうした!」
あら、まずいねーこれ。ただの可愛げのあるタピオカ強盗かと思ったら、真面目に殺そうとしてるなー。よし、取り敢えず出よう。
「あの…」
「客は動くな。撃つぞ」
「いやその、と、トイレ…」
「は?そんなもの我慢しろ」
いったー!痛いよもう!ほっぺかすっちゃったよ銃弾が。うーん、トイレ作戦ダメか…。色じがけは嫌だなー。あっ…(私に色気なんて無いか)。
「おいそこのガキ、殺されたいか?何度も言わせるなよ!?」
「おじさんひどーい!か弱い女の子に銃向けるなんて…。酷いよ…。」
「は?お、おい待てよ。泣くなって…」
はい引っかかった!やっぱり男って、女の涙には弱いのねー。それに私はちょっとロリっ子要素あるからねー(傷つくからどの辺がとは言わないけどー)。タピオカ強盗が近づいてきたと同時に、タピオカ強盗のお腹に蹴りを入れる。
「うぉぁっ!!」
物凄い叫び声とともにタピオカ強盗は倒れていく。実は私、空手経験者です。
「きゃっ!」
蹴った時にスカートが!恥ずかしい…。
「ありがとうございます、ISDの方。」
「優でいいですよ?それにタメ口でお願いします」
「そう?じゃあ遠慮なく。ありがとうね、優ちゃん」
「なんか優ちゃんって呼ばれるの久しぶりで嬉しいです」
店長さんが警察に通報し、すぐに犯人を引き渡す。そのまま安泰かと思ったその時だ。
「店長さんよ、お前には死んでもらう」
その言葉とともに銃声が鳴り響き、血液が飛び散った。
「店長さん!?」
店長の血を見た瞬間、嫌な記憶が湧き上がる。茜の出血した姿、失血死しそうになった茜、苦しそうな茜の姿。一気に恐怖が襲いかかり、目の前が揺れ始める。涙が頬を濡らし、その場に倒れ込む。
「大丈夫ですか!?」
警察が店長を救急隊に搬送させ、私には水をくれた。とにかく早く家に帰りたい気持ちでいっぱいだった。
「家まで送らせて頂きます」
警察の方がそう言ってくれたから、言葉に甘えて送ってもらった。家に帰り茜の匂いを思い出すと、それと同時に血液の飛び散った光景まで思い出す。
「…気持ち悪い」
吐き気がする。急いでトイレに駆け込み、あまりの気持ち悪さに吐いた。その場に座り込み、吐き続けた。自分でも恐ろしいが、15分以上その場に座り込み、吐き終わったと思うとまた吐いてしまう。
「気持ち悪い…。茜…助け…」
吐き続けたせいか体力を消耗してしまった。その場に倒れ、そのまま寝た。お腹が少し痛かったけど、気にせずに寝てしまった。

「優様!大丈夫ですか、優様!」
宮沢さんの声で起きた。その時はもう、あの光景は忘れていた。
「あれ、宮沢さん…。」
「大丈夫ですか?」
「ええ。だいぶ吐いてしまったし、お腹は空いていますが。」
「お医者様を呼びましたので、もう大丈夫ですよ。」
医者の診断を受け、ある病気だと言われた。
「これは、血液恐怖症ですね。」
「血液恐怖症?」
「はい。優様の場合、気絶や嘔吐といった症状が出ましたので、重度ですね。治し方は特にありませんが、アロマセラピーの効果が出ると思います。毎日この『ピアニジャスミン』というアロマを使うと、少し和らぐと思います。」
「はい、ありがとうございます」
とにかく安心しかなかった。このまま探偵の仕事が出来ないと思っていたけど、そんなことも無いようだ。

 あれ、寝てしまった?まあでも疲れていたし、良しとするか。LIMEを見ると、友達から不在着信が50件も来ていた。気になって電話してみた。
「あ、もしもし葵?どうしたの?」
「『どうしたの?』じゃないよ!大丈夫!?この前強盗がどうのってニュースでやってたから」
「あー、大丈夫だよ。でも、その時血を見たら気持ち悪くなっちゃって、お医者さんに診てもらったら、血液恐怖症だってさ」
「あー、私もだよ。大丈夫だよ。アロマセラピーとか勧められた?」
「うん、まあ」
「そっかー。あ、そうだ。私司法試験受かった!だから弁護士になったよー!」
「おー!おめでとう!うちで働いてよ!」
「勿論そのつもりだよ?もうちょいでつくから待っててね」
「早いなー…」
「じゃあまた。電車きた」
「はいはーい」
まさか葵と仕事できるとはね。それなら心配ないや。あれ、また電話?
「はい」
「あの乙宮 優様でしょうか?」
「?はい、そうですけど」
「桜第3病院のものです。弟様が…乙宮 茜様がお亡くなりになりました」
「…え?」
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