怨霊師

覧都

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第二章

第十三話 黒く燃える首都

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 俺は新幹線の自由席で眠っていたようだ。
 どうやら高校時代にあった、いろいろな悪夢を見ていたようだ。涙がこぼれている。
 まさか、眠りながら泣いていたのか。
 やばいまわりにいる人の目が冷ややかだ。
 バレているようだなあ。声とか出ちゃったのかなあ。

 首都の街が見えてきた。
 高いビルが窓の外を覆い尽くしている。
 そして、その街が燃えているように黒い靄がゆれている。
 まるで、暗黒の伏魔殿だ。

「すげーー!!」

 思わず声が出た。
 まわりの人が、俺の声に反応して俺を見てくる。
 やべーー!! きっと田舎者と思われているよな。
 まあ、田舎者なんですけどね。
 でも、違う意味での「すげー」ですから。



 ホームに着くとエマが待っていてくれた。

「こっちよ」

 久しぶりなのに相変わらず塩対応だ。
 俺は、東京の無名の大学に特待生として入学出来た。
 学費全額免除というヤツだ。
 俺の成績でも二番だったらしい。
 そして、その大学がエマと同じだった。
 だからわざわざ、迎えに来てくれたのだ。

「ぐはっ!!」

 案内されたのは、大学にやや近いビルだ。
 あきらかに事故物件だ。

「ふふふ」

 俺が面食らっているのが楽しいのか、エマがうれしそうに笑っている。

「すごい所だなあ」

「わかるの?」

「幽霊は分らないが、黒い靄がすげえー。呪われた建物だ」

「あら、丁度良いじゃない」

「まあそうか。なんだかビルの下からわいている。何人か埋まっているのかもしれないなあ」

「はああぁぁぁーーーー!!!! 馬鹿なの! こ、恐いこと言わないでよ」

 そう言いながらエマは、三階の北側のドアを開けた。

「すげーーっ! 広いなあ」

 室内は広かった。
 中はコウ師匠の事務所と同じような感じになっている。
 ここが、俺の今日から生活する事務所兼自宅だ。
 コウ事務所東京支社だそうだ。俺は支社長だそうだ。
 だから、家賃もいらない。苦学生の俺にはありがたい。

「ふふ、でも家賃は格安らしいわ」

「そうか、どうやって探すんだか。ありがとう! 後は自分でやるよ」

「はぁあー、ばっかじゃ無いの。ここまで案内したのに、お茶の一つも出さないつもりー」

「ああそうか。じゃあ、準備をするよ。えーーと」

「私がやるわ。そこで待っていて」

 俺は荷物を部屋の片隅に置くと、窓に顔を近づけ街を行く人達の姿を見た。
 大勢の人が歩いているが、怨霊の姿は無かった。
 これだけ人がいても悪い奴はそこまで多くないという事なのだろう。ひとまず安心した。

 ――?!!

「いかーーん!! エマ、逃げるぞ」

 俺は机に紅茶を用意し終ったエマの手を握った。
 そして、扉を開けて階段を降りる。

「ちょ、ちょっと待って! な、何があったの?」

「う、うむ。安全な場所まで逃げてから話す。まずは逃げるぞ!!」

 まだ、あいつに見つかっていなければ良いのだが……。
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