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アンニュイなオレのご主人様 6

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 辺りを見渡すと、確かにフォーテルの言う通り、姿形大きさのバラバラな合成モンスターがまだウヨウヨいやがる。
 今さっきオレらが相手にしてた合成モンスターは、その中でも中型の部類だ。

「・・・逃げた方がよくにゃい?」
「・・・オレもニャン吉の意見に同感だ。色んな意味で」

 味方の傭兵や国の連中も、合成モンスターにほとんど何も出来ずにやられてる。
 戦争っていうより、これはもうただの虐殺だ。
 味方がいなくなってこいつらが一斉にこっちに向かってきたら、もうどうしようもねえ。

「おいレオン。ミシェリアになんとか撤退しようって伝え――」
「おや、まだ終わってないんだね」

 ・・・辺りが混乱と喧騒の中。
 何処からか、のんびりした人種の声が聞こえてきた。

「やれやれ。この程度の戦力にこんなに手間取るなんて、まだまだ改良が必要だね」

 あいにくミシェリア以外の人種が何を言ってるのかは理解できねえが、現れたのはこんな戦場に似つかわしくない、細っこくて、ヒラヒラで軽そうな服装のオスだ。
 まあどんな服装しようが別に構わんが・・・なんなんだこいつは?。

「・・・つ・・・た・・・」
「???」

 僅かな呟きが聞こえて振り返ると、そこには、まるで長年探し続けた恋人を見つけたかのような表情のミシェリアがいた。

「見つ・・・けた・・・見つけた! 見つけた見つけたとうとう見つけた!! あいつだけはあたしがこの手で殺すッ!!!!」
「あ、おい!!」
「死ねええええ!!!!」

 制止する間もなくミシェリアは飛び出すと、普段使ってるクロスボウではなく、懐から取り出したナイフで、明確な殺意を持ってオスに襲い掛かった。

「ダメだミシェリア!!!」

 ミシェリアからは死角になって見えなかったのか、それともオス以外、目に入ってなかったのか。
 とにかくオスのすぐ近くにいた合成モンスターが、オスは無視してミシェリアに向かって動いていた。

「!!!!」

 ミシェリアがそれに気付いた時には、既に合成モンスターの射程内で・・・。

「グリュウアアアアアッッ!!!」

 こりゃ死んだな。と思った瞬間。
 ミシェリアと合成モンスターの間に飛び出したレオンが、ミシェリアの代わりに合成モンスターにぶん殴られ吹っ飛ばされた。

「レオン!!! くっ! フォーテル!! ミシェリアを!!」
「わかってる!!」

 合成モンスターがすぐ近くにいるってのに、ミシェリアは吹っ飛ばされたレオンを見て呆然としてる。
 そんなミシェリアを、フォーテルは自分の背中に乗せてすぐに合成モンスターから離れた。

「レオンちゃん!! レオンちゃん!! 死んじゃダメにゃ!!」

 ぶん殴られて地面に倒れてたレオンだったが、ヨロヨロと起き上がると、

「わ、わしは大丈夫じゃ。それよりお嬢は・・・?」
「自分がそんな状態なのにミシェリアの心配かよ・・・。そっちは心配ない。ほら」

 オレとミノがレオンを庇うように合成モンスターとの間に立ち塞がると、その後ろで、フォーテルの背中に乗せられたミシェリアがレオンの隣に降ろされた。
 まあ、立ち塞がったものの、合成モンスターに突っ込んでこられたらどうしようもねえんだけどな。

「お嬢は無事か。よかった・・・うっく・・・」

 一時は立ち上がったものの、ミシェリアの無事を確認して安心したのか、レオンはまた力が抜けたように地面に膝をついた。

「おいおい大丈夫かよ? じじいは無理してねえでそこで休んでな」
「出来ればそうしたいところじゃが、そうも言ってられん状況じゃろう?」

 確かに周りは合成モンスターがうじゃうじゃしてて状況は圧倒的に不利。
 つか、これはもう不利なんてレベルじゃなくて、今すぐ撤退コースだ。
 勝てる気が全くしねえし、全滅するのも時間の問題・・・なんだが・・・。

「驚きましたよ。まさか、いきなり攻撃されるとは思ってなかったですからね」

 そんなことを言いながら、レオンをぶん殴った合成モンスターの脇を抜けて、人種のオスが悠々と前に出て来た。

「なあ。なんで合成モンスターは、あの人種を襲わねえんだ?」
「・・・それは、あやつが合成モンスターのマスターだからじゃ。合成モンスターは自然界には存在しないモンスター。そのマスターということは、合成モンスターを作り出したのもあやつということじゃ」

 ミノの至極当然な疑問を、特に考える素振りもなくスラスラと答えるレオンに、オレはちょっとした違和感を感じた。

「なあ、さっきも思ったんだが、妙に合成モンスターについて詳しく――」
「さきほどいきなり僕に襲い掛かり、今も非常に怖い表情で僕を睨み付けてる、そこの君」

 オスがミシェリアに話しかけた・・・らしい。
 いつも通り、ミシェリア以外の人種の言葉が理解出来ねえから、なんとなく雰囲気だが。

「もちろん敵同士ですから仲良くいかないのはわかっています。ただ、君は随分と僕に敵意を持ってる気が――」
「あたしのことを忘れたとは言わせねえぞクソ野郎!!!」
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