5 / 38
アンニュイなオレの日常 4
しおりを挟む「ドラゴンとは好都合だ・・・てめえら!! あいつを倒せ!!」
「グギャッギュゴアーー!!(ふざけんな無理に決まってんだろ!!)」
召喚契約の効力の1つで、命令を理解するために、召喚奴隷は召喚術者の言語を理解できるようになってる。
そして優秀な召喚術者は召喚奴隷の言葉を理解出来るようになるらしいが、ミシェリアはそこまでの召喚術者じゃない。
つまりオレが何を言ったところでミシェリアに通じないのは分かってるんだが、さすがにこんな無理難題を吹っかけられては黙ってられなかった。
ちなみに、レオンだけはミシェリアと意思疎通が出来るようだが、なんでかは知らん。
「今回はいつもの検分役だけじゃなく国からの視察も来てるんだ!! ここでドラゴンを倒せば莫大な報奨金が手に入るだけでなくあたしの名前も知れ渡る!!」
「ギャジュゴドラゴンガグゴアギアギャ!!!(だからってオレらだけでドラゴンと戦えるわけねえだろアホか!!!)」
「はっ! てめえも戦いたくて仕方ないってか!」 「グギャッゲギャーーーーッ!!!(一言も言ってねえーーーーッ!!!)」
言葉が通じたところで、これまでのことを思い返してみると、こいつが考えを改めるとは思わねえが・・・さすがにドラゴン相手はキツイ。
命令には抵抗出来ない以上、なんとかこいつに心変わりを――、
「・・・それに、この程度のドラゴンも倒せねえようじゃ、あいつには絶対に勝てねえ・・・」
「アギャ?(はぁ?)」
「・・・・・・・・・」
ふと隣を見ると、レオンも訳知り顔、みたいな感じでミシェリアを見てる。
オレにゃ何のことだかさっぱりわからねえが・・・考えてみりゃ、召喚契約の時にこいつの名前だけは覚えさせられたが、それ以外のことは何にも知らねえや。別に知りたくもねえけどよ。
ちなみに検分役ってのは、傭兵の戦果や戦いを見て報酬を決める連中のことだ。
「とにかくやれ!! 戦え!! てめえらが死んでもドラゴンは殺せ!!」
・・・説得は無理っと・・・。
「ど、どうするにゃ?」
「どうするもこうするも、命令された以上やるしかねえだろ」
「でもでも! ドラゴンちゃんの相手にゃんか無理にゃ!」
「・・・ここはドラゴンではなく、その召喚術者をやるしか道はない」
「お、なるほど! その手があったか! さすがだぜフォーテル!」
召喚術者さえやっちまえば、ドラゴンは召喚契約から解き放たれる。
そうなりゃドラゴンとも戦わなくて済むはずだ。
ドラゴンを倒せって命令だが、これでも十分・・・の、はず。
っていうかこれ以外は無理だしな。どう考えても。
「そうと決まったら、味方の連中が全員逃げ出しちまう前にやろうぜ!」
ドラゴンのせいで形勢は逆転されつつあるが、今はまだ戦場に味方が数多く残ってる。
やるなら今しかねえ。
「機動力のある俺とレオンとニャン吉がドラゴンの注意を引き付ける。その間にリザドは召喚術者を狙ってくれ」
フォーテルたちの機動力を10としたら、オレなんて2、3だから妥当な采配だな。
「わかった。無理すんじゃねえぞ」
「おぬしも気をつけるんじゃぞ。それと、出来るだけ急いでおくれ」
「わかってるって」
「絶対に生き残ろうにゃ!!」
「ああ!!」
「さっさと行きやがれてめえら!! 命令が聞こえねえのか!?」
「ギャギャグゴゲキヤ!!(今から行くんだっつの!!)」
ったく、折角意識を高めてたってのに水差しやがって、この暴君にはマジまいるぜ・・・。
・・・同時刻・・・
「いやはや、さすがはドラゴンですな。あの劣勢を覆しそうですぞ」
戦場から少し外れた高台の上で、2人の人物が戦場を見物していた。
1人はいかにも太鼓持ちが好きそうな、低身長で小太りな中年の男性。
そしてもう1人は、涼やかな顔の、美形と言っても差し支えのない美青年。
「ドラゴン1匹で大丈夫かと心配しましたが、平気そうですね」
「そりゃもう! 当初から敗戦が濃厚でしたが、これで巻き返せそうですぞ!」
「それはよかった。僕もドラゴンを差し上げた甲斐があったというものです」
「しかし、本当によかったのですかな? 貴重なドラゴンを1匹頂いてしまって?」
「ええ、構いませんよ。素材にしようと捕獲したドラゴンでしたが、思った以上に特徴もなく、大して使い物にならないドラゴンでしたから」
ドラゴンと言えば、知らぬ者がいないほどの強力な生物。
それを本当に大したことがないとばかりに言う青年に、中年の男性はあんぐりと口を開けた。
「・・・は、はは、ははは。さ、さすがは放浪の天才召喚術者と呼ばれるだけのことはありますな」
青年はその賛辞は当然のものとばかりに、にっこりと微笑んだ。
「それで、僕は合格ですか?」
「もちろんです! もちろんですとも!! なぜ何処の国にも属さない放浪の天才召喚術者様がこのような場所に現れたのかと疑って試してしまいましたが、これだけのものを見せられれば本物であることは間違いない!! いや本当に申し訳ない!! これこの通りです!!」
中年の男性は青年の前で土下座すると、まるで青年の靴を舐めそうな勢いで頭を下げている。
「あはは。気にしないでください。言われてるように僕は各地を放浪してますし、そんな僕がたまたま立ち寄った場所で、突然力を貸しましょうか? なんて言ったら誰だって不審に思いますよ」
「そう言って頂けるとありがたい! 今後はこのようなどうでもいい戦場ではなく、もっと重要な作戦に参加して頂きますぞ! ではさっそく王へお目通りに――」
「・・・ん? あれは・・・?」
戦場を見ていた青年の目が、戦場で動き回る1人の女性を捉えた。
「どうかしましたかな?」
「・・・いえ、知ってる人かと思ったんですが、どうやら人違いのようです。僕の知ってる人は、このような戦場とは無縁の、吹けば飛んでいきそうな可憐な女性でしたから」
「ほほぅ? 確かに貴方様のようなお方でしたら、女性が放っとくはずがありませんものなぁ。やはりその女性とも何か?」
「ははは。彼女はそのつもりだったみたいですけど、僕はそんな気はありませんでしたよ。ただ遊び相手には丁度良かったですけどね」
青年はそれだけ言うと戦場に背中を向け、1度も振り返ることなく中年の男性と何処かへ消えて行った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR
ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。
だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。
無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。
人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。
だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。
自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。
殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている
光命
ファンタジー
ボディもパワーも常識外れ!?
非常識でジコチューのやりたい放題のチート元魔王♀と
翻弄される召喚モブ勇者♂が
魔王軍相手に無双して異世界を救う!?
平凡なサラリーマンのアグリは
突如異世界に転移した。
魔王討伐を命じられ、一振の剣をもらうのだが…
その剣には元魔王が封印されていた。
そこから傍若無人の元魔王との魔王討伐が始まる。
課せられた運命にアグリは元魔王とチカラ合わせて突き進む。

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
歌うしか能がないと言われてダンジョン置き去りにされた俺、ギフト『歌声魅了』で魔物を弱体化していた!本来の力が目覚め最強へ至る【精霊王の末裔】
綾森れん
ファンタジー
竜人族の村に先祖返りした姿で生まれたジュキエーレは、生まれてすぐに聖女の加護を受けた。しかし彼はなぜか魔法が使えなかった。
それでも冒険者を夢見て剣の修行に励んだのに、授かったギフトは「歌声魅了」。
戦闘には不向きなギフトと思われていたが、実は人も魔物も操れる最強ギフトだった。
そうとは知らないパーティメンバーは、ジュキエーレを魔力無しの役立たずと思い込んで、ダンジョン内に置き去りにする。
足をすべらせて最下層に落ちたジュキエーレを待っていたのは、半身を氷漬けにされたドラゴンだった。遠い先祖であるドラゴンは、聖女が彼にかけた封印を解いてくれ、先祖返りした彼本来の膨大な精霊力が解放された。
なぜ聖女が自分の力を封じたのか知るため、ジュキエーレは旅立つ。そして聖女について調査するため訪れた隣国で、次期聖女になりたくない公爵令嬢と出会い恋に落ちた。最強の力を得たジュキエーレと、聖女の力を持つ公爵令嬢の幸せな旅が幕を開ける。
※カクヨム様で先行公開しています。
『精霊王の末裔~ギフト【歌声魅了】と先祖の水竜から受け継いだ力で世界を自由に駆け巡る!魔力無しから最強へ至る冒険譚~』
https://kakuyomu.jp/works/16817330649752024100
第8回カクヨムコン参加中ですので、アカウントをお持ちの方は応援お願い致します!!
(★がついているサブタイトルは他者sideです)
2023/1/16 HOTランキング1位、ファンタジーランキング1位、ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる