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一章出会いと旅立ち
第十三話:奇妙なる吸血鬼
しおりを挟むカルチャーブリザードを倒し、氷の部屋を抜け出したゼクス、ラクス、アマルフィは、城の深部へとさらに進んでいた。試練を乗り越えるたびに、彼らの意志は強くなっていくが、敵もますます強大になっていることを感じていた。
ラクス「なんだか妙な気配がするわ…時間が歪んでる…?」
アマルフィは立ち止まり、周囲を見渡した。目に見える景色は、まるで夢の中のようにぼんやりしていて、現実感が薄れていく。
アマルフィ「この感じ…現実なの? 何かが私たちの感覚を狂わせているみたい。」
ゼクスも剣を握りしめ、警戒を強めた。
ゼクス「何かが起こっている。これはただの幻覚じゃない。強力な力が働いている…」
突然、目の前に薄い霧が立ち込め、その中から一人の男の姿が現れた。彼の姿は優雅で、黒いマントを羽織り、目には奇妙な赤い光が宿っていた。彼はゆっくりと歩み寄り、薄い笑みを浮かべて三人に話しかけた。
???「ようこそ、私の領域へ。お前たちがここまで来るとは思わなかったよ。」
その男は、どこか不思議な魅力を放ちながら、ゆっくりと頭を下げた。
ブルードラキュラ「我が名はブルードラキュラ。私はガイム様の下僕であり、この不思議な空間を支配する者だ。お前たちは、ここで永遠にさまようことになる。」
ラクスは剣を構えながら、その奇妙な男に対峙した。
ラクス「ブルードラキュラ…この場所が何であろうと、私たちは進むしかないのよ。あなたを倒して、さらに前へ進む!」
ブルードラキュラは薄く笑い、手を広げた。
ブルードラキュラ「倒す? それは面白い。だが、この場所ではお前たちの常識は通じない。ここは現実でも幻でもない。時間も空間も、すべてが私の思いのままだ。」
ゼクスはブルードラキュラの言葉に一瞬困惑したが、すぐに自分を取り戻し、剣を握りしめた。
ゼクス「この奇妙な空間がどうであれ、俺たちは止まるわけにはいかない。」
しかし、その瞬間、ゼクスの足元が突然崩れたように見えた。彼は一瞬バランスを失い、目の前の景色が歪んだように感じた。
アマルフィ「ゼクス、大丈夫!?」
ゼクスは立ち上がりながら、自分の周囲を確認した。だが、景色は相変わらず曖昧で、現実感が希薄だった。
ブルードラキュラ「どうだ、私の世界は楽しめているか?お前たちは次第に自分が何をしているのかさえ、わからなくなる。」
ラクスは焦りの表情を浮かべながら、ゼクスに叫んだ。
ラクス「ゼクス、しっかりして!ここは変だわ。何かが私たちの意識を操作してる!」
ブルードラキュラはゆっくりと近づきながら、再び口を開いた。
ブルードラキュラ「ここは私の思うままに操れる空間だ。お前たちは、次第に自分が何をしようとしているのかさえ、忘れてしまうだろう。さあ、この幻想に溺れ、すべてを忘れてしまうがいい。」
ゼクスは目を閉じ、心を集中させた。笑いの剣が微かに輝き始め、その光が幻想の中で小さな希望となった。
ゼクス「俺は…俺たちは、絶対に忘れない。この剣がある限り、何が現実かを見失うことはない!」
その瞬間、ゼクスの剣が強く輝き、幻想の空間がわずかに揺らぎ始めた。
ブルードラキュラ「何…!?この光は…!」
ゼクスはその光を頼りに、剣をブルードラキュラに向けて突進した。だが、その瞬間、彼の姿が消え、再び幻想がゼクスを取り囲んだ。
ブルードラキュラ「ふふふ…この空間では私に触れることはできない。お前たちがどれだけ抗おうとも、すべては私の手の中だ。」
ラクスもアマルフィも、その奇妙な空間に苦しんでいたが、ゼクスの光に導かれ、何とか現実を取り戻そうとしていた。
アマルフィ「ゼクスの剣の光が…現実を取り戻すカギかもしれない!」
ラクス「そうね。私たちも、その光を頼りに進むしかないわ!」
ゼクスは剣をさらに強く握りしめ、光を増すように集中した。ブルードラキュラの幻想に飲み込まれそうになりながらも、ゼクスは笑いの剣の力を信じ、前へ進んだ。
ゼクス「俺たちはこの幻想に負けない!この剣の光が、すべてを打ち破るんだ!」
その言葉と共に、笑いの剣がさらに強く輝き、幻想の世界が崩れ始めた。ブルードラキュラは驚いた表情を見せ、後退した。
ブルードラキュラ「この剣が…私の力を打ち破るだと…!?」
ゼクスは一気に間合いを詰め、剣を振りかざした。
ゼクス「これで終わりだ、ブルードラキュラ!」
ゼクスの一撃がブルードラキュラを捉え、その幻想の力が完全に消え去った。ブルードラキュラはその場に崩れ落ち、消えていった。
ブルードラキュラ「ガイム様…私の力が…ここで終わるとは…」
彼が完全に消え去ると、部屋には再び現実の感覚が戻り、三人は静けさの中で息を整えた。
ゼクスは剣を鞘に収め、深く息をついた。
ゼクス「今のは…奇妙な戦いだった。」
ラクス「でも、あんたの剣のおかげで現実を取り戻せたわ。」
アマルフィは微笑んで頷いた。
アマルフィ「この剣の力が、私たちの道を切り開いてくれる。次の敵も、きっと打ち破れるわ。」
三人は再び前に進み始めた。彼らの旅はまだ続いているが、今、彼らは確信していた。笑いの剣の力を信じて、ガイムとの決戦へと進んでいくのだった。
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