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一章出会いと旅立ち
第五話:呪いの刃
しおりを挟むゼクスとラクスはガルガイダの猛攻をかわしながら、なんとか立て直そうとした。ガルガイダの体中に無数にある口が、唸り声と不気味な笑い声を響かせ、二人を追い詰めていた。
ガルガイダ「貴様らに勝ち目はない。ガイム様の前にたどり着くことなど、不可能なのだよ。」
ゼクスは歯を食いしばりながら、ガルガイダを見据えた。
ゼクス「…俺が笑えなくても、この剣が俺の意志を裏切ることはない。」
ガルガイダは再び嘲笑を浮かべ、ゼクスに向けて体中の口から黒いエネルギーを放ち始めた。
ガルガイダ「笑いの剣など役に立たん。笑いがない者には、その力を引き出すことはできない!」
ゼクスは必死に防御しながらも、攻撃の機会をうかがった。ラクスは素早く動き、ガルガイダの攻撃を引き受けながらゼクスを援護する。
ラクス「ゼクス、今は防御ばかりしていても無駄よ。あんた、攻めに転じなきゃ!」
ゼクスは剣を構え直し、少しだけ深呼吸をした。ガルガイダの言葉に動揺しないように心を保ちながら、彼は自分の内なる感情に向き合っていた。
ゼクス「笑わなくても…この剣を振るう理由がある。」
その瞬間、ゼクスの剣が再び微かに輝き始めた。彼の決意が、笑いの剣に少しずつ反応を与えているのかもしれなかった。
ガルガイダ「ほう、まだ力を引き出そうとしているか?だが、それでは遅すぎる!」
ガルガイダは再び黒い霧を放ち、今度は周囲を覆うように広がっていった。その霧は重く、動きが鈍くなる呪いの力を持っていた。
ゼクス「くっ…!」
ラクス「ゼクス、あの霧に触れちゃダメよ!」
ラクスはゼクスのそばに駆け寄りながら、ガルガイダに向かって剣を振り下ろした。彼女のルーンアルバトロスは強力だが、ガルガイダの体中の口が次々に彼女の攻撃を受け止めていた。
ガルガイダ「そんな力では俺には通じない。貴様らの運命はここで終わりだ!」
その時、ゼクスが剣を振り上げ、ガルガイダの隙をついて一気に突進した。剣が輝きを増し、一瞬、ガルガイダの動きが鈍った。
ゼクス「今だ!」
ゼクスは全力で笑いの剣を振り下ろし、ガルガイダの体中の口を切り裂こうとした。しかし、ガルガイダの呪いの力が再びゼクスを阻んだ。剣が体に食い込む直前で、ガルガイダが反撃を開始する。
ガルガイダ「貴様、しぶとい奴だ。だが、この呪いの刃で消し飛ばしてやる!」
ガルガイダは口の一つから、黒い刃を生成し、ゼクスに向けて放った。刃はゼクスに向かってまっすぐ飛び、彼はそれを受け止めたが、衝撃で吹き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。
ラクス「ゼクス!」
ゼクスは苦しそうに立ち上がりながら、剣を握りしめた。その時、ガルガイダが笑みを浮かべながら再び近づいてきた。
ガルガイダ「終わりだ。お前は笑うこともできず、この剣の力を引き出せないまま死ぬ。」
ゼクスは傷つきながらも立ち上がり、ガルガイダに向かって剣を構え直した。
ゼクス「まだだ…俺はまだ終わらない。」
その瞬間、ゼクスの剣が再び光り始めた。それは微かな光だったが、確実に何かが変わりつつあった。
ラクス「ゼクス、信じて。あんたなら、必ずこの剣の力を引き出せる!」
ゼクスはラクスの声に頷き、もう一度ガルガイダに向かって突進した。ガルガイダは再び黒い刃を生成し、ゼクスに向かって放とうとしたが、その時、剣がさらに強く輝いた。
ゼクス「うおおおおおおおおおお!」
ゼクスは全力で笑いの剣を振り下ろし、ガルガイダの体中に無数にある口を切り裂いた。ガルガイダは驚愕の表情を浮かべ、後退した。
ガルガイダ「ぐぅ…貴様…この力は…!」
ゼクスはそのままもう一撃を放ち、ガルガイダの体を深く斬り裂いた。ガルガイダは崩れ落ち、黒い霧が消えていく。
ガルガイダ「覚えていろ…お前たちの旅はここで終わらない…だが、ガイム様の前には必ず…」
ガルガイダはその場で消え去り、残されたのは静かな風だけだった。
ゼクスは剣を見つめながら、息を整えた。笑いの剣はまだ完全には目覚めていないが、確実にその力を引き出し始めていることを感じていた。
ラクス「やるじゃない、ゼクス。でも、あんたまだ笑ってないわね。」
ゼクスは無言で剣を鞘に収めたが、少しだけ表情が柔らかくなったように見えた。
ゼクス「まだだ。でも、俺は…必ず笑う。」
ラクスは満足そうに頷き、二人は再び歩き出した。次の目的地には、さらなる強敵と謎が待ち受けていることを感じながら――。
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