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ROUTE2(風紀委員会潜入編)
2-08 作戦会議
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「どうぞ入って~」
「お邪魔します」
風紀委員会室のある中央校舎から出てしばらく。
同じくアストラル学園の敷地内の南西に位置する魔導師科の学生寮である
緋音先輩の部屋へとやって来ていた。
「ふー、何とか誰にも見られずにこれたみたいで一安心だね」
「そうみたいですね」
部屋に到着し扉を閉めると二人してようやく一息入れる。
同じ学園内とはいえ、魔術師科である俺が魔導師科の寮を、それも女子の部屋に
出入りしていることが知れれば何かと面倒になる。
そう考慮した俺たちは出来る限り慎重に行動しここへとたどり着いたのだった。
「(実際、ここまで誰一人として寮の生徒とすれ違わなくて済んだのは幸い
だったな)」
しかし毎回こう上手くはいかないだろう。
寮はその構造上、一階と二階が男子部屋、三階と四階が女子部屋となっている。
そして先輩の部屋は四階。
ただでさえ魔術師科と魔導師科でエリアが分かれているにも拘わらず、
寮のエントランスから先輩の部屋まで誰一人に目撃されることなく移動することは
相当に困難なことだ。
「(次からはもっと別の方法で移動した方が良さそうだな)」
なんてことを考えつつ、とりあえず靴を脱ぎ先輩の部屋にお邪魔する。
といっても学園内にある学生寮の為、そこまでの広さはない。
中はよくあるワンルームマンションのような構造をしており、ベットや机、本棚と
いった備え付けの家具を中心とした平凡な感じだった。
しいていうならば所々に女の子らしい雑貨とスイーツ関連の本が置かれているのが
先輩らしさを物語っていた。
「適当に座ってて、今お茶入れるから」
「お構いなく」
彼女に促されるがままに部屋の中心に置かれたテーブルの前に腰掛ける。
何気に女性の部屋に入るのは初めてのことで、室内に充満した女子特有の甘い香り
に鼻腔をくすぐられ少しドギマギとする。
「おまたせ」
しばらくして先輩がお茶の入ったコップに手に隣に座る。
「どう私の部屋は?」
「思ったよりもシンプルですね」
「そうでしょそうでしょ」
「それに何だか甘い香りがします」
「え、嘘? くさい?」
「いえ、どちらかというといい匂いだと思います」
「そう? 自分ではあんまり分かんないんだけどな」
クンクンと自分や周囲の匂いを嗅ぐ先輩。
しかしピンとこないようで首をかしげる。
「自分の匂いって案外自分では気が付かないものですよね」
「まぁ臭いわけじゃないなら別にいいんだけど…………言われたら気になるわね。
もしかして柔軟剤の匂いかしら」
「どれどれ」
「ひゃっ」
確認の為、先輩に近づき制服の匂いを嗅ぐ。
「ちょっと司くん!」
「あ、すいません先輩。つい」
咄嗟のことに赤面する先輩を見て、乗り出した体を引っ込める。
「もう君って割とデリカシーがないよね」
「え、でもいい匂いですよ?」
「そういうことじゃないくて。いきなり女の子の匂いを嗅ぐなんて良くないんだー」
よっぽど恥ずかしかったからか、先輩は体をくねらせ頬を膨らませる。
「すいません。以後気を付けます」
「もー。わたしだったからよかったものの、他の子にこういうことはしちゃ
ダメだよ」
「はい」
「分かればよろしい」
すると先輩は姿勢を戻し再びこちらに向き直る。
「そういえば先輩。まだ聞いていませんでしたが、今日は何か俺に用事でもあったん
ですか?」
「用事って程のものじゃないけど、最近司くんもパレットに来てくれなくなった
から会う機会も減っちゃったし。ここらで近況の報告でもし合おうかと思って」
「なるほど。それもそうですね」
先輩から差し出されたコップの中身を口に含みつつ。
早速、脳内で言葉にする情報を整理する。
「先に聞いちゃうけど、風紀委員会に潜入して有益な情報は得られた?」
「風紀委員室内に関しては特には。ただ学園のネットワークシステムを見る限り
重要な書類は生徒会室に集約されているみたいです」
「とすると生徒会室に忍び込む必要がありそうね」
「ええ。ですが入室権限があるのは役員以上の生徒のみ」
「生徒会長に副会長、あとは風紀委員長ね」
「はい」
「学園のビックスリー。正直、正面突破は不可能ね」
「生徒会室への入室は専用のカードキーが必要になります。入手できる可能性がある
のは風紀委員長の染谷ゆづはですが…………」
「当然肌身離さず持っているわよね」
仮に無事カードキーを入手できたとしても、生徒会室に侵入している間にカード
キーがないことがバレては意味がない。
できれば隠密に、危険を冒すことなく生徒会室に侵入したい。
「仕方ない。奴を頼るか」
そうして俺はスマホを取り出し、ある人物に連絡を取る。
そう――――情報屋だ。
「――――ということなんだが」
連絡を取るや否や用件だけを手短に話し返答を伺う。
『話は分かった。つまり生徒会室に潜入する為のアイデアを寄こせということだな』
「そういうことだ」
『全く。久々に連絡が来たと思ったら、情報屋使いの荒い奴だぜ』
「それでいい案はあるのか?」
『…………』
情報屋はしばらく黙り込み熟考する。
『あるにはある』
「本当か」
『あぁ。だが問題もある』
続けて情報屋。
『遠乃緋音、そこにいるか』
「ええいるけど…………私に何か?」
『お前、最上司が好きか?』
「ふぇ!?」
思わぬ言葉に先輩が狼狽する。
「おい、なんのつもりだ。ふざけているのか」
『冗談ではないぞ。真面目な話だ』
「――――?」
『私の提案する作戦。それは染谷ゆづはとのデートでカードキーを奪っちゃおう
作戦だ』
「お邪魔します」
風紀委員会室のある中央校舎から出てしばらく。
同じくアストラル学園の敷地内の南西に位置する魔導師科の学生寮である
緋音先輩の部屋へとやって来ていた。
「ふー、何とか誰にも見られずにこれたみたいで一安心だね」
「そうみたいですね」
部屋に到着し扉を閉めると二人してようやく一息入れる。
同じ学園内とはいえ、魔術師科である俺が魔導師科の寮を、それも女子の部屋に
出入りしていることが知れれば何かと面倒になる。
そう考慮した俺たちは出来る限り慎重に行動しここへとたどり着いたのだった。
「(実際、ここまで誰一人として寮の生徒とすれ違わなくて済んだのは幸い
だったな)」
しかし毎回こう上手くはいかないだろう。
寮はその構造上、一階と二階が男子部屋、三階と四階が女子部屋となっている。
そして先輩の部屋は四階。
ただでさえ魔術師科と魔導師科でエリアが分かれているにも拘わらず、
寮のエントランスから先輩の部屋まで誰一人に目撃されることなく移動することは
相当に困難なことだ。
「(次からはもっと別の方法で移動した方が良さそうだな)」
なんてことを考えつつ、とりあえず靴を脱ぎ先輩の部屋にお邪魔する。
といっても学園内にある学生寮の為、そこまでの広さはない。
中はよくあるワンルームマンションのような構造をしており、ベットや机、本棚と
いった備え付けの家具を中心とした平凡な感じだった。
しいていうならば所々に女の子らしい雑貨とスイーツ関連の本が置かれているのが
先輩らしさを物語っていた。
「適当に座ってて、今お茶入れるから」
「お構いなく」
彼女に促されるがままに部屋の中心に置かれたテーブルの前に腰掛ける。
何気に女性の部屋に入るのは初めてのことで、室内に充満した女子特有の甘い香り
に鼻腔をくすぐられ少しドギマギとする。
「おまたせ」
しばらくして先輩がお茶の入ったコップに手に隣に座る。
「どう私の部屋は?」
「思ったよりもシンプルですね」
「そうでしょそうでしょ」
「それに何だか甘い香りがします」
「え、嘘? くさい?」
「いえ、どちらかというといい匂いだと思います」
「そう? 自分ではあんまり分かんないんだけどな」
クンクンと自分や周囲の匂いを嗅ぐ先輩。
しかしピンとこないようで首をかしげる。
「自分の匂いって案外自分では気が付かないものですよね」
「まぁ臭いわけじゃないなら別にいいんだけど…………言われたら気になるわね。
もしかして柔軟剤の匂いかしら」
「どれどれ」
「ひゃっ」
確認の為、先輩に近づき制服の匂いを嗅ぐ。
「ちょっと司くん!」
「あ、すいません先輩。つい」
咄嗟のことに赤面する先輩を見て、乗り出した体を引っ込める。
「もう君って割とデリカシーがないよね」
「え、でもいい匂いですよ?」
「そういうことじゃないくて。いきなり女の子の匂いを嗅ぐなんて良くないんだー」
よっぽど恥ずかしかったからか、先輩は体をくねらせ頬を膨らませる。
「すいません。以後気を付けます」
「もー。わたしだったからよかったものの、他の子にこういうことはしちゃ
ダメだよ」
「はい」
「分かればよろしい」
すると先輩は姿勢を戻し再びこちらに向き直る。
「そういえば先輩。まだ聞いていませんでしたが、今日は何か俺に用事でもあったん
ですか?」
「用事って程のものじゃないけど、最近司くんもパレットに来てくれなくなった
から会う機会も減っちゃったし。ここらで近況の報告でもし合おうかと思って」
「なるほど。それもそうですね」
先輩から差し出されたコップの中身を口に含みつつ。
早速、脳内で言葉にする情報を整理する。
「先に聞いちゃうけど、風紀委員会に潜入して有益な情報は得られた?」
「風紀委員室内に関しては特には。ただ学園のネットワークシステムを見る限り
重要な書類は生徒会室に集約されているみたいです」
「とすると生徒会室に忍び込む必要がありそうね」
「ええ。ですが入室権限があるのは役員以上の生徒のみ」
「生徒会長に副会長、あとは風紀委員長ね」
「はい」
「学園のビックスリー。正直、正面突破は不可能ね」
「生徒会室への入室は専用のカードキーが必要になります。入手できる可能性がある
のは風紀委員長の染谷ゆづはですが…………」
「当然肌身離さず持っているわよね」
仮に無事カードキーを入手できたとしても、生徒会室に侵入している間にカード
キーがないことがバレては意味がない。
できれば隠密に、危険を冒すことなく生徒会室に侵入したい。
「仕方ない。奴を頼るか」
そうして俺はスマホを取り出し、ある人物に連絡を取る。
そう――――情報屋だ。
「――――ということなんだが」
連絡を取るや否や用件だけを手短に話し返答を伺う。
『話は分かった。つまり生徒会室に潜入する為のアイデアを寄こせということだな』
「そういうことだ」
『全く。久々に連絡が来たと思ったら、情報屋使いの荒い奴だぜ』
「それでいい案はあるのか?」
『…………』
情報屋はしばらく黙り込み熟考する。
『あるにはある』
「本当か」
『あぁ。だが問題もある』
続けて情報屋。
『遠乃緋音、そこにいるか』
「ええいるけど…………私に何か?」
『お前、最上司が好きか?』
「ふぇ!?」
思わぬ言葉に先輩が狼狽する。
「おい、なんのつもりだ。ふざけているのか」
『冗談ではないぞ。真面目な話だ』
「――――?」
『私の提案する作戦。それは染谷ゆづはとのデートでカードキーを奪っちゃおう
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