魔術師たちに革命を

諸星影

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ROUTE2(風紀委員会潜入編)

2-01  探し物は何処へ

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 先輩とデートの日から数日後。
 俺は現在、学園の中でも限られた人間しか入室を許されない場所へと
 向かっていた。

 そう生徒会室である――――。

「(まさかこうも早く生徒会室に入室できる日が来るとはな…………)」

 なんてことを考えつつ今後の対策を考えるながら歩く。
 とその前にどうして突然生徒会室への入室許可が下りたのかというと、
 今から数日前に遡る。

「風紀委員会に潜入ですか?」
「ええ」

 放課後、遠乃先輩からいい作戦を思いついたという連絡を受けた俺は、
 呼び出された今は使われていない裏門の前で彼女の言った言葉を反芻する。

「そんなことできるんですか?」
「できる」

 そう言い切る先輩の表情や言葉から嘘は感じられない。
 どうやら何か方法があるらしい。

「これ見て」

 そういって先輩がポケットから取り出した用紙を確認する。

「風紀委員会仮入隊制度?」
「そうよ。風紀委員会には昔から分野問わず優秀な功績を挙げた生徒を対象に
 委員会への仮入隊を認める制度があるの」
「仮入隊――――でも俺、別にそんな功績を挙げた覚えもないですが」
「いいえ、一つだけあるわ。君は公園で私と魔導師科の生徒を一人助けている。
 それは立派な功績よ」
「そうなんですか?」
「もちろん魔導師科トップである私の推薦が不可欠でしょうけど、
 助けた生徒にも既に話は通してある。あとは司くんの意思次第」

「…………」

「――――分かりました。その推薦お受けします」

 と、いう流れで現在に至るというワケだ。

 ハッキリというが先輩の提案したこのアイデアは正直アリだと思った。
 推薦理由も申し分ないし先輩との関係を勘繰られる可能性も低い。

 そして何より信用するようになったとはいえ情報屋頼みの調査ではどちらにしろ
 限界があっただろうし、自分から調査に乗り出せる状況はこちらとしては
 むしろ有難い。

 とはいえ懸念点があるとするならば、仮入隊制度は風紀委員会への
 準メンバーとして奉仕する内申点向きの制度。正規メンバーとは
 そもそもからして仕事内容が違うだろうし、もしかしたらあまり
 有力な情報は得られないかもしれないということだろうか。

「うーん」
「お?」

 すると学園内、生徒会室のある中央校舎に向かう道中で
 草むらからぴょこぴょこと頭を上下に揺らす一人の女子生徒を発見する。

「時間は……まだあるな」

 仮とはいえ風紀委員会に推薦される生徒として困っている
 生徒を放置するというのは些か印象が悪い――――。

「(仕方ない)」

 生徒会がいつどこで監視の目を光らせているかわからないし、
 時間があるなら積極的に人助けでもしてポイントを稼いでおくのも
 一つの手だろう。と思い彼女に近づく。

「あの――――」
「わっ!」

 出来るだけ脅かさないようにと心がけたつもりだが、
 声を掛けた瞬間、目の前の彼女は大きな声を響かせ飛び跳ねる。

「わわ、びっくりした――――!」
「悪い。脅かすつもりはなかったんだ」
「あ、いえこちらこそすいません。気配に気が付かなくて」

 取り乱して乱れた髪を手櫛で治しつつ立ち上がる女子生徒。

「(魔導師科…………リボンの色からして一年か)」

「その校章とネクタイの色からしてあなたは魔術師科の二年生ですか?」
「あぁ、最上司だ」
「私は沢城歌恋です」
「よろしく沢城さん。ところで今、何か探していたようだけど?」
「あ、そうでした!」

 そういうと沢城は再び草むらにしゃがみ込む。

「良ければ手伝おうか?」
「いえ結構です」
「そういわずにさ。何探してるの?」
「…………」

「…………ネックレスです」
「ネックレス?」

「さっきこう前のめりに転んでしまって、その時にチェーンが切れてどこかに飛んで
 いってしまったみたいなんです」
「それは大変だ。飛んだのはこっちらへん? 俺も探すのを手伝うよ」
「どうしてそこまで……魔導師科の生徒を助けてもいいことはないですよ?」
「魔導師科とか魔術師科とかそんなのは関係ないよ。
 俺にとって人助けは打算だけれども、そこに人種や立場なんてものは
 何もないのさ」
「じゃあ私を助けるのも打算?」
「そうだね。生徒会にいい印象を持ってもらう為の打算」
「…………」

「思い出しました。最上司、学校中で噂になっている転校生の人ですね」
「個人的にはあまり噂にはなってほしくないんだがね」
「最近でいうと魔導師科の生徒をカツアゲから守ったらしいですね」
「成り行きでね」
「――――そうですか」

「あ、あった。これ、君のじゃない?」
「あーそうですそうです。これです。良かったー見つかって」

 芝生の中から銀色のネックレスを拾い上げ彼女に渡す。

「もうなくしちゃダメだよ」
「はい。ありがとうございます」

 お礼を言うと彼女は深々とお辞儀をしその場を後にした。
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