上 下
16 / 28

15、戦い

しおりを挟む
俺は今、リーンいう男と対峙している。
黒いローブをまとい、右手に長剣を持ち、その眼は黒く淀んでいる。
人の気配がしない、そう、何か無機質な物のような感じがした・・

ただ、動きは素早い、すっと前に来るかと思うと、上段から剣が降ってきた。
俺はそれを、自分の持っている刀で受け止め、素早く後ろに下がる。
リーンは、すぐに俺を追い、剣を横殴りに振るうが、とても洗練された太刀筋ではない、ただ早いだけだ。
普通の人間なら、それで切られてしまうが、俺は、その全てを避けていく。
時には、刀で受け、時には、紙一重で避け、何十合、そうしただろうか・・
まだ、俺からは切りかけていない。

ルトが、
「シュウ、攻撃しないとやられるよ」

声をかけてくれるが、
分かっているんだ、切らないとダメだということは・・
リーン、人であって人でない、でも、元は人だろう。
人を切るという事に、俺は躊躇している。
だが、このままでは、ジリ貧だ。

リーンの攻撃は、ますます早くなり、俺は全てを避けきれず、
少しずつ傷を負っていた。

「シュウ、攻撃しないとやられちゃうよ!」
ルトの悲痛叫びが届いた・・

「わかっているんだよ、だけど、人を切るってのはなあ・・」
頭ではわかっているのだが、身体が言うことを効かない。

「シュウ、娘さんに会いたいんでしょ、ここでやられちゃっていいの」

そうだ、俺は、どうしても香織に会うんだ。
俺は、リーンの剣を激しくたたき返すと、素早く後ろに下がり、腰に剣を構えた
そう、得意の居合の構えだ。

リーンは、体制を立て直すと、剣を向けて突っ込んできた。
俺は、素早くリーンの横を通り抜け、刀を一閃した。
手ごたえはなかったが、俺の刀は、金色に光輝いた。
リーンを見ると、上半身と下半身が二つに分かれ、黒い靄となり、消えていった。

「シュウ、大丈夫」
ルトが飛んでくる。

「ルト、有難う、おかげで覚悟を決められたよ」

「シュウさん、大丈夫ですか?」
バル姫も俺を心配してくれている。

ダメだな俺は、もっとしっかりしないと。
両手で、自分の頬をたたき、気合を入れなおす。
これからは、もっと厳しくなるはずだ。

「みんな、有難う。さあ、急いでいこう」
俺はそう言うと、ペガサスに乗り込んだ。
俺たちはペガサスに乗り込み、空上の人となった。
俺は、見送ってくれているシュンバに、
「必ず、戻ってくる、だから、それまで耐えてくれ」
そう叫ぶと、
シュンバは、微笑みを浮かべながら、手を振っていた。


チャオの王・アプスタッド、獣人族の王・パラダス
2人の戦いは、すでに1時間になろうとしていた。
アブスタットの剣とパラダスの長く伸びた爪が、何合となく打ち合い、
火花を散らしていた。

「人族の割には、よくやるがな」
パラダスは叫んだが、
アブスタットは、何も答えない。
パラダスは、アブスタッドの回りを回りながら、その研ぎ澄まされた爪で、
襲いかかるが、アブスタッドは、それを自分の長剣で防御する。
そのたびに、鋭い火花が散っていた。

このままずっと、この戦いが続くかと思われたが、アプスタッドの剣に、一筋の亀裂が入った。パラダスの攻撃に、剣が耐えかねたのだ。
パラダスの次の攻撃の時、ついに剣は根元から折れてしまった。
パラダスは、にやりと笑い、
「よく戦ったが、武器がなければ、どうしようもあるまい、これで最後だな」
そういうと、パラダスは、アプスタッドに向かって、飛び掛かっていった。

アプスタッドは、折れた剣を捨て、何もなかった背中から、剣を取り出した。
その剣は、黒く輝き、飛び掛かってきたパラダスを切り裂いた。

「何故だ?お前は何も持っていなかったはずだ・・」
それが、パラダスの最後の言葉。

「馬鹿な獣人だな」
そう呟くと、アプスタッドは、落ちているREXを拾った。

それ見ていた獣人たちは、
「我が王が負けた・・」
全ての獣人たちは、身をひるがえし、逃げ始めた。

ここに、人族の王・アプスタッドが勝利を収めた。

「王、どうしますか? 追撃しますか」
側近の一人が尋ねると、アプスタッド王は、
「放っておけ、ここに、このREXがある限り、もう来ることはあるまい」

ここは、暗黒の国“スペロ”
一人の男が、暗闇の中で佇んでいる。
その眼は赤く輝き、長い髪は、強い風で舞っていた。
「アマールよ、何処にいる。ああ、私は、貴方を喰らいたい。身体も心も全てね。
そうするこでしか、私の欲求は満足できないのだよ」
変わり果てたテネブリスの姿であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。 ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…! 8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。 同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。 実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。 恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。 自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。

処理中です...