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リューシャ編
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「…ううんっ…」
外の朝日を浴び、まだ半分眠っている脳を叩き起こそうと伸びをする毛先に少しウェーブのかかった綺麗な茶色い髪をもつリリエ・レスタナーは右手を昇ったばかりの太陽にかざすように向け、呟く。
「…おはよう」
その呟きと共に遠くから竜が飛んでくる。竜は高く広い空を切り裂くように飛び、それをなんとなく見送ってから、リリエは少しカールする茶色の髪をふわりと揺らし、家の中へ戻った。
「…リューシャ!今日は皇都に行くって言ってたでしょ?早く起きて!」
家に戻るとすぐ、近くでまだ寝ているであろう友達の竜、リューシャに呼び掛ける。
「…きゅるるぅ…」
可愛らしくいかにも寝起きという声をあげ、部屋に置いた机の下から白銀色の竜、リューシャがゆっくりと出てくる。
「リューシャ。ほら、おいで?皇都に行きたくないの?」
「きゅ、きゅるあ!」
リリエのその言葉でリューシャは慌てて走ってきて、その様子に笑いながらリリエはリューシャを抱いて、家を出た。
リューシャとリリエの出会いは、つい2年前だった。その時リリエは森を歩いていて、道に迷った様子のリューシャに出会った。そして名前がなかったリューシャに今の名を付け、その日から一緒に暮らし始めた。なぜリューシャのような竜が、森で道に迷っていたのかはリリエには今でも分からない。でも、リリエはあのときリューシャに出会って良かったと強く思っている。なぜなら、リューシャと一緒に暮らすようになって、笑えることが増えたから。前までは、いつもどんなときでもリリエ一人で楽しいことも殆どなく、笑えるようなことなど勿論無かった。が、そこにリューシャがやって来たことによって、日々が楽しく輝くようになった。リューシャがリリエに与えた影響は大きく、その影響の大きさにリリエも気づいている。だから、リリエは常にリューシャと会えて良かったと思うのだ。それは、皇都に向かって歩く今だってそうだった。
「…ありがとう。私のところに来てくれて。」
「きゅう?」
リリエの呟きが聞こえたのかリューシャはリリエの方を見て、首をかしげる。そのようすに笑いかけて、リリエは返した。
「なんでもないよ」
皇都は相変わらずの賑わいを見せており、人もそこそこ多かった。しかしリリエには人が多かろうと少なかろうと関係はない。なぜなら、竜であるリューシャを連れていれば人は皆、驚きと少しの怯えで道をあけるから。
「リューシャはなにも恐いことなんてしないのにね」
「きゅぅぅぅ…」
リリエの言葉に落ち込んだ声を出すリューシャ。
「でも、大丈夫だよ。私がずっと一緒にいるから」
「きゅるぅっ!」
リリエがそう言ったことにより、リューシャは嬉しそうに笑って鳴いた。
「そういえば、今日は普段より人が少ない気がするな…なんでだろう?」
「きゅう?きゅうぅぅぅぅ…」
リリエの問いに真剣に考え出すリューシャを見て笑みを浮かべ、リリエは言った。
「まあ、考えても絶対分からないだろうから、無理に考えなくてもいいよ」
「きゅうっ!」
リューシャの一つ一つの返事の可愛らしさに内心癒されながら、たいした用はないものの、皇都をのんびりと歩いていた。
「今日も平和だねー」
そう呟いたその時、後ろから声が聞こえた。
「すまないが、道を開けてくれ!竜の使いの者たちが城に用があるのだ!」
その言葉に近くにいた人々は道をあけ、リリエもリューシャをだいたまま道の端へと避けた。人がきれいに避けてできた道を人に変身した竜の使い2人が通りすぎていく。ふと、その内の1人が何かを感じたかのようにちらりとリューシャとリリエの方に視線を向けた。
「…っ?!」
その目にリリエは異様なほどの違和感を覚え一瞬固まったが、その違和感の大きさに耐えきれずリリエはその目と違和感から逃げるように敢えて人混みの中へと飛び込むように紛れていった。
「……」
しかし、使いの者は意味深な目でリリエとリューシャが消えていった人混みをしばらくじっと見つめていた。
「…な…なに…?あの使いの1人…何かの気配を感じたかのように…。!もしかして…リューシャ…?」
「きゅう…?」
リリエの言葉に不安そうな声を出すリューシャ。リリエはそこでリューシャに心配をかけると思い、笑って言った。
「ううん。そんなこと無いもんね。リューシャはまだ子どもだし、偶然だよ、きっと」
「きゅるぅ!」
リューシャが元気そうに鳴いたのを見て、リリエはは微笑んだ。が、竜の使いの者に見られたときの違和感は消えず、城の方を一瞥すると、早足で皇都を出た。家に帰ってもその違和感は残ったままで、リリエはたまらず家を飛び出し、リリエの唯一の知り合いである人物の家へと向かった。その家に着くとドアをノックして待った。その人物が家から出て来るのを待つ間も、違和感は消えずに不安が募るばかりだった。数秒待って、出てきたのは5歳ほど年上くらいの深緑色の髪をもつ、ルクト・サーフィラー。
「…リリエ…?どうかしたか?そんな不安そうな顔をして」
「…ルクト…今、大丈夫…?」
リリエの言葉で目を見開くルクト。
「…何が、あったんだ?」
そうリリエにルクトは神妙な面持ちで問いかけた。
外の朝日を浴び、まだ半分眠っている脳を叩き起こそうと伸びをする毛先に少しウェーブのかかった綺麗な茶色い髪をもつリリエ・レスタナーは右手を昇ったばかりの太陽にかざすように向け、呟く。
「…おはよう」
その呟きと共に遠くから竜が飛んでくる。竜は高く広い空を切り裂くように飛び、それをなんとなく見送ってから、リリエは少しカールする茶色の髪をふわりと揺らし、家の中へ戻った。
「…リューシャ!今日は皇都に行くって言ってたでしょ?早く起きて!」
家に戻るとすぐ、近くでまだ寝ているであろう友達の竜、リューシャに呼び掛ける。
「…きゅるるぅ…」
可愛らしくいかにも寝起きという声をあげ、部屋に置いた机の下から白銀色の竜、リューシャがゆっくりと出てくる。
「リューシャ。ほら、おいで?皇都に行きたくないの?」
「きゅ、きゅるあ!」
リリエのその言葉でリューシャは慌てて走ってきて、その様子に笑いながらリリエはリューシャを抱いて、家を出た。
リューシャとリリエの出会いは、つい2年前だった。その時リリエは森を歩いていて、道に迷った様子のリューシャに出会った。そして名前がなかったリューシャに今の名を付け、その日から一緒に暮らし始めた。なぜリューシャのような竜が、森で道に迷っていたのかはリリエには今でも分からない。でも、リリエはあのときリューシャに出会って良かったと強く思っている。なぜなら、リューシャと一緒に暮らすようになって、笑えることが増えたから。前までは、いつもどんなときでもリリエ一人で楽しいことも殆どなく、笑えるようなことなど勿論無かった。が、そこにリューシャがやって来たことによって、日々が楽しく輝くようになった。リューシャがリリエに与えた影響は大きく、その影響の大きさにリリエも気づいている。だから、リリエは常にリューシャと会えて良かったと思うのだ。それは、皇都に向かって歩く今だってそうだった。
「…ありがとう。私のところに来てくれて。」
「きゅう?」
リリエの呟きが聞こえたのかリューシャはリリエの方を見て、首をかしげる。そのようすに笑いかけて、リリエは返した。
「なんでもないよ」
皇都は相変わらずの賑わいを見せており、人もそこそこ多かった。しかしリリエには人が多かろうと少なかろうと関係はない。なぜなら、竜であるリューシャを連れていれば人は皆、驚きと少しの怯えで道をあけるから。
「リューシャはなにも恐いことなんてしないのにね」
「きゅぅぅぅ…」
リリエの言葉に落ち込んだ声を出すリューシャ。
「でも、大丈夫だよ。私がずっと一緒にいるから」
「きゅるぅっ!」
リリエがそう言ったことにより、リューシャは嬉しそうに笑って鳴いた。
「そういえば、今日は普段より人が少ない気がするな…なんでだろう?」
「きゅう?きゅうぅぅぅぅ…」
リリエの問いに真剣に考え出すリューシャを見て笑みを浮かべ、リリエは言った。
「まあ、考えても絶対分からないだろうから、無理に考えなくてもいいよ」
「きゅうっ!」
リューシャの一つ一つの返事の可愛らしさに内心癒されながら、たいした用はないものの、皇都をのんびりと歩いていた。
「今日も平和だねー」
そう呟いたその時、後ろから声が聞こえた。
「すまないが、道を開けてくれ!竜の使いの者たちが城に用があるのだ!」
その言葉に近くにいた人々は道をあけ、リリエもリューシャをだいたまま道の端へと避けた。人がきれいに避けてできた道を人に変身した竜の使い2人が通りすぎていく。ふと、その内の1人が何かを感じたかのようにちらりとリューシャとリリエの方に視線を向けた。
「…っ?!」
その目にリリエは異様なほどの違和感を覚え一瞬固まったが、その違和感の大きさに耐えきれずリリエはその目と違和感から逃げるように敢えて人混みの中へと飛び込むように紛れていった。
「……」
しかし、使いの者は意味深な目でリリエとリューシャが消えていった人混みをしばらくじっと見つめていた。
「…な…なに…?あの使いの1人…何かの気配を感じたかのように…。!もしかして…リューシャ…?」
「きゅう…?」
リリエの言葉に不安そうな声を出すリューシャ。リリエはそこでリューシャに心配をかけると思い、笑って言った。
「ううん。そんなこと無いもんね。リューシャはまだ子どもだし、偶然だよ、きっと」
「きゅるぅ!」
リューシャが元気そうに鳴いたのを見て、リリエはは微笑んだ。が、竜の使いの者に見られたときの違和感は消えず、城の方を一瞥すると、早足で皇都を出た。家に帰ってもその違和感は残ったままで、リリエはたまらず家を飛び出し、リリエの唯一の知り合いである人物の家へと向かった。その家に着くとドアをノックして待った。その人物が家から出て来るのを待つ間も、違和感は消えずに不安が募るばかりだった。数秒待って、出てきたのは5歳ほど年上くらいの深緑色の髪をもつ、ルクト・サーフィラー。
「…リリエ…?どうかしたか?そんな不安そうな顔をして」
「…ルクト…今、大丈夫…?」
リリエの言葉で目を見開くルクト。
「…何が、あったんだ?」
そうリリエにルクトは神妙な面持ちで問いかけた。
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