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とある女召喚術者

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 燃える屋敷。
 崩れ落ちていく内部。
 涙を堪えながら、必死で何かを探すように、燃える廊下を走る少女。
 やがて1つの部屋の前までたどり着くと、勢いよくドアを開けた。

「お父様!! お母様!!」

 部屋の中にいたのは、色々なモンスターの部位が継ぎ接ぎされた、歪な姿のモンスター。
 その足元に、血まみれで倒れている男性と女性の死体。

「あ・・・あ・・・!!!」

 少女が叫ぶ直前。

「お姉ちゃん・・・」
「!?」

 背後から聞こえた、幼い少年の声。
 振り返ると、燃え崩れ落ちる屋敷の中。
 少女よりもさらに幼い男の子が、歪な姿のモンスターに――、

「イヤアアアァァァァァッ!!!!」

 夢の中の少女が叫んだ瞬間、目の前が暗転した。

  ・・・・・・・・

「・・・ぁ・・・またか・・・」

 自分の叫び声で目が覚めたあたしは、まだ夜が明けてないせいで薄暗いテントの中を見渡した。
 そして、そんなことないとわかっていながらも、何処も燃えてないことを確認して、情けなくも安堵の息をつく。

「・・・はぁ・・・」

 寝汗のせいで下着まで濡れてて気持ち悪い。
 あの日から見続ける悪夢。
 これが単なる妄想や夢だったら、どれほど良かったことか・・・。

「まだ夜明けじゃないけど、2度寝は出来そうにないな・・・」

 汗を拭き、着替えてからテントを出る。

「またあの夢かの?」
「・・・・・・・・・」

 テントの外で寝ていたトライレオンが声を掛けて来るが、返事をするのも億劫で、無言の肯定だけを示す。

「夜明けにはちと早いが、早起きは三文の徳と言うし、今日は良いことがあると良いのう」
「・・・・・・・・・」

 あの日から一緒にいるトライレオン。
 まだ召喚術者として未熟なあたしが、唯一、言葉が理解出来る召喚奴隷。
 そしてある意味、形見であり・・・いや、今は考えても意味のないことか。

「丁度良いから、他の連中が起きて来る前に出発する」
「了解じゃ」

 多少大きな街だと、街外れにモンスターと一緒に泊まれる野営場がある。
 以前はトライレオンを街の外で待たせて、街の宿に泊まっていたが、女が1人でいると声を掛けて来る奴らが多い。
 男だけでなく女からも。
 そんな奴らに声を掛けられて得られるのは面倒なだけだ。
 だからそんな奴らを寄り付かせない為に、わざわざ小汚い格好をするようになり、街には必要な時以外は入らない。
 本来ならこの長い髪も切った方が良いんだが・・・母が、自分の髪と似ていると言ってくれたことが枷になって、これ以上は短く出来ずにいる。
 ・・・まあ、髪が長ければ顔も隠せるし、それも丁度良い。なんて、女々しい言い訳だ・・・。
 とにかく、いっそ街から離れて野宿出来れば良いが、それはそれでモンスターや野盗に襲われる危険性がある。

「・・・片付けはこのくらいか」
「今日はどうするんじゃ?」
「契約してる傭兵の方の仕事はないから、今日は情報集めだ。いつも通り、あたしは街で情報を集めるから、お前はあたしが呼んだらすぐにこれるようにしてろ」
「役に立てずに済まんのう」
「何を今更。モンスターは召喚契約していようといまいと街の中には入れないんだから、しょうがないだろ」

 そうして、あたしはトライレオンをその場に残し、情報を集めるために居心地の悪い街中に入った。
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