かさぶた 【R18】

喜怒哀楽

　彼女の目はなんだか冷たくなっていた。あの茶番劇と僕、どちらを軽蔑しているのか分からなかった。おそらく僕だろう。よく見れば彼女の目も唇と同じで乾いていた。感情を感じさせない目で僕を蔑んでいるのだ。半ば自虐的になりながら、でもなぜか僕は彼女をこっちに向かせようと模索していた。こうなればもう当たって砕けろ。
僕はやけくそだった。
「こういうの、好きなんですか？」
すると彼女は驚いたような顔で僕を見つめる。なぜだろう、さっきの僕の険のある声が原因だろうか、僕は少し彼女に対してすまない気持ちになった。
「いいえ、そんなことないです。」
彼女は幾分か顔を赤くしながら、静かにつぶやいた。この女にも恥じらいがあるのか、まだ少し残った彼女への怒りがほぐれていくのが分かった。やがてまた「音楽」が僕達の間で鳴り出す。お互いが「音楽」に心地良さを感じているのが感じ取れた。