鬼の王と笑わない勇者

モンスターラボ

文字の大きさ
上 下
10 / 19
一章出会いと旅立ち

第十話:毒の戦場

しおりを挟む
アンゴラスの放つ黒い霧が一層濃くなり、ゼクス、ラクス、アマルフィはその毒に苦しみながらも戦い続けていた。毒はじわじわと彼らの体力を奪い、動きが鈍くなっていく。

アンゴラス「この毒に蝕まれ、次第に力を失うお前たちを見ていると、実に愉快だ。」

ゼクスは剣を握りしめ、毒の霧の中で懸命に立ち上がろうとしていた。しかし、呼吸するたびに体内に毒が入り込み、頭が重く感じられた。

ゼクス「くっ…笑いの剣の力を引き出せなければ、俺たちはこのままやられてしまう…!」

ラクスはルーンアルバトロスを振るい、なんとか攻撃を試みていたが、アンゴラスの鎧は硬く、毒の影響で力も十分に出せない。

ラクス「このままじゃ、全員やられちゃう…ゼクス、なんとかして!」

アマルフィもまた毒の霧に苦しみながら、アポストロフを引き絞り、再び水の矢を生成して放った。彼女の水の矢は霧を少しだけ浄化するものの、アンゴラスの力には歯が立たなかった。

アマルフィ「私の水の力じゃ、毒の広がりを止められない…!」

アンゴラスは冷笑を浮かべながら、さらに霧を広げ、三人を追い詰めていく。

アンゴラス「愚かな人間ども、ガイム様の前にたどり着けると思ったのか。ここで終わりだ。」

ゼクスは自分の中で焦りを感じつつも、どうにかして笑いの剣の力を引き出す方法を模索していた。だが、未だに笑う理由が見つからない。彼は過去の悲劇を思い出し、復讐心だけでここまで戦い続けてきたが、心のどこかで迷いがあった。

ゼクス(俺はなぜ笑えないのか…笑いの剣を引き出すために必要なものは一体何だ…?)

その時、ラクスがゼクスに向かって声をかけた。

ラクス「ゼクス、あんたが笑わなくても、私たちがいる。私たちは一緒に戦っているのよ!だから、一人で抱え込まないで!」

その言葉に、ゼクスは一瞬驚いた表情を見せた。

ゼクス「一人で…抱え込むな…?」

アマルフィもゼクスに向かって叫んだ。

アマルフィ「そうよ、ゼクス!私たちは仲間よ!あんたが笑えなくても、私たちが支えているんだから、剣に頼らずに、私たちの力を信じて!」

ゼクスは二人の言葉を聞きながら、自分がずっと一人で背負い込んでいたことに気づいた。復讐心だけで突き進むことが、いつの間にか自分を孤立させていたのだ。

ゼクス(俺は…一人で戦っていたつもりだった。でも、ラクスもアマルフィも俺を支えてくれていた。)

その瞬間、ゼクスの心の中に何かが変わり始めた。彼は深い呼吸をし、剣を握り直した。笑いの剣が再び微かに光り始め、次第にその光は強くなっていった。

ゼクス「ありがとう、ラクス、アマルフィ。俺は一人じゃなかった。みんながいるから、俺は笑えるんだ。」

笑いの剣がついに輝きを増し、ゼクスの手に力を与えた。

アンゴラス「何だ…その光は…!」

ゼクスは剣を構え直し、笑いの剣の真の力を感じ取った。

ゼクス「笑いの剣…お前は俺に力を貸してくれる。今こそ、この毒を打ち破る!」

ゼクスは剣を振り上げ、アンゴラスに向かって突進した。剣が輝きを放ちながらアンゴラスの鎧に当たった瞬間、鎧が割れ、その毒の力が弱まっていった。

アンゴラス「何…!?この剣は…!」

ゼクスの一撃によってアンゴラスの毒が霧散し、周囲の毒の霧も徐々に消えていった。

ラクス「ゼクス、やったわ!」

アマルフィ「これで毒はもう広がらない!」

ゼクスはそのまま笑いの剣を振りかざし、アンゴラスに最後の一撃を加えた。剣がアンゴラスの鎧を貫き、その巨大な体は崩れ落ちていった。

アンゴラス「ガイム様…私は…ここで…終わるのか…」

アンゴラスはその場に倒れ込み、動かなくなった。

毒が消え去り、ホールには静寂が戻った。ゼクスは剣を鞘に収め、深い息をついた。

ラクス「ゼクス、ついに笑いの剣の力を引き出したのね。」

ゼクスは微笑んで答えた。

ゼクス「ああ、俺は一人じゃない。お前たちがいる限り、俺は笑いを取り戻せる。」

アマルフィは満足そうに頷いた。

アマルフィ「これでガイムに立ち向かう力が整ったわね。でも、まだ油断はできない。次の敵もきっと強敵よ。」

ゼクスは剣を握りしめ、次なる試練に向けて決意を新たにした。

ゼクス「そうだな。俺たちはまだここで止まるわけにはいかない。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー
ファンタジー
魔法!努力!勝利!仲間と成長する王道ファンタジー! チート、ざまぁなし! 努力と頭脳を駆使して武器×魔法で最強を目指せ! 「こんなあっさり死んだら勿体ないじゃん?キミ、やり残したことあるでしょ?」 神様にやり直すチャンスを貰い、とある農村の子アルージェとして異世界に転生することなる。 鍛治をしたり、幼馴染のシェリーと修行をして平和に暮らしていたが、ある日を境に運命が動き出す。 道中に出会うモフモフ狼、男勝りなお姉さん、完璧メイドさんとの冒険譚! 他サイトにて累計ランキング50位以内獲得。 ※カクヨム、小説家になろう、ノベルピアにも掲載しております。 只今40話から70話辺りまで改修中の為、読みにくいと感じる箇所があるかもしれません。 一日最低1話は改修しております!

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~

秋鷺 照
ファンタジー
 強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...