上 下
11 / 28

10、救出

しおりを挟む
俺(シュウ)は、4mの塀の上にジャンプし、城内に降りた。
門の小木戸には、見張りがいたが、後ろから近づき眠ってもらった。
殺していないよ、気絶させただけだ。
いずれは、人を殺さないといけない場面が来そうだが、覚悟がまだ足りてないな。
今は、まだ、その時じゃないしな。

木戸を開けて、2人を招き入れる、ルトとセレティスは、森で待機だ。
どうもこの街は、妖精の気配が全くしないらしい。
人族の街でも、妖精は居るらしいが、この街には居ないとのこと。

今日は星もでていないし、街の中は、真っ暗だ。
動き回るのには、好都合だな。

誰一人として外に居るものはいないし、店とかもやってない。
普通、飲み屋とかやってるだろ、こっちはちがうのかな。
姫さんに聞いたけど、地方の村でも、夜は飲み屋とかやってるらしいから、
この状況が異常かもな。
まあ、兵隊が戦いに出て行ったとしたら、いわゆる戦時状態かもしれないから、
ありかなとは思うけど。

フォルティによると、王様は多分王宮の中に幽閉されているらしい、
それ以外の兵は、王宮の横にある牢獄に収監されているのではということだ。

俺と姫さんは、王宮の中へ、フォルティは、牢獄へ、ここで、二手に分かれることにした。王宮へどうやって入るかって?
姫さん、担いで、外壁をよじ登っていくよ。
出っ張りがあるから、何とかなりそうだ、
フォルティは、さすがに無理、男担ぐ趣味ないしね。

王宮は、4階建てになっていた。
さすがに、正面の門には、灯りが灯してあり、衛兵が2人たっている。

3階のバルコニー部分から侵入するとするか。

「姫さん、気が進まないと思うけど、俺が背負って上るよ、いいかな」
と尋ねると、

姫さんは、申し訳なさそうな顔で、
「シュウさん、やっぱり私、一緒に上りましょうか、それに重いし、、」

最後の方は良く聞こえなかったけど、
「大丈夫だよ、その方が早く行けるし、見つかるとまずい、ほら、つかまって」

俺は、姫さんを背負うと、身軽に、壁を登っていった。

まだ、大丈夫だな。身体は思うように動くし、姫さん背負っても、大丈夫。
でも、姫さん、軽いな。

あっという間に、バルチャーム姫を背負ったシュウは、3階のバルコニーに到着した。

姫さんを降ろして、俺が先に立ち、窓から中を覗いてみる。

「中は、ソファーと机、応接室みたいな感じだな」

「そうですね、多分、来客用の部屋かもしれません」

「まあ、俺たちは招かれない客だけどな」

そう言いながら、俺は、窓を開けようとしたが、鍵がかかっていた。

「ん、どうするかな。音を立てるとマズイ」
そうだ、
俺は、人差し指で、鍵の周りのガラスを、7か所貫いた。
心の中では、あたたたたた・・と言いながら。
おっさん、赤○も好きだったけど、北○の拳も好きだった。

穴のあいたところに指を入れて、ガラスを引っ張ると、ちょうど良い穴があいた。
窓のカギを開けて、俺と姫は、室内に入った。

外の廊下の様子を伺っていると、
後ろで、姫さんが、急にうずくまり、苦悶の表情を浮かべた。

「姫さん、どうした」

「シュウさん、ここは妖精の悲しみが満ち溢れています」
「それとエルフの悲しみも、あと、クペランテ王の気配を感じます」

「妖精の悲しみか、俺には分からないが、ルトとセレティス、連れてこなかったのは正解だったかな」
「姫さん、大丈夫か いつまでもここに居るわけにはいかない」

「はい、大丈夫です。落ち着きました」

そうは言っても、まだ、顔は青いままなんだよな。
とはいえ、ここに、ずっといるわけにはいかないからな。

「姫さん、クペランテ王はどこに居るか分かるかい」

「詳しくは分かりませんが、多分、地下の方に気配は感じます」

地下室とかあるのかな? とにかく行ってみるか。

俺は、その部屋を出ると、姫さんを連れて、1階まで降りた。

姫さんが気配を辿っていくと、鉄の扉で、俺でも分かるな、なんか、禍々しい雰囲気がしている。
姫さん、扉の前で、青い顔で立ったままだ。

「姫さん、俺が入るから、ここで待ってなよ」
と言うと、
意を決したように、
「いえ、私も付いていきます。そうしないといけないんです」

「わかった、けど、無理すんなよ」

鉄扉、何故か鍵は掛かっていなかった。

中に入ると、燭台に灯は付けられており、前室があり、その先に、木の扉があった。
鍵は、やはり掛かっていない。

扉を開けると、そこは、地面が石のタイルが張られており、壁も石が組み込まれている、
20畳位の石造りの部屋だった、その先には、また、扉があり、奥に続いているようだ。
丁度、その部屋の真ん中辺りに、その人は居た。
両手を、左右から鎖で継がれ、服もほとんど破れ、体中に傷を負っていた。
傷は、切り傷だったり、何か先の尖ったもので叩いた後だったり、やけどの跡も
あった。つまり、拷問されたのだ。

バルチャームは、その人を見ると、一言、
「父上」
と言い、すぐに駆け寄った。

「え、クペランテ王?」
シュウも直ぐに駆け寄り、鎖を外し、王を降ろした。
幸い、酷い怪我を負ってはいたが、意識がないだけで、命に別状は無いように見えた。

「姫さん、回復魔法か何か使えないか」
俺が尋ねると、

「私は使えますが、ここでは、妖精が全く居ないので、使えないのです」
と、沈んだ声で返事をした。

持っていた気付け薬を嗅がせると、クペランテ王は、目を覚ました。

「ううぅ お前はバル、何故ここに」
「バルよ、ここに居てはいけない、直ぐに逃げるのだ、ここはエルフにとってとても危ない場所だ」
咳き込みながらクペランテ王は喋った
「父上、そんなに喋ってはいけません、お身体に触ります」

「その横のものは、人族か?」

「はい、シュウさんっていいます。この人が居なければ、ここまで来れませんでした」
バルは、手短に、今までの事を、父・クペランテに説明した。

クペランテ王は、シュウの手を握りながら、
「シュウ殿、無理を承知でお願いします。この娘は、弟のフラタリスに会わなければなりません、どうか、お願いしたい、それが貴方の願いを叶えることとなるでしょう」

「それは、どういうことか知りたいが、今は、時間がない、なんとか貴方を連れてここを出ようぜ」
俺がそう言うと、

クペランテ王は、首を振ると、
「私の命の灯りは、もう永くない」

「え、何を言ってるのお父さん、大丈夫よ、外の森に行けば、ルトが居るし」

クペランテ王は、娘の言葉を、手で遮りながら、
「娘よ、お前には教えていなかったが、私のスキル(…)は混合なのだ」
「今なら間に合う、混合すれば全ての事が分かるであろう、また、私は、お前の中で、生きていけるのだ、すまんな、親としては、何もしてやれなかった」
「更に、エルフ国のすべてをお前に背負わせてしまうことになる」

「お父さん、、、」

バルは涙を流しながら、父・クペランテに抱き着いた。
クペランテも涙を流していた。

俺は、何とも出来ない自分が悔しかった。

クペランテ王とバルチャームは、お互いの右手を合わせた。

眩い光が発生した後、そこには、バルチャーム姫だけが居た。

「姫さん・・」
俺は、なんと声を掛けて良いか分からなかった。

姫は、
「シュウさん、父は私の中にいます。心配しないで」
すっと立ち上がると、
「ここに永く居てはだめです、直ぐにでましょう」

「分かった、それじゃ、フォルティと合流しよう、他のエルフも救わないと」
俺が言うと、
姫は、悲しそうな顔で、
「他のエルフは、もう誰も居ません」
「急ぎましょう」

俺と、姫、いや、もう王女になるのかな、バルチャームの2人は、
上手く、外へ逃れたと思っていた。

外に出ると、フォルティが待っていた、

「姫、こちらは誰も居ませんでした。クペランテ王は?」

「詳しいことは、後で話します。」
「今は、エルフ国へ戻るのが重要、急ぎます」

俺たち3人は、城外へ出ようとした。
その時、青い服を纏(マト)った兵士たち、数十人が、周りを取り囲んだ。
その先頭に立つ男、中肉中背・メデオ、第2部隊の隊長である。

「せっかくエルフ国から来られたのだ、ゆっくり(…)していけば、如何かな」
メディオのその一言で、
周りの兵士たちは、全員、剣を抜いた。

ち、姫だけなら、抱えて、飛べるが、フォルティは無理だ。
俺がそう考えていると、

フォルティは、一言、
「シュウ殿ならいけるでしょう、後の事は頼みます」
そういうと、フォルティは2本の剣を抜いた。

え、お前、恰好良すぎないかいと思っていたが、
実際、この状況はマズイ。

姫が、俺に、
「後はフォルティに任せます、シュウさんお願いします」
唇をかみ締めながら、俺に言った。

俺は、フォルティに、
「死ぬなよ」と声を掛けると、姫を抱えて、城外へジャンプした。

「マルーン殿、どうなさいますか?」
メディオがそう言うと、
暗闇の中から、宰相マルーンが現れ、
「外の事は頬っておけ、リーン(…)が居る、手筈通りだよ」
「それより、人間と妖精の混合種 フォルティの方が面白い、どのようになるのか、楽しみではある」

「何故、それを知っている?」
フォルティは、顔に苦悶の表情を浮かべて尋ねた。

マルーンは、
「さて、それは、この者に勝てば教えて存じようかの」
そう言い、手招きすると、その暗闇から出てきたのは、

「貴方は、アミシャス副国王?」
フォルティは、乾いた声でつぶやいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

転生TS少女妖精姫クララちゃん

天野外留
ファンタジー
タバコを吸いにパチ屋から出ると、異世界でクララ・ベル・ナイト・フォース(推定一才)として生まれ変わっていた。 恵まれた環境でもう一度やり直す機会を得たクララは、今度こそ自分の幸せを見つけられるのか?

【完結】ミックス・ブラッド ~異種族間混血児は魔力が多すぎる~

久悟
ファンタジー
 人族が生まれる遙か昔、この大陸ではある四つの種族が戦を繰り返していた。  各種族を統べる四人の王。 『鬼王』『仙王』『魔王』『龍王』 『始祖四王』と呼ばれた彼らが互いに睨み合い、この世の均衡が保たれていた。    ユーゴ・グランディールはこの始祖四王の物語が大好きだった。毎晩母親に読み聞かせてもらい、想いを膨らませた。  ユーゴは五歳で母親を亡くし、父親は失踪。  父親の置き手紙で、自分は『ミックス・ブラッド』である事を知る。  異種族間に産まれた子供、ミックス・ブラッド。  ある者は種族に壊滅的な被害をもたらし、ある者は兵器として生み出された存在。  自分がそんな希少な存在であると告げられたユーゴは、父親から受け継いだ刀を手に、置き手紙に書かれた島を目指し二人の仲間と旅に出る。  その島で剣技や術を師匠に学び、様々な技を吸収しどんどん強くなる三人。  仲間たちの悲しい過去や、告白。語られない世界の歴史と、種族間の争い。  各種族の血が複雑に混じり合い、世界を巻き込む争いへと発展する。  お伽噺だと思っていた『始祖四王』の物語が動き出す。  剣技、魔法、術の数々。異世界が舞台の冒険ファンタジー。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...