上 下
9 / 9
一章出会いと旅立ち

第九話:進撃の決意

しおりを挟む


ガイウスとの激しい戦闘が終わり、ゼクス、ラクス、アマルフィは深い息を整えていた。ガイウスのプラズマの強大な力を打ち破ったものの、その戦いは三人に大きな疲労を与えていた。ホールに静寂が戻る中、彼らは次の行動を考え始めた。

ラクス「さすがに、ガイウスの力には驚いたわ…でも、まだこれで終わりじゃないはずよ。」

ゼクスは剣を鞘に収め、重々しい表情で頷いた。

ゼクス「そうだな。ガイムの本拠地にたどり着くまでは、さらに強大な敵が待っているだろう。」

アマルフィはアポストロフを見つめながら、深く考え込んでいた。

アマルフィ「私たちの力でここまで来れたのはいいけれど…本当にガイムを倒せるのかしら?」

ラクスはアマルフィに近づき、力強く言った。

ラクス「大丈夫よ、アマルフィ。あんたの弓がなければ、あのガイウスだって倒せなかったんだから。それに、ゼクスもまだ笑いの剣の真の力を引き出していないんでしょ?」

ゼクスは少し無言で考え込んだ後、静かに頷いた。

ゼクス「確かに、俺はまだ笑いの剣の本当の力を引き出せていない。でも、俺には笑う理由がわからない…それが最大の壁だ。」

アマルフィはゼクスに歩み寄り、彼の目を見つめながら言った。

アマルフィ「ゼクス、私たちが一緒にいる限り、必ず笑う理由が見つかるわ。私たちは仲間よ。どんな困難が待っていても、共に進むことができる。」

ゼクスはその言葉に少しだけ表情を和らげた。

ゼクス「ありがとう、アマルフィ。」

三人はホールを後にし、城の奥へと進み始めた。道はさらに険しく、冷たい空気が漂っていた。壁には古い魔法のルーンが刻まれており、どこか不気味な気配が満ちていた。

ラクス「この城の奥には何が待っているのかしら…もうすぐガイムの本拠地に近づくはずだけど。」

アマルフィは周囲を警戒しながら、進むべき道を考えていた。

アマルフィ「ガイウスを倒した今、ガイムも私たちの存在に気づいているはずよ。何かしらの罠が仕掛けられているかもしれないわ。」

ゼクスは剣を握りしめながら、さらに警戒を強めた。

ゼクス「これまでの敵とは違う、真の力を持つ敵が現れるかもしれない。気を抜くな。」

三人は言葉少なに進んでいたが、その時、遠くから奇妙な音が聞こえてきた。金属が擦れるような音と、低く唸る声が徐々に近づいてきた。

ラクス「何か来るわ…!」

ゼクスは剣を構え、アマルフィはすぐにアポストロフを引き絞った。突然、目の前の床が激しく揺れ始め、地面が裂けるようにして巨大な扉が現れた。

扉がゆっくりと開き、中からは巨大な鎧をまとった騎士のような存在が現れた。全身が黒く輝く鎧に包まれ、背には巨大な斧を背負っていた。目には鋭い光が宿っており、口元からは黒い霧が漏れ出していた。

アマルフィ「この気配…ただの敵じゃない…!」

謎の騎士「貴様ら、ここから先へ進むことは許されぬ。私はアンゴラス、毒の使い手だ。ガイム様の命により、ここで終わりだ。」

アンゴラスは一言も発することなく、すぐに巨大な斧を振り上げてゼクスたちに襲いかかってきた。ゼクスはその攻撃を避け、剣で応戦しようとしたが、斧の一撃はあまりにも重く、簡単には防げなかった。

ゼクス「この力…!」

ラクスはルーンアルバトロスを振りかざし、素早くアンゴラスの横を斬りつけたが、鎧が硬すぎて傷一つつけられなかった。

ラクス「何て硬さなの…!」

アマルフィはすかさずアポストロフを構え、水の矢を生成して放った。矢はアンゴラスの鎧に命中したが、その体勢を崩すことはできなかった。

アマルフィ「まずい…この鎧、何か特殊な力で強化されてる…!」

さらに、アンゴラスが斧を振りかざすたびに黒い霧が広がり、周囲に毒の気配が充満していった。ゼクスはその毒を吸い込まないようにしながら剣を構えるが、動きが徐々に鈍っていくのを感じていた。

ゼクス「これは…毒か…!」

アンゴラスはその隙を見逃さず、ゼクスに向かって斧を振り下ろそうとした。ゼクスは必死に避けるが、毒の影響で動きが鈍くなり、斧がかすかに彼の肩を捉えた。

ゼクス「くっ…!」

ラクス「ゼクス、下がって!毒が回っているわ!」

アマルフィは再びアポストロフを引き絞り、水の矢を生成してアンゴラスに放った。水の力は毒の霧を少しだけかき消したが、それでもアンゴラスの鎧は硬く、その力を弱めるには至らなかった。

アマルフィ「どうすれば…?」

アンゴラスは冷笑を浮かべながら、さらに毒を拡散させ、三人を追い詰めていった。

アンゴラス「毒に侵されるがいい。お前たちはここで終わりだ。」

ゼクスは剣を握りしめ、必死に立ち上がろうとするが、毒の影響で力が出ない。ラクスもアマルフィも毒の霧に苦しみながら必死に戦っていたが、アンゴラスの強大な力の前に徐々に追い詰められていた。

ラクス「ゼクス、このままじゃ…!」

ゼクスは自分の中で笑いの剣の力を引き出そうとするが、まだ笑う理由が見つからず、その力は封印されたままだった。

ゼクス「笑いの剣…今こそ、俺に力を…!」

その時、ゼクスの剣が微かに輝き始めた。しかし、それはまだ完全な光ではなかった。ゼクスはその輝きを頼りに、もう一度アンゴラスに向かって突進した。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

運命は空回った

下菊みこと
恋愛
ざまぁはありません。ただただ空回って修正するだけです。 小説家になろう様にも投稿しています。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

100人ヤらないとイけません!?

いのっち
恋愛
暗黒使徒学園に通う一年西園寺テスラは学校で99回告白して全敗していた!テスラは100回目では絶対成功させたいと冥王殿にお参りに行った。するとその冥王殿の神様が出てきて、モテ薬を作ってあげる代わりの条件として100人とヤれと言ってきた!さらに、その100人には一人たりとも惚れられてはいけないと言う条件付き、、、こんな無理ゲーの条件テスラは達成でき、無事モテ薬を手に入れられるのか!そんなテスラの青春が今始まる、、、

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

隠れた君と殻の僕

カギノカッコ
ミステリー
適正テストの結果、勇と仁は超能力者であると診断された。中学卒業後、二人は国の命令により超能力者養成学校のある島へと移送される。だが入学したその日に、仁は忽然と姿を消してしまう。学校側は「彼は再検査の結果、適性がないことが判明したため島を出た」というが、精神感応能力のある勇は、仁が島内にいると感じていた。仁はなぜ消えたのか。学校はなぜ隠すのか。親友を探すミステリー。

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

処理中です...