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幼少編

フェリエッタ(10才)とみんなの成長

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  さてと、月日が流れるのは意外と早かった。
  我は10才になった。フフフフ、そして、必殺技を先日、完成させた。兄上と再戦した時に御披露目するのが楽しみである。
  さてと現在、我、レミィ、グラム、カエデと父上でゴブリンとオークの群れを掃討中である。
  なぜ?  と聞かれたら『ヴォルトもそろそろ街として登録した方がいいかな?』と言う村長、というか父上の…そう、父上は村長だったのである。それを聞いたら『アレ?  言ってなかったかな?』と普通に返された。まぁ、そんな父上の発言により辺境伯を手紙を送ったところ視察に来るという触れを受け準備をしていたところ到着を見守るために見張りをしていた我らが襲撃を受けている馬車を発見。救援のため急ぎ駆けつけると襲われているのは騎士団であり辺境伯。敵は、豚の頭で2mを超える体躯をもつオークと緑色の皮膚で子供のような身長と醜悪な顔と角をもつゴブリンの混成の妖魔がざっと百匹程度、我々なら雑作も無き事、というわけで我、推して参る。

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  オークとゴブリンの猛攻を盾で防ぎながら辺境伯の馬車を護衛する一人の若い騎士、名前はジェイクロフト、今年の春に見習いからようやく騎士に成ることができた青年である。今回の襲撃は予想外というわけでもなく、いくつか在る可能性の一つではあった。ただ想定外だったのは斬っても斬っても更に、敵の士気が下がらず襲い続けて来る事だった。オークやゴブリンに遅れをとる事は平常ならないが人には限界がある。体力が落ちれば徐々に押し込まれる。経験豊富な先輩騎士達はまだ持ちこたえる事が出来てはいるが経験の浅いジェイクロフトは呼吸が乱れ剣筋が乱れる。だが、それだけならまだいい。ゴブリンの何度目かもわからない棍棒による打撃を盾で受けるがたたらを踏んでしまう。そこにオークが戦斧が振り下ろされる瞬間
「プラントプロテクション」
  この場には相応しくない。まるで天上の調のような静かではあるがしっかりとその存在を認識させる声が確かに聞こえると襲い掛からんとする凶刃からジェイクロフトを守るように蔦の盾が凶刃を防ぐ。
「お怪我はありませんか?」
「ひゃい」
  そこに姿を表したのは絶世の美少女という言葉すら霞むほどの美少女がそこにいた。東洋の島国の着物と呼ばれる民族衣装と不釣り合いに高い履き物を履き、雨でもないのに不思議な傘を差す姿はごく自然であり一枚の絵画のようでもある。そして幼い姿なのに、どこか艶やかさあり、特に色ぽさがある主に座骨のラインが! ジェイクロフトは強く思った。
「ひ、ふ、み、よ…うん、この数なら大丈夫かな?」
  その仕草一つ一つが色気がある。
「メス、オカス」
  オークは好色だ。この反応は当然といえる。そもそもオーク、ゴブリンは雌の個体が少なく他種族を孕ませて繁殖する。その本能は種族を超えた美しい少女に向くのは必然であった。
「ぼ、僕は男だ!!」
  少女の突然の叫びに
(((ボ、ボクハ、オトコダ? 何かの呪文?)))
  この場にいる、戦場でありながら騎士達一同は首をかしげた。
「地に根座せしモノ達よ。我が敵を貫け『グラスリッパー』」
  半泣きしながら、傘の先で地面を突く。それに呼応するかのように草が伸びオークやゴブリンを切り裂き血渋きが舞う。その光景は凄惨ではあるがその中を舞う少女の姿に騎士達は見とれてしまった。
「うぅぅ、僕は男なのに…」
  少女は血渋きの舞いは始まったばかり、刈り取る毒草はまだまだあるのだから

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  少し離れた場所では
「あぁ、またカエデがキレてないか?」
  自身の身長を二周りはある大剣を片手で軽々振り回す少年と
「たぶん、また女の子扱いされたんでしょ?」
  黒く長いを巧みに操りゴブリンを薙ぎ倒していく少女
「だろうな。それにしてもコイツら、おかしくないか?」
「そうね。色々気になるけど…まぁ、それよりもあの黒オーク、たぶんジェネラル。しかも鼻と額に白い菱形。あれ、パパから聞いた六白華とか言うオークエリートだったかしら?」
  何気ない会話をしながら次々に薙ぎ倒し切り開く。
「いいなぁそれ、あぁ、戦いたいな。なぁ?」
「はいはい、道は作ってあげるわよ。こんな連中に私のホウキを使うのはもったいないけど、いいわ。アレ相手にするのめんどくさいから使ってあげる」
  優雅に杖の先端をオークジェネラルに向け水平に構える。
「マルチロック展開、術式炎操界えんそうかい。奏でなさいブリュナーク」
  ホウキは法器にして砲器、魔砲使いであるレミリアの唯一無二の片割れ、マジックブルーム『ブリュナーク』希少な素材で作り上げた彼女渾身の相棒から炎の流星の弾丸は一切合切、有象無象区別なく、ジェネラルをのぞく、オークもゴブリンを全て焼き付くした。
「はい、おしまい。カッコいいとこ見せてくれるんでしょ?  グラム?」
「まぁ、アレくらいに苦戦する気はないな」
  部下を消し炭にされてもジェネラルは動じることなくハルバードを構えていた。ちなみにジェネラルの危険度は十段評価でⅤ、C級冒険者の標準的なパーティーで死者を含む犠牲覚悟で討伐できれば僥倖、B級冒険者のパーティーですら無傷での勝利は難しい。そう、それほどの難敵、普通なら10才の少年がまともに戦えるはずがない。そうなら。
  つまり、グラムは普通ではない少年。そもそも本人は知らないが龍人族のある血系に連なる。そして、その才は
「グオォォォ」
  あっさりとジェネラルを切り伏せるほどの才をもつ
「おら、大将。どうした?  テメェは大将なんだろう?  こんなもんじゃないだろ?」
  口は悪いが構えに油断も隙もない。未だ完成のみえないなれどもその戦いには十二分に未来の英雄としての貫禄があった。
  しかしオーク・ジェネラルも並みの魔物とは格も経験も違う。ワイバーンをも両断するグラムの一撃、それを皮一枚斬られた程度で起き上がる。
「小僧、いやお主を侮りあの様な攻撃失礼であった。ワレは元黒十こくと将軍の一人戦風鬼ヨーグ。仕切り直して、全力でいかせていただきたい」
  下位のオークは知性は低く欲望に忠実である。ただし、中位クラスならある程度の知性と理性をもち上位なら高い知性をもつ者も珍しくない。
「意外だな。オークが名乗りを上げるなんて。けど、嫌いじゃない。いや、むしろ好感が持てる。いいぜ。俺は龍人のグラム。まだ、二つ名はないが、いずれこの名を世界に響かせる男だ。そして、俺の愛剣の名は封魂剣ノートゥング。コイツはだが文句はあるか?」
「否、むしろ喜ばしい」
  ギフト、それは産まれながらに与えられる神器、それを持って産まれた子供をギフトチルドレンという。そして、ギフトチルドレンはほぼ例外なく何らかの偉業を残す、善くも悪くもではあるが…
  さてと、二人の戦いといえば、グラムは圧倒していた。ヨーグの打ち込みも切り払いも突きも全ての連撃を全て受け止め、切りつける。それこそヨーグが生涯をかけて積み上げた技も力も全てを受け止め返す。それは会話、年も立場も関係無い、ただ戦う者の会話、誰も立ち入られない絶対の領域、しかし、その戦いもすぐに終わってしまった。
「感…謝…するぞ…グラム…楽しかった」
「あぁ、俺も闘えてよかったよ」
  ヨーグは膝をつき首を差し出す。
「持って…いけ…情けは…無用…戦士の…恥」
「あぁ…あんたの首をもらうぜ」
  グラムはゆっくりとヨーグの首を切り落とした。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  そこには風が吹いていた。
  風が吹いた後には紅い花弁が舞う。
  風は旋風へとかわると更に華が咲き誇る。
「久々だけどなまっているかな?」
  フェリエッタの父、アルベルトは草を振りながら苦笑いを浮かべる。
  オークもゴブリンも狂い襲いかかる。
(おかしいな。なんておかしすぎる。彼らの強みは生き残る事…危機なら逃げるのは当たり前なのに逃げないのなら誰かに操られてるのかな?)
  そう、思いながら真っ直ぐに馬車へと近づく、草を振りながらオークやゴブリンを切り捨てながら
「何者…あっあなたは」
  護衛の騎士がアルベルトをみると警戒を緩める。
「ゲインは無事かい?」
「はっ!」
  自然なやり取り、騎士はまるでにたいしてのようにふるまう。
「そう、ならここは僕が死守しよう。今のままではゆっくり話し合いもできないし」
  ゆっくりと構える。
「もう少ししたら僕の可愛い娘が終わらせてくれるしね」

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  フェリエッタは駆けていた。
  フェリエッタは追っていた。
  フェリエッタだけが見えたその者達を。
  フェリエッタだけが気づいた。
  後ろで蠢く二匹に
(はてさて、どうしたモノか隠れるのが上手い。否、違うなマジックアイテムだな。人が作り出した神器ならぬ人器。多分、隠蔽と隠れ蓑の魔法だな。うーん、うん? 神器? おぉ、忘れておった)
  フェリエッタは足を止め左手を前に突き出し
「顕現せよ我がグレイプニル」
  その言葉に呼応し短い鎖が左手に巻き付く、魔封鎖『グレイプニル』能力は対象をけして切れない鎖による捕縛と封印ただそれだけの能力。ちなみに鬼ごっこに使ったさい不評だったため半分忘れかけていた不憫な神器である。射程は視認できる範囲である。
「さてと…では捕らえよグレイプニル」
  鎖はまるで生きているように伸び隠れている存在を捕縛する。
「さてさて、隠れていた者達。お話ししようか?」
「な、なぜ。我々が」
「我の目は良く見える。フム、なるほど、この騒動はその指輪か?」
「なっ」
「ジクロスの指輪だったか? 別名は同族召喚の指輪。人には使えない欠陥品だが、他種族や妖魔が使うとかなり危険度が高いマジックだったか? もっとも、召喚魔法に忌避感がある他種族は使わないだろが」
  召喚魔法、それは軍隊を生み出す上位魔法ではあるが使い手は限りなく少ない。何せ他種族にとって忌まわしい術でしかなかった本の数百年前までは、何せ魔力があれば無制限に召喚でき召喚されれば強制的に隷属させられる。例外的に人を召喚する事ができなかったが、はっきり言って最悪最低の魔法である。ある日、突然、父が母が兄が姉が弟が妹が友が恋人が消えて傷ついて戻ってくる。いや、生きて帰ればいい、肉塊に変わってかえってくる事さえ当たり前だった。これ程、胸糞悪い魔法だった。何せ同族同士で殺しあいさえもさせるのだ、長命種では特に忌避感が強い。その対処方法が確立された今でもそれは変わらない。
「ナゼ、気ガツイタ」
「おっ、そちらはやはりゴブリンか。何、死体が少な過ぎる。召喚魔法の特長の一つは死体は残らず送還されるのでな。さてさて我は戦えなかったのは残念ではあるが…まぁ、いいとりあえずこれでしまいだな」
  そう言ってフェリエッタが手刀を振り二匹の手首を切り落とした。
  叫ぶ二匹をしり目にフェリエッタはグレイプニルで止血する。
「さてとでは、父上のところに向かうか、ちと道が混んでいそうだがな」
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