上 下
1 / 38

プロローグ

しおりを挟む

「ゴアアアア!!!」 
「キシャーーーッ!!!」 
「うおおおおお!!!」

 巨大な鷲のグリフォン。 
 子鬼のような姿のゴブリン。
 1つ目巨人のサイクロプス。 
 低級の悪魔リトルデーモン。 
 石の悪魔ガーゴイル。
 ネクロマンサーが作り出したゾンビ。
 錬金術師が生み出した岩石巨人ゴーレム。 
 3つ首の犬ケルベロス。 
 さらに剣や槍を持って戦う人間やドワーフなども加わり、広い平原は多種多様な種族が入り混じる、武器と魔法が飛び交う激戦の戦場と化していた。

「さっさと殺せ!! まだ敵はいるんだぞ!! グズグズすんなっ!!」

 そんな戦場の一角で、土埃で薄汚れた、旅装束のようなものを着た、金髪で若い女性の姿。
 自らクロスボウを用いてモンスターと戦いながら、さらにすぐ近くで戦っているモンスターたちに、激しい口調で命令を出して戦わせていた。

 「グルアァ(みんな、もう一頑張りじゃ)」
 「キュリュルー(やれやれ)」
 「フニャー(ネコ使いが荒いにゃ~)」

 そんな女性の命令を、何処か冷めた様子で聞くモンスターたち。 
 3つ目の獅子トライレオン。 
 4本の尾を持つ狐の四尾狐(しびきつね)。 
 人間のようなネコのような姿の猫又(ねこまた)。   
 そして・・・。 

「(相変わらず雑に扱ってくれるよ。ま、あいつからすりゃ、しょせんオレらは戦う道具でしかないからな)」 

 そんな風に心の中でぼやきながら、女性の命令通りに戦う、体長2m強、全身が緑色の鱗に覆われ、槍を持った2足歩行のトカゲ「リザードマン」。
  女性の命令を喜んで聞いている様子ではなかったが、それでも彼らは女性の命令に従って戦っていた。 
 
 そうして戦い続けるうちに、ようやく勝敗が決し、薄汚れた女性がいる側が勝利を掴んだ。
  女性の命令を受けて戦っていたモンスターたちも全員何とか生き残り、今はお互いの無事を確認するように一箇所に集まっている。

 (注・以降、モンスター同士の会話は通常の言語でお送りします)

 「お疲れさん。今回もなんとか生き残れたな」
 
 リザードマンが集まったモンスターたちに労うような言葉をかけると、
 
「ケルベロスに噛まれた時はどうなるかと思ったが、おぬしのお陰で助かったわい」 

 毛並みを撫でられ、気持ちよさそうな声で答えるトライレオン。
 
「それにしても、今回の戦いもきつかったな」

  四尾狐が自分の毛並みを舐めて整えながらそう言い、
 
「ご主人も、戦えーとか、突っ込めーくらいしか言わないからにゃぁ」 

 猫又は疲れたように地面に四つん這いになって、体を伸ばしている。
 
「戦術もクソもねえからな、オレらのゴシュジンサマは。性格と一緒で、ガサツに加えて自分勝手と来たもんだ」
 
 リザードマンの軽口にモンスターたちがおかしそうに笑っていると、突然自分たちの足元に、光を放つ複雑な幾何学模様の魔法陣が現れた。
 そして有無を言わせず彼らの姿が魔法陣に飲み込まれていく。 

「戦いが終わったらオレらは用済みだから、さっさと元いた場所に帰れってよ」 
「いつものことだ。それじゃ、またな」
「次に呼ばれる時まで、ゆっくり体を休めておくれ」
「みんな元気でにゃ~」

 戦場にいた大勢のモンスターたちが、同様の魔法陣の中に次々と姿が消えていく。
 最終的にその場に残ったのは、数十名の人間やドワーフなど【人種】と呼ばれる者たちだけだった。 


 人間やモンスターなど、多種多様な種族が生きる世界【ハースヴェルド】。 
 様々な種族や文化が入り混じるこの世界には、召喚術と呼ばれる術がある。 
 召喚術とは、召喚術者が召喚奴隷を自由に呼び寄せ意のままに操る術。
  時には条件次第。時には服従か死を迫る力ずく。  そうして相手が服従する意思を持つと、召喚契約が施されて、相手は召喚術者の召喚奴隷となる。
 そして召喚奴隷となったモノたちを待つのは、戦争。治安維持。テロなど、およそ平和とは言えない場所で、戦力として使われることがほとんどだった。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

ドレスを着たら…

奈落
SF
TSFの短い話です

処理中です...