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リューシャ編
31話
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「…まあ、なんで俺の名前も知ってるのかは聞かないでおくよ。なんとなく理由は察するしね」
「勘が鋭いと楽なようで厄介ですね」
にこりと笑う青年にスカイは感情の欠片すら見せずに言う。
「別に、そんな風に言われたらだいたい察する人は察するでしょ。【ランスムーン・グレイド】」
スカイが伸ばした右手からほとんど不意打ちのように氷が放たれた。が、氷を青年はよけるそぶりを見せず、右手を前にかざした。すると氷はなにかにぶつかり、光を反射して煌めきながら散った。
「…ひどいですよ?僕、不意打ちなんて一度もしたはずないんですけど?」
「していようとしていなかろうと俺は不意打ちをしたつもりはない。あんたが注意散漫になっていただけの話。それに当たってないから不意打ちでもなんでもないでしょ」
「…厳しいですねぇ、スカイさん。」
そう言う青年の伸ばした右手の先には凍りついた木が立っていた。
「…木の、物質魔法……その魔法で、ほんとに俺に勝てる自信があるのか怪しいとこだけど、俺には関係のないことだね」
そう言うスカイに青年は右手を上に伸ばしながら言った。
「スカイさんに勝つ自信?そんなものは必要ないですよ。【ウッディスト・レムナード】」
すると床から木が幾つも生え、スカイと青年の立つ間をほとんど埋め尽くした。
″…俺の視界を狭めて、不利にさせる気…?″
「スカイさん、魔法って、正面からぶつけて威力や効果的な問題で勝敗が決まるだけのものじゃないんですよ。」
木の間から怪しい笑みをこちらへ向け、青年は右手を持ち上げる。
「…魔法の使い方によっても、勝敗って、大きく変わるんですから」
青年が指を鳴らすと、新たな木が下から生え、その一部がスカイに向かっていった。
「…使い方…か。俺もそこそこ使い方は応用してると思うんだけどね」
ちらりとリリエの方を見やり、スカイは右手を前にかざして呟いた。
「…俺だって、色々と諸事情あって能力をセーブしてるんだよ。【レリアヒュー・フローズン】」
その一言で床が一気に凍りつき、木だけを器用に避けながら青年の立つ方へと氷は迫っていった。
「…木だけ凍らせずに魔力消費の削減をして、僕に攻撃するつもりだったんだと思いますが、僕がそんなのに引っ掛かるとでも?」
青年は木の上を飛び移りながら、スカイの方へと向かってきていた。しかしスカイはそんなことに少しも動じない。
「…引っ掛かるとは思わないけど、」
青年の返事を待たず、スカイは右手を上に振り上げた。すると床に張られていた氷が青年の方へと飛び上がるように放たれた。
「!」
「俺だってこういうことくらいはできるって教えようと思っただけ。」
「でも、こんな攻撃簡単に避けられますよ?」
青年は木の上からジャンプし元々いた場所に下り立つと、床を強く蹴って木を操作して動かし、氷を避けながらスカイの方へ向かってくる。
「…それはそうだよ。それ、当てるつもりで放ったものじゃないし」
スカイはジャンプして先程まで青年の立っていた反対側へと行くと、左手を払う。その瞬間に木は氷に包まれ、スカイが指をならすと砕け散った。
「へぇ…僕の木を壊すためにやったってことですか」
「大体予想はついてたんじゃないの?」
スカイは青年の後ろをとると、蹴りを入れようとするが青年は飛び上がりスカイから距離をとった。
「…でも、魔法で、戦わないんですね」
笑って言う青年に相変わらず全く崩れない無表情を向ける。
「…そっちが魔法を使わずに、超近距離戦を仕掛けてくるんだから魔法が逆に危ないだけ」
「やっぱり、経験がものを言ってますね、スカイさん。理由が論理的です。」
「…はぁ、よくもそんな偉そうにものが言えるよ。」
今度はスカイが床を強く蹴った。ある程度の距離まで青年に近付くと、スカイは右手を前に伸ばす。
「【ルーニムクト・ブリーズ】」
氷がスカイの手から放たれる。しかし青年はそれを軽やかにステップを踏むと避け、一瞬でスカイの右側へ回ると蹴りを放った。
「っ!」
青年の動きに反応するとスカイは後ろへと飛び退いた。
「…まさか、魔力なしでそんなに動ける者がいたとはね。」
「スカイさん、知ってると思いますけど、戦いって、全部が全部、魔法の打ち合いで終わるだけの物ではないんですよ。」
「それが、何」
「……僕は、僕の種族は人なんです。」
青年はふと、そう言った。
「種族が人だから、魔法を使うことにあまり慣れてもいない。だから、魔法面ではほとんど役に立たず、魔法を簡単に扱える者が羨ましかった…でも、幼いときから体術を教え込まれていたこと、ただそれだけが僕の闘う者としての価値を見出だしてくれたんです。………まあつまり、僕は魔法より肉弾戦の方がはるかに強いってことです!」
そう言うとスカイに青年は真っ直ぐ向かっていく。
「突然何を言うかと思ったら………けど、魔法が簡単に扱えても、その他が妙に逸脱していれば、畏怖され虐げられる。この世界は、あんたみたいに種族相応の戦い方が出来ないと、逆に種族全体から拒否されるようになるんだ。下手に魔法を扱おうとする必要はないと思うよ。」
「フォローの言葉なんて今の僕には必要ありません!ここで僕は、スカイさんを倒すんです!」
「…俺を元々狙ってたみたいに言うね。そんなことないだろうけど。それに、今の言葉はフォローのつもりじゃないけど。」
″…スカイ…?″
青年の攻撃を受ける今のスカイはいつも通りだが、先程の言葉を話しているときのスカイの目には、遠くから見ているリリエでもはっきり分かるほどの陰りがあった。
″まるで、自分にそんな経験があるかのように…スカイの過去に、何かそんなことがあったの…?″
リリエはそう心配そうにスカイと青年のぶつかり合いを見つめた。
「勘が鋭いと楽なようで厄介ですね」
にこりと笑う青年にスカイは感情の欠片すら見せずに言う。
「別に、そんな風に言われたらだいたい察する人は察するでしょ。【ランスムーン・グレイド】」
スカイが伸ばした右手からほとんど不意打ちのように氷が放たれた。が、氷を青年はよけるそぶりを見せず、右手を前にかざした。すると氷はなにかにぶつかり、光を反射して煌めきながら散った。
「…ひどいですよ?僕、不意打ちなんて一度もしたはずないんですけど?」
「していようとしていなかろうと俺は不意打ちをしたつもりはない。あんたが注意散漫になっていただけの話。それに当たってないから不意打ちでもなんでもないでしょ」
「…厳しいですねぇ、スカイさん。」
そう言う青年の伸ばした右手の先には凍りついた木が立っていた。
「…木の、物質魔法……その魔法で、ほんとに俺に勝てる自信があるのか怪しいとこだけど、俺には関係のないことだね」
そう言うスカイに青年は右手を上に伸ばしながら言った。
「スカイさんに勝つ自信?そんなものは必要ないですよ。【ウッディスト・レムナード】」
すると床から木が幾つも生え、スカイと青年の立つ間をほとんど埋め尽くした。
″…俺の視界を狭めて、不利にさせる気…?″
「スカイさん、魔法って、正面からぶつけて威力や効果的な問題で勝敗が決まるだけのものじゃないんですよ。」
木の間から怪しい笑みをこちらへ向け、青年は右手を持ち上げる。
「…魔法の使い方によっても、勝敗って、大きく変わるんですから」
青年が指を鳴らすと、新たな木が下から生え、その一部がスカイに向かっていった。
「…使い方…か。俺もそこそこ使い方は応用してると思うんだけどね」
ちらりとリリエの方を見やり、スカイは右手を前にかざして呟いた。
「…俺だって、色々と諸事情あって能力をセーブしてるんだよ。【レリアヒュー・フローズン】」
その一言で床が一気に凍りつき、木だけを器用に避けながら青年の立つ方へと氷は迫っていった。
「…木だけ凍らせずに魔力消費の削減をして、僕に攻撃するつもりだったんだと思いますが、僕がそんなのに引っ掛かるとでも?」
青年は木の上を飛び移りながら、スカイの方へと向かってきていた。しかしスカイはそんなことに少しも動じない。
「…引っ掛かるとは思わないけど、」
青年の返事を待たず、スカイは右手を上に振り上げた。すると床に張られていた氷が青年の方へと飛び上がるように放たれた。
「!」
「俺だってこういうことくらいはできるって教えようと思っただけ。」
「でも、こんな攻撃簡単に避けられますよ?」
青年は木の上からジャンプし元々いた場所に下り立つと、床を強く蹴って木を操作して動かし、氷を避けながらスカイの方へ向かってくる。
「…それはそうだよ。それ、当てるつもりで放ったものじゃないし」
スカイはジャンプして先程まで青年の立っていた反対側へと行くと、左手を払う。その瞬間に木は氷に包まれ、スカイが指をならすと砕け散った。
「へぇ…僕の木を壊すためにやったってことですか」
「大体予想はついてたんじゃないの?」
スカイは青年の後ろをとると、蹴りを入れようとするが青年は飛び上がりスカイから距離をとった。
「…でも、魔法で、戦わないんですね」
笑って言う青年に相変わらず全く崩れない無表情を向ける。
「…そっちが魔法を使わずに、超近距離戦を仕掛けてくるんだから魔法が逆に危ないだけ」
「やっぱり、経験がものを言ってますね、スカイさん。理由が論理的です。」
「…はぁ、よくもそんな偉そうにものが言えるよ。」
今度はスカイが床を強く蹴った。ある程度の距離まで青年に近付くと、スカイは右手を前に伸ばす。
「【ルーニムクト・ブリーズ】」
氷がスカイの手から放たれる。しかし青年はそれを軽やかにステップを踏むと避け、一瞬でスカイの右側へ回ると蹴りを放った。
「っ!」
青年の動きに反応するとスカイは後ろへと飛び退いた。
「…まさか、魔力なしでそんなに動ける者がいたとはね。」
「スカイさん、知ってると思いますけど、戦いって、全部が全部、魔法の打ち合いで終わるだけの物ではないんですよ。」
「それが、何」
「……僕は、僕の種族は人なんです。」
青年はふと、そう言った。
「種族が人だから、魔法を使うことにあまり慣れてもいない。だから、魔法面ではほとんど役に立たず、魔法を簡単に扱える者が羨ましかった…でも、幼いときから体術を教え込まれていたこと、ただそれだけが僕の闘う者としての価値を見出だしてくれたんです。………まあつまり、僕は魔法より肉弾戦の方がはるかに強いってことです!」
そう言うとスカイに青年は真っ直ぐ向かっていく。
「突然何を言うかと思ったら………けど、魔法が簡単に扱えても、その他が妙に逸脱していれば、畏怖され虐げられる。この世界は、あんたみたいに種族相応の戦い方が出来ないと、逆に種族全体から拒否されるようになるんだ。下手に魔法を扱おうとする必要はないと思うよ。」
「フォローの言葉なんて今の僕には必要ありません!ここで僕は、スカイさんを倒すんです!」
「…俺を元々狙ってたみたいに言うね。そんなことないだろうけど。それに、今の言葉はフォローのつもりじゃないけど。」
″…スカイ…?″
青年の攻撃を受ける今のスカイはいつも通りだが、先程の言葉を話しているときのスカイの目には、遠くから見ているリリエでもはっきり分かるほどの陰りがあった。
″まるで、自分にそんな経験があるかのように…スカイの過去に、何かそんなことがあったの…?″
リリエはそう心配そうにスカイと青年のぶつかり合いを見つめた。
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