時の宝珠~どうしても死んだ娘に会いたい~

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18、反撃

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メティオの部隊を襲撃した、獣人部隊の数は、そう多くはなかった。
だが、全く攻撃をされることを考えていなかった人族の部隊は、混乱した。

そう、予想外のことが起きたのだ。
人は、何事も上手くいっている時は、問題ないが・・
予想外のことが起きた時、その資質を問われる。

メティオは、狩る側から、狩られる側になったと恐怖した。
指導者の動揺は、兵士に感染した。
この時、メティオが、部隊を半分に分け、それぞれ対応させたなら、
エルフと獣人族の攻撃に対応し、逆に、優位に立てただろう。
メティオは、逃走を選んだ。
自分の親衛隊に向け、自分を守り、チャオへ戻るように指示したのだ。
その為、人族の部隊は、更に混乱を極めた。
指示系統を失った部隊は、崩壊した。

ルネは、近寄ってきたペガサスの頭に、自分の頭をつけ、
「ジュンバ、有難う。これで、皆救われるよ」
そう、そっと呟いた。


俺(シュウ)とアプスタッド王は、しばらく睨み合っていたが、アプスタッドの眼が、
赤く輝くと同時に、俺に向けて、剣を打ち込んできた。
俺は、それを自分の刀で受け止めた。
両者とも、刀と剣を交えたまま、身動き一つしない。
要するに、我慢比べだ。
「凄い力だ、普通じゃ受け止められないよな」
俺は、そう呟きながら
「でもなあ、俺は負けるわけにはいかないよな」
蹂躙されたエルフの国、クペランテ王や、アミシャス副国王、フォルティ
、姫さんの想い・・そして、俺は、香織に絶対に会う。
俺は、刀に、全霊の力を込めた。
刀は、金色の光を放った。

アプスタッドの冠REXも赤く輝き、
辺り一面は、金色と赤色の光が混じり、何も見えなくなった。

光が収まると、そこには、刀を右手に持ち、佇んでいるシュウが居た。
その前の地面には、色を失った、冠・REXがあるだけだった。

「俺は勝てたのか 不思議な感覚だったな アプスタッドも人ではないのかな」
俺が、物思いに沈んでいると・・

マルーンが、
「所詮、物はものよ 異界人よ、果たして私を倒すことができるかな」
マルーンは、そう言うと、
右手に、自分の杖を現下した。
ゆっくりと、俺の方へ近づいてくる。

「さあ、これからが本当の勝負だ」
こんなところで負けては、香織に会えない。
俺は、自分に気合を込めて、刀を正眼に構えた。

マルーンが、杖を上げ、呪文を唱えると、黒い光が現れ、
俺の刀に、まとわりついた、すると・・

頭がぼやけると、俺の目の前に、香織が現れ、俺に向かって呟いた。

「お父さん、なぜ、私は死んだの お父さんのせいだよね」
「それなのに、なぜ、お父さんは生きてるの、なぜ?」

「香織・・許してくれ・・」

「なぜ、死なないの、死んでよ、私は死んだのよ」

そうだよな、俺が香織を殺したんだよな。
そんな俺が、生きてい資格なんてないよな。
香織が言う通り、俺は生きていてはだめなんだよな・・

俺は、自分の刀を、自分の身体に向け、まさに自分の身体を貫こうとした時・・
バルチャームが、俺に向かって叫んだ!
「シュウさん、ダメよ、マルーンの精神魔法よ 香織さんは、そんなこと、きっと望んでいないわ。」
「貴方は、娘さんに会うのでしょう! 騙されないで」

姫さんの言葉は、俺の身体の中に沁(シ)みてきた。

そうだ、俺は、香織に会って、謝るんだ。
そう想い、俺は、唇を血が滲むほどかみ締めた。
目の前の香織は、姿を消した。

マルーンが、
「ほお~、この魔法に打ち勝とは」

さあ、これからが、本当の勝負だ
俺は、しっかりと両手で、刀を握りしめた。
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