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二子玉家の双子は今日も仲良く喧嘩中
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【放課後】
それは学生にとって無くてはならない癒しの時間。朝から夕方ごろまでの決して短いとはいえない時間、机に向かって筆を走らせ、時には不意に己を襲う睡魔と格闘し続けて、ようやく掴み取ることのできる憩いの一時
ーーーただしそれは一般論に限る。
もし、俺の辞書で【放課後】と引くとするならば、きっとこんな意味が浮かび上がってくるだろう。
【放課後】
二子玉家の双子に振り回される時間
俺は生まれてこの方、17年。平和な放課後というものを過ごしたことはない。なぜなら、放課後になるなり隣のクラスから飛んできて、今も人の机の前であーだこーだ言い合っている双子がいつも隣にいたからだ。
「おい、正樹!今日は俺と一緒に帰るよな?」
「何バカなこと言ってるの!正樹くんは私と帰るんだから!!」
「お前こそバカなこと言うなよ。正樹は俺と新作のゲームするって約束してるんだよ」
「正樹くんは、この後私とショッピング行くんですぅ」
「俺の方が先に正樹と約束してたし!」
「でも、私と一緒にいた方が絶対に楽しいもん!」
「そんなの本人に聞いてみないと分からないだろ!」
「じゃあ聞いてみようよ。ねぇ、正樹くんは私と一緒に帰りたいよね?」
「どうなんだよ、正樹。俺よりコイツを取るのか?」
どうやら当人達で言い争っていても全く意味が無いことを悟ったのか、話の矛先がこちらを向いてきた。
「落ち着けよ、2人とも。大体、俺はどちらも行くなんて言ってないぞ」
俺が2人に向かってそう言い放つと、男の方がオーバーリアクション気味に驚く。
「嘘だろ正樹!お前、ついこの間まで『このゲーム面白そうだな!』って言ってたじゃんか!」
「面白そうとは言ったかもしれないけど、何も発売日当日にすぐやるなんて言ってない」
そこで、『男に勝った』と思ったのか、女が机に身を乗り出しながら俺に聞いてくる。
「やっぱり正樹くんは私と一緒にショッピングしたいんだもんね!」
「いや、それに関しては全く同意できない」
「なんでよ!」
俺は段々と近づいてくる女をぐいぐい突き放す。
その様子を見ていた男は、お返しとばかりに女を煽り始める。
「ほら、お前のことはお呼びでないんだよ」
「うるさい!あんたの方こそ早くどっか行きなさいよ!」
「はぁ!?なんでおれがどっか行かなくちゃなんないんだよ。そもそもゲームのことなんか無かったとしても、正樹は俺と帰るんだよ!」
「それこそ、意味わかんない。帰るだけなら私とでもいいじゃない」
そろそろ本当に収拾がつかなくなりそうなので、渋々2人の間に割って入ることにする…
「2人とも、そこらへんでいい加減にしとけよ」
「そもそも、正樹がはっきりしないのが悪いんだろ?」
「そーだよ、正樹くんが早く決めてくれればこんなことになってないんだよ?」
俺は助け舟を出したつもりだったのに、気づいたら完全にフォーカスがこっちに向いていた。
「えぇ…俺のせい???」
こうなった双子は止まらない。
「どっちと帰るんだよ!」
「正樹くんが決めてよ!」
そして終いには2人揃って
「「早く選べよ(んでよ)!!!」」
ーーーこれが、俺。『柏葉正樹』のいつもの放課後なのである
それは学生にとって無くてはならない癒しの時間。朝から夕方ごろまでの決して短いとはいえない時間、机に向かって筆を走らせ、時には不意に己を襲う睡魔と格闘し続けて、ようやく掴み取ることのできる憩いの一時
ーーーただしそれは一般論に限る。
もし、俺の辞書で【放課後】と引くとするならば、きっとこんな意味が浮かび上がってくるだろう。
【放課後】
二子玉家の双子に振り回される時間
俺は生まれてこの方、17年。平和な放課後というものを過ごしたことはない。なぜなら、放課後になるなり隣のクラスから飛んできて、今も人の机の前であーだこーだ言い合っている双子がいつも隣にいたからだ。
「おい、正樹!今日は俺と一緒に帰るよな?」
「何バカなこと言ってるの!正樹くんは私と帰るんだから!!」
「お前こそバカなこと言うなよ。正樹は俺と新作のゲームするって約束してるんだよ」
「正樹くんは、この後私とショッピング行くんですぅ」
「俺の方が先に正樹と約束してたし!」
「でも、私と一緒にいた方が絶対に楽しいもん!」
「そんなの本人に聞いてみないと分からないだろ!」
「じゃあ聞いてみようよ。ねぇ、正樹くんは私と一緒に帰りたいよね?」
「どうなんだよ、正樹。俺よりコイツを取るのか?」
どうやら当人達で言い争っていても全く意味が無いことを悟ったのか、話の矛先がこちらを向いてきた。
「落ち着けよ、2人とも。大体、俺はどちらも行くなんて言ってないぞ」
俺が2人に向かってそう言い放つと、男の方がオーバーリアクション気味に驚く。
「嘘だろ正樹!お前、ついこの間まで『このゲーム面白そうだな!』って言ってたじゃんか!」
「面白そうとは言ったかもしれないけど、何も発売日当日にすぐやるなんて言ってない」
そこで、『男に勝った』と思ったのか、女が机に身を乗り出しながら俺に聞いてくる。
「やっぱり正樹くんは私と一緒にショッピングしたいんだもんね!」
「いや、それに関しては全く同意できない」
「なんでよ!」
俺は段々と近づいてくる女をぐいぐい突き放す。
その様子を見ていた男は、お返しとばかりに女を煽り始める。
「ほら、お前のことはお呼びでないんだよ」
「うるさい!あんたの方こそ早くどっか行きなさいよ!」
「はぁ!?なんでおれがどっか行かなくちゃなんないんだよ。そもそもゲームのことなんか無かったとしても、正樹は俺と帰るんだよ!」
「それこそ、意味わかんない。帰るだけなら私とでもいいじゃない」
そろそろ本当に収拾がつかなくなりそうなので、渋々2人の間に割って入ることにする…
「2人とも、そこらへんでいい加減にしとけよ」
「そもそも、正樹がはっきりしないのが悪いんだろ?」
「そーだよ、正樹くんが早く決めてくれればこんなことになってないんだよ?」
俺は助け舟を出したつもりだったのに、気づいたら完全にフォーカスがこっちに向いていた。
「えぇ…俺のせい???」
こうなった双子は止まらない。
「どっちと帰るんだよ!」
「正樹くんが決めてよ!」
そして終いには2人揃って
「「早く選べよ(んでよ)!!!」」
ーーーこれが、俺。『柏葉正樹』のいつもの放課後なのである
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