魔術師たちに革命を

諸星影

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ROUTE2(風紀委員会潜入編)

2-09  二人目の協力者

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「…………」
「……………………」

 情報屋の作戦名を聞きしばしの沈黙が流れる。

「今のは笑うべきところか?」
『茶化すな。私は大マジだ』
「そう聞こえないのは俺だけかな」
『まぁ聞け。まずカードキーのダッシュだが、正直にいうと染谷からバレずにキー
 本体を抜き取ることは不可能だろう』
「ならどうする」
『キー内部のデータをコピーする。その為に必要な物資はこちらで用意しよう』
「セキュリティに問題ないのか?」
『そこに関しては問題ない。一時的なものにはなるが複製は完璧だ』
「…………分かった。だがどうして俺と染谷がデートをするんだ?」
『――――君も委員会に潜入して実感しているだろうが、染谷ゆづはという人物は
 根っからの仕事人間だ。そんな堅物な相手の油断を誘うならプライベートに
 誘い出すしかない』

「あの…………それと私が、その、司くんを好きかどうかはどう関係があるの?」
『これでも私は学生としての君たちを尊重している。特に色恋沙汰に関してはできる
 だけ配慮した方が良いかと思ってね』
「余計なお世話だ」
『そうは言ってもだな。夜中に他学科の女子の部屋にいる相手を気遣うのは当然の
 ことだろう?』
「お前、まさか俺たちを監視しているわけじゃないだろうな」
『まさか。私もそこまで暇じゃない。それにさすがの私も女子の部屋の話を盗み聞き
 はしないさ』
「本当か?」
『私は覗き魔や盗撮魔とは違うからね。その辺は弁えているのさ』

『それで、話を戻すが。遠乃緋音は最上司と付き合っているわけではないのか』
「今のところは…………」
『ふむ。では彼が他の女性とデートしようが問題ないわけだな』
「待て。俺の意見は無視か」
『君の場合必要であれば躊躇なく遂行するタイプだろう? 代案が出ない限りはノー
 とは言えないはずだ』
「それはそうだが…………。デート経験なんてほとんどないぞ」
『それについても心配は必要ない。心強い助っ人がいる』
「助っ人?」

 するとそのタイミングで扉からコンコンッっとノック音が聞こえてくる。

「誰か来たのかしら?」
「待ってください先輩」

 俺は扉へと向かおうとする先輩を制止し一人で扉の前へと移動する。
 そしてゆっくりとドアノブに手をかけ、扉を開ける。

 一体誰が――――そう思案する間にドアの隙間から視線を覗かせると
 見知った人物がそこにはいた。

「どうもっす先輩」
「お前は――――歌恋。そうしてここに」
「どうしてってそりゃここに来いって言われたからですよ」
「誰にって、まさか…………」

『驚いたかい?』

 室内からこちらの反応を把握しているような声で情報屋が呟く。

「とりあえず中、入れてもらっていいですか?」
「え、あぁ…………」

 歌恋を廊下に放置することもできず中へと引き入れる。
 彼女はリビングにいる緋音先輩に対しペコリと一礼し靴を揃えて室内へ。

「初めまして遠乃先輩。私、魔導師科一年の沢城歌恋といいます」
「これはご丁寧にどうも。遠乃緋音です、以後お見知りおきください」

 俺との時とは打って変わり丁寧な挨拶を済まし、
 家主である緋音先輩に気を使ってか部屋の隅にちょこっといった感じで正座する。

「説明してもらうか情報屋。一体どういうつもりだ」
『――――歌恋は私の右腕であり腹心だ。以後君たちに協力する』
「右腕……彼女がか?」
『彼女は私にとって最も近しい情報源なのだ。私を頼るということは必然的に彼女を 
 頼ることにも直結する』
「ならまさかこいつも俺とお前の関係を知っているということか」
『ある程度にはな』
「では俺に接触してきたのも仕組まれていたわけか」
「それは違います。先輩と出会ったのは本当に偶然でした。先輩のことは最初から
 知っていましたが少なくとも私から接触するつもりはありませんでしたから
 …………」
「――――しかしだな。仮にも情報を扱うお前が、自身の腹心とはいえおいそれと
 こちらの情報を教えてもらっては困るぞ」
『相談をしなかったことは素直に謝ろう。だが仕事柄、私も常に君たちに協力できる
 とも限らない。故にこそこれから先のことも鑑みて直接的に私とコンタクトの
 取れる彼女を傍に置いておきたいのだ』
「そういうことなら得心もいくが…………協力者としての技能はあるのか?」
「一応アイテムの調達からデバイスの調整くらいまでなら一通りできます」
「戦闘は?」
「ハッキリ言って戦力にはならないと思います。ただオペレーターとしては期待して
 もらって構いません」

 すると歌恋は腰に巻いたポーチからタブレットを取り出し画面を起動してみせる。

「今タブレットから手持ちの中継器を通じて先輩のスマホと同期しました。
 確認してみてください」

 そういう彼女の言葉通りスマホを確認すると、入れた覚えのないアプリが起動して
 おり画面全体に学内マップが表示されていた。

「へぇこれはすごい」

「(今の一瞬でここまでの情報伝達が可能とは。どうやら情報屋の右腕というのも
 あながち嘘ではないらしい。素直に感服する腕前だ。)」

『どうだい、仲間にとって不足はないだろう?』
「ああ、俺としては文句はない」
「私も司くんがいいなら問題ないわ」
『決まりだな。では歌恋、すまないが二人をよろしく頼む』
「お任せを。お二人ともこれからどうぞよろしくお願いしますねッ!」

 そうして新たな協力者として魔導師科一年、沢城歌恋が加わ
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