時の宝珠~どうしても死んだ娘に会いたい~

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17、救援

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俺は、今、マグナの王宮謁見の間で、2人の男と対面している。
これから戦う相手だ。
本音を言えば、戦いたくない。
エルフの国・メディオクリスの副国王 アミシャスと親衛隊長のフォルティ。
姫さんが一生懸命、話しかけていたが、答えはない。
俺にはわかる、リーンと同じく、もう人ではないのだろう。
だがなあ、

マルーンが、
「それでは、今から仕合を始める 両者、仕合場に入られよ
異界人よ、2人一緒でかまぬな」

「ああ、いいぜ」

俺と、2人は、仕合場に入った。

俺は姫さんに、
「何とかしたいが、無理なら切るしかない、そこのところは勘弁してくれ」

姫さんは、
「シュウさん、私にもわかります この2人はもう以前の2人ではありません
 シュウさんの思うようにしてください 私のことは気にしないでください」

そう言われてもな、出来るだけのことはするよ。
どれだけできるかは、わからないけどな。

こうして、俺と2人の仕合が始まった。

俺は、右手に自分の刀を現下した。
その刀は、白く輝いている。

それを見たマルーンが、
「ほお~、アマールさまの加護を貰い受けたか」
と呟いた。

俺は、その言葉を無視した。

2には、それぞれの愛剣を抜いた、フォルティは、2本剣、アミシャス副王は、
細身の剣だ。
剣を構え、黙って俺に近づいてくる。

フォルティが、2本剣を操り、俺に切りかかってくる。
ただ、力任せの剣だ
俺は、その剣をかわしながら、時には自分の刀で、受けながら、フォルティの攻撃を受けていた。
フォルティの戦い方はしらないが、きっと、こんな剣じゃないよな
外見はフォルティだけど、中身は違うのか

マルーンが苛立ったように言った
「2人でかかるのだ」
黙って見ていたアミシャス副国王も、剣を構え、俺に向かってきた。
正直、2人相手では、キツイと思ったが、
2人の剣筋は良く見えた。
だが、このままじゃ、どうにもならない。
俺が迷っていると、フォルティの眼が一瞬、普通に戻ると、頭の中に声が聞こえた。それは、フォルティの声だった。

「シュウさん、私と父は既にエルフとは呼べません、マルーンによって改変されました。精神だけが・・  ああ、また意識が奪われていく どうか倒して、下さい・・」
そう言い終わると、フォルティの眼は、黒く淀んだ目に戻った。

俺は覚悟を決めた、だけど、この刀のままじゃ、倒せない。
何故か理解した。
俺は、刀を、白く輝く神木に変えた。
そして、2人に向けて、一閃。
神木からでた白くキラキラとした光が、2人を包んだ。
そうすると、2人の姿から、黒い靄が現れ、霧散した。
更に、2人が居た場所から、白いキラキラした水晶の様な輝く光のようなものが現れ、バルチャーム姫の中に入っていった。

「姫さん、大丈夫かい?」
俺が叫ぶと、姫は、
涙を零しながら、
「おかえりなさい」と呟くと、俺に向かって、
「シュウさん、今、2人が私の中に戻ってきました、有難うございます」

「そうかい」
短く答えた。

マルーンが、
「所詮は前座よ、次は、そうはいくまい」

アプスタッド王は、椅子から立ち上がると、マントを脱ぎ、自分の大剣を抜き、
仕合上に入ってきた。REXは被ったまま、眼は赤く燃えている。

確かに、これは強敵だなと、心の中で思いながら、俺は、右手の中の神木を、
刀に変えた。

俺は必ず、この男に勝ち、REXを手に入れて見せる。
俺は、そう思いながら、両手で刀を正眼に構えた。


その頃、エルフの森では、火は収まっていたが、
メルティ率いる人族の部隊による、エルフ狩りが行われていた。
エルフの生き残り、ほぼ3.000人、戦えるのは1,000に満たない数。
相手は役8,000人の戦闘部隊。
徐々に、追い詰められていくエルフの民たち。

ジュンバは、なんとか皆を逃がそうとしていたが、メティオの追撃は、執拗で、残忍だった。

「このままでは、エルフは全滅してしまう」
「ルネはいるか」

「ああ、ここに居るよ」

「ルネ、このままでは全滅だ。ちょっとの時間で良いから、戦える民を連れて、奴らの足止めをしてくれ」

「ジュンバ、まさか、あの能力を使うのかい、でも、そうすると君は君でなくなるんじゃなかったかい」

「ルネ、よく聞いてくれ、どのみち、このままじゃ、エルフの民は居なくなっえしまう、私は、ヨークさまと約束もした。皆を逃がすとね
 だから、私に与えられた能力に賭けてみたい、きっとその為に与えられた能力だと思うんだ」
「もう時間がない、後のことは頼む」
そう言うと、俺は、笛を吹いた。

空からペガサスが降りてきた。
ジュンバは、ペガサスの頭に手を置き、優しい目をしながら、
ペガサスに向かって呟いた。
「皆を救いたいんだ、混合」

ジュンバとペガサスを淡い光が包んだかと思うと、そこには、一回り大きくなったペガサスが居た。
ペガサスは、ルネを見つめ、頭を一度上下に振ったあと、飛び立っていった。

「ジュンバ、後はまかせて」

ルネは、戦えるエルフ達をまとめ、メティオ率いる部隊に向っていった。

だが、多勢に無勢、エルフ達は、森の奥に追い込まれ、後ろは崖と、絶対絶命の危機に陥っていた。

「ジュンバ、これが精一杯、これ以上は無理かな」
ルネが諦めかけようとした時、

空が曇り、多数の人影が降りてきた。

「あれは、鳥人達。先頭に居るのはペガサス?」
「ジュンバなのかい」

鳥人を引き連れたペガサスたちは、人族に襲いかかっていく。

ルネは、生き残っているエルフ達に、
「援軍がきた、僕らも攻撃しよう」

メティオは、
「あわてるな、空からくるのは大した数じゃない、魔術師たちよ、魔術で対抗しろ」
魔術師たちの攻撃が、確実に鳥人達を葬っていく。

すると人族部隊の後ろから、獣の叫び声と、地響きが聞こえた。

「何事だ」
メティオの問いに、斥候兵が、

「部隊長、後ろから、獣人の部隊がやってきます。」

「なぜ、獣人部隊が居るのだ!」
メティオは、一人、叫んだ。
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