鬼の王と笑わない勇者

モンスターラボ

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一章出会いと旅立ち

第十話:毒の戦場

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アンゴラスの放つ黒い霧が一層濃くなり、ゼクス、ラクス、アマルフィはその毒に苦しみながらも戦い続けていた。毒はじわじわと彼らの体力を奪い、動きが鈍くなっていく。

アンゴラス「この毒に蝕まれ、次第に力を失うお前たちを見ていると、実に愉快だ。」

ゼクスは剣を握りしめ、毒の霧の中で懸命に立ち上がろうとしていた。しかし、呼吸するたびに体内に毒が入り込み、頭が重く感じられた。

ゼクス「くっ…笑いの剣の力を引き出せなければ、俺たちはこのままやられてしまう…!」

ラクスはルーンアルバトロスを振るい、なんとか攻撃を試みていたが、アンゴラスの鎧は硬く、毒の影響で力も十分に出せない。

ラクス「このままじゃ、全員やられちゃう…ゼクス、なんとかして!」

アマルフィもまた毒の霧に苦しみながら、アポストロフを引き絞り、再び水の矢を生成して放った。彼女の水の矢は霧を少しだけ浄化するものの、アンゴラスの力には歯が立たなかった。

アマルフィ「私の水の力じゃ、毒の広がりを止められない…!」

アンゴラスは冷笑を浮かべながら、さらに霧を広げ、三人を追い詰めていく。

アンゴラス「愚かな人間ども、ガイム様の前にたどり着けると思ったのか。ここで終わりだ。」

ゼクスは自分の中で焦りを感じつつも、どうにかして笑いの剣の力を引き出す方法を模索していた。だが、未だに笑う理由が見つからない。彼は過去の悲劇を思い出し、復讐心だけでここまで戦い続けてきたが、心のどこかで迷いがあった。

ゼクス(俺はなぜ笑えないのか…笑いの剣を引き出すために必要なものは一体何だ…?)

その時、ラクスがゼクスに向かって声をかけた。

ラクス「ゼクス、あんたが笑わなくても、私たちがいる。私たちは一緒に戦っているのよ!だから、一人で抱え込まないで!」

その言葉に、ゼクスは一瞬驚いた表情を見せた。

ゼクス「一人で…抱え込むな…?」

アマルフィもゼクスに向かって叫んだ。

アマルフィ「そうよ、ゼクス!私たちは仲間よ!あんたが笑えなくても、私たちが支えているんだから、剣に頼らずに、私たちの力を信じて!」

ゼクスは二人の言葉を聞きながら、自分がずっと一人で背負い込んでいたことに気づいた。復讐心だけで突き進むことが、いつの間にか自分を孤立させていたのだ。

ゼクス(俺は…一人で戦っていたつもりだった。でも、ラクスもアマルフィも俺を支えてくれていた。)

その瞬間、ゼクスの心の中に何かが変わり始めた。彼は深い呼吸をし、剣を握り直した。笑いの剣が再び微かに光り始め、次第にその光は強くなっていった。

ゼクス「ありがとう、ラクス、アマルフィ。俺は一人じゃなかった。みんながいるから、俺は笑えるんだ。」

笑いの剣がついに輝きを増し、ゼクスの手に力を与えた。

アンゴラス「何だ…その光は…!」

ゼクスは剣を構え直し、笑いの剣の真の力を感じ取った。

ゼクス「笑いの剣…お前は俺に力を貸してくれる。今こそ、この毒を打ち破る!」

ゼクスは剣を振り上げ、アンゴラスに向かって突進した。剣が輝きを放ちながらアンゴラスの鎧に当たった瞬間、鎧が割れ、その毒の力が弱まっていった。

アンゴラス「何…!?この剣は…!」

ゼクスの一撃によってアンゴラスの毒が霧散し、周囲の毒の霧も徐々に消えていった。

ラクス「ゼクス、やったわ!」

アマルフィ「これで毒はもう広がらない!」

ゼクスはそのまま笑いの剣を振りかざし、アンゴラスに最後の一撃を加えた。剣がアンゴラスの鎧を貫き、その巨大な体は崩れ落ちていった。

アンゴラス「ガイム様…私は…ここで…終わるのか…」

アンゴラスはその場に倒れ込み、動かなくなった。

毒が消え去り、ホールには静寂が戻った。ゼクスは剣を鞘に収め、深い息をついた。

ラクス「ゼクス、ついに笑いの剣の力を引き出したのね。」

ゼクスは微笑んで答えた。

ゼクス「ああ、俺は一人じゃない。お前たちがいる限り、俺は笑いを取り戻せる。」

アマルフィは満足そうに頷いた。

アマルフィ「これでガイムに立ち向かう力が整ったわね。でも、まだ油断はできない。次の敵もきっと強敵よ。」

ゼクスは剣を握りしめ、次なる試練に向けて決意を新たにした。

ゼクス「そうだな。俺たちはまだここで止まるわけにはいかない。」
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