魔術師たちに革命を

諸星影

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ROUTE2(風紀委員会潜入編)

2-03  委員長の名は染谷

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「俺を知りたい――――?」
「はい」

 カチャリと持っていたカップをテーブルに置き、
 数秒の沈黙をものともせず桐花は続ける。

「魔術師科二年の学年委員、初風愛唯さんの持論はご存じですか?」
「確か、魔術はその人の内面を表す鏡みたいなもの――――だったか?」
「そうです。私、あの持論がとても好きなんですよ」
「まさか天下の生徒会長もそういう非科学的な話が好きだったとはな」
「けれど言いえて妙だとは思いませんか」
「どうだかな。実際俺にはピンとこない」
「そうですか」

 するとその時、コンコンッと生徒会室の扉がノックされる。

「おや来たようですね」

 そういうと桐花は扉の方を見やる。
 俺もまた彼女の瞳を追うようにして視線を流すと一人の女性が
 生徒会室に入ってくる。

「会長、お待たせしました」
「紹介します先輩。こちら我が生徒会の一員であり、現風紀委員長の――――」
「染谷ゆづはです」

 その女性を見てまず最初に思い浮かんだのは品行方正、清廉潔白を体現した様な
 美しい所作を持ち合わせた人という印象だった。

「(これが風紀委員長――――)」

「君が最上司君ね」
「はい」
「そう硬くならないでいいのよ。知らないかもだけど私たち同級生だから」
「じゃあ染谷さんも二年生なんだね。
 ごめん、授業で見かけたことなかったから知らなくて」
「気にしないで。委員長の仕事であまり授業には参加できてないだけだから。
 それよりも――――」

 と染谷は桐花の方に体を向ける。

「会長、もう一度確認しますがいいんですね。彼を私の補佐にして」
「構いませんよ、むしろあなた以外に適任はいないと考えています」
「――――そうですか」

「では最上君、早速だけど私に付いてきてくれる」
「分かった。それじゃあ桐花、またな」
「はいまた」


   ◇


 そうして生徒会室を後にしてしばらく。
 俺は風紀委員長である染谷ゆづはに連れられ風紀委員会室へとやってきていた。

「風紀委員会の所有箇所はここと隣の会議室、それと校舎裏の倉庫の合計三つ。
 そして君と私の仕事場はこっち」
「了解した」

 そして部屋に入り最奥にある『風紀委員長』と書かれた卓上ネームプレートの
 あるデスクの横。そこが僕の席だと説明される。

「ところでさっき俺が君の補佐って話をしてたけどそれって本当なの?」
「ええ。仮入隊ではとても異例のことだけどね。ともあれ風紀委員は年中人手不足
 だから優秀な人材を雑用には裂けないから仕方ないかもだけど」
「そんな風には見えないけどな」
「それだけみんながよくやってくれているってことね。だから正直君が来てくれて
 助かるわ」

「さっき桐花が仕事をしているのも見たが、生徒会っていうのは随分忙しいんだな」
「そうね。まぁ会長と比べるとあれだけど風紀委員もやることは多いかもね」

「…………でも最近じゃ斬裂魔も現れてはいないんだろ?」
「斬裂魔ね。確かに事件が沈静化して落ち着いたけど、犯罪者は斬裂魔だけ
 じゃないからね」
「――――それもそうだな」

 魔術特区内では格差だけでなく様々な企業間の思惑も動いている。
 悪人というのはそういった綻びを決して見逃さない。
 そう考えると少しでも隙を見せれば将来的にはこの特区を
 維持できなくなる可能性も出てくる。

 それは多くの学生を抱える生徒会や治安維持を生業とする風紀委員会としては
 望むとろこではないだろう。

 だからこそ風紀委員会は常にこの動向に目を光らせなければならず、
 人員はいくらいても事足りないということか。

「(通りで校内で風紀委員のメンバーを見かけるのが少ないと思ったよ)」

 しかしこれは逆に風紀委員の内情を知るチャンスだともいえる。
 加えて風紀委員長の補佐というポジションも得られたのは吉兆だった。

 ここで染谷ゆづはからの信頼が得られれば目的に一歩近づくはずだ。

「そういうことなら遠慮なく俺を使ってくれ。
 書類作業や雑用なら一家言あるからな」
「そうさせてもらうわ」

 こうして俺は風紀委員会に仮入隊として潜入することに成功したのだった。
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