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アンニュイなオレのご主人様 9
しおりを挟む「・・・もういい。てめえと話しても、ムナクソ悪くなるだけってのがよくわかった。だが最後にこれだけは答えろ」
「おや、折角の再会なのに、もう楽しいおしゃべりはお終いですか?」
ミシェリアの怒りを押し殺したような呟きにも、オスはにやにや笑いながら軽口っぽいことを叩いてるみてえだな。
「・・・なんでだ・・・」
「はい?」
今までの激昂状態とは違って、ミシェリアは、何処か悲しそうに、顔を俯かせて呟いた。
「・・・なんで、殺したんだ・・・みんな、お前を信じてた・・・本当の家族だと思ってた・・・なのに、なんで裏切ったんだ・・・?」
・・・初めて見る、ミシェリアの泣きそうな、悲しそうな表情。
たぶん、こっちがミシェリアの本心なんだろう。
レオンの話を聞いて、なんとなくだがそう思った。
「・・・なんで、ですか。そうですねぇ」
そんなミシェリアに対して、今まで涼しげな表情だったオスから、表情が消えた。
「先生が合成モンスターの研究をしてたのはあなたもご存知の通りですが、その目的は、あくまで合成されたモンスターの救済のため。分離研究自体はあまり上手くいってませんでしたが、その過程で、実に有用な研究データが蓄積されていました」
・・・オスが何を言ってるのかわからねえが、ミシェリアは黙って、神妙な表情で聞き入ってる。
「なので先生に言ったんですよ。この研究データを使えば、今までよりも、さらに強力で完成度の高い合成モンスターを生み出せる。それを使って、僕たちで戦争を止めようと」
「そんなこと、お父様が許すはずがない」
「ええ。先生はモンスターにだって心はある。それを無理やり別のモンスターと合成し、異形の姿に変えるのは絶対にやってはいけないことだと反対されました」
「当然だ!! お父様が一体なんのために合成モンスターの研究をしてたと思ってる!!」
「もったいない話しですよ。モンスターの合成は極めて高度で難しく、今でも成功させられる人は少ない。それを高確率で成功させることが出来る技術を持ってたのに、それを利用しないなんて」
「何度も言わせるな!! お父様がしていたのは合成モンスターを作り出す為の研究なんかじゃない!! 救う為の研究なんだぞ!!」
「モンスターを救うとか、先生もあなたもモンスターを何だと思っているんですか? モンスターなんて、僕たちが利用するための道具ですよ? まあ、今となってはそんな議論はどうでもいいことですけどね」
「・・・ど、どうでもいい、だと?」
「合成モンスターを使って戦争を止めようなんて、ただの建前で本気で考えてたわけじゃないってことです。僕はただ、僕の手でより強いモンスターを作りたかっただけ。なのに、先生はそれを僕から取り上げようとした。だから殺したんです」
「・・・それだけ、か? たったそれだけのことで、家族を殺したのか?」
「そうですよ。元々、戦場で見た召喚術を覚えたくて潜り込んだ場所ですし、そこにいたのも赤の他人ですからね」
・・・なんか、ミシェリアがガックリと顔を俯かせたんだが、何かあったのか?。
しっかし、今まで人種の言葉を理解できなくても何の問題もなかったが、こうも訳がわからないと、不便を通り越してイライラしてくるぜ。
こうなったら、人語を理解出来るように勉強でもしてみるかな。
・・・いや嘘だが。
「・・・ふ・・・ふふふ・・・」
「???」
「あっはっはっは!!!」
今度はどうしたってんだ?。
ガックリしてたミシェリアが、今度はバカ笑いを始めたぞ?。
もう何がどうなってんのかさっぱりだ。
「おやおや、どうしました? そんなに僕の話は楽しかったですか?」
「ああ楽しかったよ!! 最高だった!! そして心底安心した!! やっぱりてめえはあたしが思った通りの最低のクソ野郎だ!! これでてめえをぶっ殺すのに何のためらいもなくなった!! てめえだけは絶対に許さねえッ!! お父様とお母様と弟の恨みと憎しみ!! 苦しみ!! 怒り!! 全部まとめてここで返す!! 絶対にぶっ殺してやるッ!!! お前ら!!! あいつを殺せッ!!!」
オレらは顔を見合わせるが、誰も戦闘体勢にはならない。
奴をぶっ殺したい気持ちはわかるが、オレらじゃ奴が率いてる合成モンスターの群れには、どうあがいても太刀打ち出来ねえのがわかってるからだ。
それにいくらオレたちが戦っても、回りの連中がもう戦意喪失して逃げ出してる。
逃げ切れるかどうかわからねえが、オレらも潮時だ。
「どうしたてめえら!? なんで命令に従わねえ!?」
「どうやら、モンスターの方が現状を正しく認識してるようですね」
「なんだと!?」
「いくらミシェルお嬢さんが僕を殺したいと言っても、あなたの持ってる戦力では、僕の合成モンスターに太刀打ち出来ないということですよ」
「くっ!!」
オレらが動かないのを見て、ミシェリアは悔しそうに表情を歪めてる。
ミシェリアも、オレらじゃ奴の戦力に及ばないことは十分に分かってるみてえだ。
「さて、ここであなたを殺すのは簡単ですが・・・どうでしょうミシェルお嬢さん。僕の女になりませんか?」
「・・・はぁ!? 何言ってんだてめえ!?」
「中身はだいぶ残念になってしまいましたが、元々は教養ある方ですからなんとでもなるでしょう。身なりを綺麗に整えれば、十分すぎるくらい綺麗になる素質もありそうです。ここで死なすには少々もったいない」
「はっ!! 冗談じゃねえ!! あたしはてめえを殺すために生きてきたんだぞ!!」
「しかしあなたのモンスターは怖気付いてるようですが、どうやって僕を殺すつもりですか? ミシェルお嬢さんにもわかるでしょう? 僕とあなたの戦力の決定的な差が」
「だからなんだってんだ!! あたしをなめんな!! 我が忠実なる召喚奴隷に命ず!!」
「!?」
このバカ!! ここで強制契約執行する気か!?。
「強制契約執行ですか。そんなことをしても無駄だと言うのに」
「ゲグッギャゲゲア!! ゲッギャゲッグゲゲッギャッギャ!! (止めろミシェリア!! 今のオレらじゃどうあがいたって無理だっつの!!)」
「いかん!! 待つんじゃお嬢!!」
「アレだけはイヤにゃ~!! 誰か止めてにゃ~!!」
「汝ら召喚奴隷!! 契約のもと我が意思に従え!!強制契約執行(ディス・マインド・マリオネット)!!!」
「あ、あ・・・ああああアアアァァァァアアアア!!!!」
強引に無理やり意識を真っ黒に塗りつぶされてく感覚。
それはすぐに全身に広がり、やがて目の前が真っ暗に・・・・・・・・・。
「合成モンスターは無視しろ!! あいつを殺せ!!」
「オオオオォォォォ!!!!」
「やれやれ、仕方ありませんね。僕の忠実な奴隷たちよ。彼女をけして傷つけるなく、その召喚奴隷だけを殺せ」
「ギィギャアアアアアアッッ!!!!!」
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