6 / 19
一章出会いと旅立ち
第六話弓使いアマルフィ
しおりを挟むゼクスとラクスは、ガルガイダとの死闘を終えて次の目的地へと向かっていた。静かな風が彼らの間を吹き抜け、少しだけ休息を取ることができた。だが、二人の表情にはまだ緊張が残っていた。
ラクス「ゼクス、あのガルガイダのこと…本当に倒せたと思う?」
ゼクス「分からない。だが、あの力は今までの敵とは違っていた。アイスマン親衛隊の一人というだけのことはあるだろう。」
ラクスは少し考え込むように前を見据えた。
ラクス「アイスマン親衛隊ってことは、ガイムの側近…次はもっと強いのが来るかもしれないわね。」
ゼクスは頷き、周囲に警戒しながら進んでいった。
二人がしばらく進んでいると、遠くから足音が聞こえてきた。ゼクスは剣を手に取り、警戒を強めたが、やがて現れたのは一人の女性だった。彼女は肩に弓を背負い、険しい表情で森の中を歩いていた。
ラクス「誰?」
女性は二人に気づくと、手を上げて挨拶の代わりとした。彼女は体に傷を負っているようで、少し疲れた様子だったが、その瞳には鋭い光が宿っていた。
女性「あなたたち、ここで何をしているの?」
ゼクス「俺たちは旅をしている。お前は?」
女性は少しだけため息をつき、肩の弓を下ろした。
女性「私の名前はアマルフィ。ガイムの配下に家族を殺されて…復讐のために旅をしている。」
その言葉を聞いて、ラクスはすぐにアマルフィに共感を示した。
ラクス「私たちも同じよ。ガイムを倒すために旅をしている。もしかして、あんたもガイムの手下と戦ってきたの?」
アマルフィは黙って頷き、肩に背負った弓を指差した。
アマルフィ「そうよ。何度か奴らの手下に狙われたけど、運良く生き延びた。でも、アイスマン親衛隊には勝てなかった…あいつらは強すぎる。」
ゼクス「アイスマン親衛隊と…戦ったのか。」
アマルフィは頷き、少し苦しそうに顔をしかめた。
アマルフィ「そうよ。彼らの一人と戦ったけど、私の力じゃ勝てなかった。でも、どうしてもガイムを倒したいから…諦めたくない。」
ラクスはゼクスに目を向けた。
ラクス「ゼクス、彼女と一緒に旅をするのはどう?」
ゼクスは少し考えたが、彼もまたアイスマン親衛隊の恐ろしさを知っていた。アマルフィがその経験を持っているなら、仲間として頼りになるかもしれない。
ゼクス「いいだろう。だが、俺たちも危険な戦いが待っている。それでもいいなら一緒に来い。」
アマルフィは一瞬考えたが、すぐに頷いた。
アマルフィ「もちろん。私はもう引き返せない。」
こうして、三人は共に旅を続けることとなった。アマルフィの加わったことで、これまで以上に強力なチームが形成されつつあったが、同時に彼らの前にはさらなる危険が待ち受けていた。
その夜、三人は森の中に野営を張り、火を囲んで休んでいた。ゼクスは静かに剣を見つめ、ラクスとアマルフィは少し距離を取って話していた。
アマルフィ「ゼクスって、どんな人?」
ラクス「彼は…笑わないのよ。だから、あの笑いの剣の力を完全には引き出せていないの。」
アマルフィは驚いた表情でゼクスを見た。
アマルフィ「笑わないの?どうして?」
ラクスは肩をすくめて答えた。
ラクス「彼自身も理由は分かっていないみたい。でも、それでも剣の力は少しずつ目覚めている。」
アマルフィは深く頷きながら、ゼクスの背中を見つめた。
アマルフィ「笑いの剣…笑えない者がその剣を持つなんて、皮肉ね。でも、彼にはきっと何かがあるんだと思う。」
ラクスは微笑み、アマルフィに同意した。
ラクス「そうね。きっと彼が笑う時が来たら、剣の真の力が発揮されるんだと思うわ。」
夜が深まる中、ゼクスは剣を握りしめながら一人、考えていた。ガルガイダとの戦いを通じて、彼は自分が笑えない理由を少しずつ理解し始めていたが、それでもまだ全てを理解しているわけではなかった。
ゼクス(笑う…俺は一体、いつ笑うことができるんだ?)
そんな中、森の奥から再び不気味な気配が漂い始めた。ゼクスはその気配にすぐに気づき、剣を手に取った。
ゼクス「来るぞ…!」
アマルフィとラクスもすぐに立ち上がり、それぞれの武器を構えた。森の暗闇の中から、再び恐ろしい存在が姿を現そうとしていた――。
10
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

望んでいないのに転生してしまいました。
ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。
折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。
・・と、思っていたんだけど。
そう上手くはいかないもんだね。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる