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27話

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「・・・え? なに?」
「僕が行きます!」
「いえワタシが行くわ!」
「いいえ私が行きます!」

 そして、またみんなが「じーっ」と俺を見る。

「・・・お、おいおい? まさかこれって? い、いやいや。いやいやいやいや! まさかダチョウ的な展開じゃないよな!? 違うよな!?」
「僕が行きます!」
「ワタシが行くわ!」
「私が行きます!」

 そしてみんなが俺を見る。

「・・・じゃ、じゃあ、俺が――」
「どうぞどうぞ」
「なんでだよッ!!!!」

 その場の空気に流されてお約束をやってしまった俺は、抗議の声も虚しく、あれよあれよと街の人たちに押し出されて化け物の前に立たされた。
 目の前には、さっき見た化け物のうちの1体。
 体長が3メートルくらいありそうなキメラがいて、フシュルルルって気持ち悪い唸り声上げながらめっちゃ俺を睨んでる。

「グオオオオッ!!!」
「・・・あ、ヤバイ、お股の辺りからお水出そう・・・」

 どうすることも出来ずに立ち尽くす俺の目の前で、キメラさんは俺を威嚇するようにポーズをお取りになり、さらにお怒りになられているお声が聞こえてくる。
 俺は錆びついたゼンマイ式のからくり人形のような動きで、一抹の希望を込めて振り返るが、犬も猫もリスも人間も狐も、全員生暖かい目で俺を見返すだけだ。

「・・・終わった・・・もうダメだ・・・」

 こんな変な世界で、こんな薄情な連中に見取られながら、化け物に食われて死んでしまうのか・・・。
 まだやりたいことが沢山あったのに。
 そういえば、俺は元々楽しみにしてたゲームを買いに行く途中だったんだ。
 こんな変なことに巻き込まれてなかったら、今頃部屋にこもって、画面の中にいる可愛い幼馴染や義理の妹とラブラブチュッチュな至福の時間を満喫していたのに。
 あ、そういやまだ一度も恋愛してないし、俺ってば童貞のままだ。
 せめて死ぬ前に5、6人の可愛い女の子に同時に告白されてハーレムでもみくちゃにされながら「ダメダメ。俺の体は1つしかないんだから、順番だゾ」って言いながら初体験をしてみたかったなぁ。
 面子はやっぱりツンデレの幼馴染は鉄板だよな。年上の優しい天然お姉さんも、甘えん坊の義理の妹も捨てがたい。それで全員俺のことが大好きで取り合いで・・・。

「ふ、ふふ・・・だから順番だって・・モテる男はつらいぜ・・・ふふふ・・・」
「・・・ファンナちゃん。隠し子さんがちょっと怖いんだけど・・・?」
「どうやらキメラさんを目の前にして、現実逃避を始めてしまったみたいですね。このまま立ち尽くしていてはモンスターさんの餌食になるだけです。やはりここは私が――」
「モンスターどもよ!! そこまでだ!!」

 辺りに凛々しい女性の声が響き渡ると同時に、一瞬前まで俺に群がっていた女の子たちは何処かに消えてしまった。

「はっ!? あ、あれ? 俺の可愛い子ネコちゃんたちは何処行った?」

 そしてその代わりに俺の目に飛び込んできたのは、武器を振り上げ、恐ろしい姿のモンスターに立ち向かっていく、人間と動物の混成部隊。
 西洋風の鎧を身にまとい剣や槍などの武器を持った、一目で騎士だとわかる人たちだった。
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